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Dear K  作者: 加瀬優妃
4/11

4.25歳の秋(1)

 高校を卒業して、私は地元の看護専門学校に入学し、そのまま地元の病院に就職した。

 いくつかの秋を越えて、私は二十五歳になった。

 相変わらず実家にいて、家事は全部お母さん任せ。だって昼勤、夜勤があって毎日クタクタなんだもん。

 いま担当しているのは小児科。子供の相手ってめちゃくちゃ大変だしさー。


「香澄。あなたねー、少しは家事を覚えなさい!」


 休みの日の午前11時過ぎ。リビングのソファでゴロゴロする私に向かって、お母さんが忙しなく掃除機をかけながら声を荒げる。


「昨日は本当に忙しくて大変だったんだから。ちょっとゆっくりさせてよー」

「お嫁の貰い手がなくても知らないわよ。彼氏はいないの?」

「いたら休日にゴロゴロしてないよ、もう」


 これ以上の砲撃は精神的に厳しいので、むっくりと起き上がる。

 そう言えば最近、オシャレもサボっちゃってるなあ。洋服もここ二年ほど新調してない。

 思い切って買い物に行こうかな。


「私があなたの年にはもうあなたを生んでたわよ」

「ったく、二言目にはそれだ。今はそんな時代じゃないんですぅ。だいたい、お父さんとは見合い結婚でしょ?」

「恋愛結婚よ!」

「あれ、そうだっけ? 伯母ちゃんのツテで紹介してもらったっていう話じゃなかった?」

「それでも、ちゃんと恋愛してから結婚したんだから恋愛結婚よ。見合い結婚っていうのはね、こう四角い写真が釣書と共に送られてきてね……」

「その辺の違いはどーでもいい」

「だから圭司さんとはそういうんじゃないのよ。少しずつ距離を縮めていったんだから。まずはね……」

「またお父さんの話ー? もう聞き飽きたよ」


 圭司さんというのはお父さんのこと。棚橋(たなはし)圭司(けいじ)、それがお父さんの名前。

 棚橋くみこ、これがお母さんの名前。そして私、棚橋香澄。

 お母さんは自分の名前が平仮名だったのが本当に嫌だったらしい。だから私にはちゃんと漢字の名前をつけたのよ、と威張っていた。

 みんなイニシャルがT・Kでお揃いなの、といつまでも少女のようなお母さんが象徴しているように、私たち三人家族はとても仲良しだ。

 そして特に、お母さんはお父さんにベタ惚れだ。未だに恋人のようにお父さんを名前で呼ぶ。


 伯母ちゃんはお母さんの五つ年上。その同級生がお父さんで、伯母ちゃんが高校生でお母さんが小学生の頃、一度仲良しグループで家に遊びに来たことがあるらしい。

 お母さんにとっては憧れのお兄さん。それ以来まったく会うことはなかったけど、大人になってから伯母ちゃんとお父さんが再会して、そして元カノと別れたばかりと聞いた伯母ちゃんが妹を紹介して……みたいな流れだそう。


 そのあとの話は何回も聞いてるしこれ以上はたまんないわ、とそそくさとリビングを逃げ出した。

 自分の部屋に戻って、部屋着を脱ぐ。

 そうだ、このネイビーのタートルに似合うボトムスを探そうかな。お気に入りのジャンパースカート、もうだいぶんくたびれてるし。

 それと、ちょっと贅沢してホテルのランチバイキングに行こう。一人の方が気兼ねなく食べれるし、ゆっくりできるし。


 気分を上げるためにちゃんとした格好をして、髪も整えて、久しぶりにきちんとメイクもして。

 秋の木枯らしが吹き抜ける外へと、飛び出した。

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