だから、“なろう”は嫌われる ~ビジネス戦略としてのなろうランキングの問題点と改善案
「不正ランキング操作を抑制する方法」というエッセイを意見としてなろう運営に送ってみたところ、レスポンスがあり、「更に意見が欲しい」ということだったので、もっと良い”なろうへのアクセス数が増える可能性もある”問題改善方法を考えてみました。リップサービスかとも思ったのですが、ログを見る限りでは、確かにその返信のあった時間帯に熱心に読まれている痕跡があったので。
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このエッセイは、以下のYouTubeチャンネルを参考にさせていただきました。
ネタバレを含みますので、それが嫌だという人は、↓を先に見ておくと良いかもしれません。
ナカイドのゲーム情報チャンネル【辛口】
【完全版】発表から3年半かかった新作ゲーム、売上が厳しすぎる状況に…【BLAZBLUE ALTERNATIVE DARKWAR】
https://www.youtube.com/watch?v=APkIPiwf8Ow
ギルド【幽焼け一派】
【クソラノベ】は何故タイトルが長いのか?何故同じような展開ばかりなのか?『小説家になろう』を読み解く!【1:何故面白くないラノベも書籍化できるのか?】
https://www.youtube.com/watch?v=TyQ6ipI_htA
【クソラノベ】は何故タイトルが長いのか?何故同じような展開ばかりなのか?『小説家になろう』を読み解く!【2:何故最近のラノベはタイトルが長いのか?】
https://www.youtube.com/watch?v=E_IO8qH2doo&t=0s
【クソラノベ】は何故タイトルが長いのか?何故同じような展開ばかりなのか?『小説家になろう』を読み解く!【3:何故同じ設定の作品ばかり生まれるのか】
https://www.youtube.com/watch?v=eLQneSm_ub0&t=0s
【クソラノベ】は何故タイトルが長いのか?何故同じような展開ばかりなのか?『小説家になろう』を読み解く!【4:小説家になろうと小説を書くということ】
https://www.youtube.com/watch?v=osiBfocoqFA&t=0s
随分と昔、僕はこんな風に思っていました。
「“小説家になろう”で、上位にランキングされている作品の多くは、書籍化されてもメジャーにはなれないだろう」
全ての作品って訳じゃありませんが、あるタイプの作品は品質的に、メジャーは難しいと思っていたのです。
その僕の予想は、見事に外れました。本屋さんに行った事のある人なら誰でも知っていると思いますが、コミカライズされたなろう原作の漫画が平積みにされてあります。
ただ、それならば、僕の判断が完全に間違っていたのかと言えば、それも違うと僕は考えています。
僕の近所に中規模くらいの大きさの本屋さんがあるのですが、なろう原作のコミカライズ版の方はよく見かけるのに、原作の方は探さないと見つけられないくらいに数が少ないのですよ。アニメ化された原作ですら置いていなかったりします。
因みに、“小説家になろう”で僕がショックを受ける程低レベルな上位ランク作品が“書籍化決定”ってなっていたのですが、しばらくしたら“コミカライズ決定”って追記されてありました。
「出版社はきっとコミカライズにしか期待していないだろうな」とは、思っていたのですが、予想通りでしたね。
また、“漫画原作”としての評価も問題があります。確かに“バブルなのか?”ってくらいに本屋で見かけますし、ヤングアニマルでなろう原作の漫画作品が連載されているし、なろう原作ではないっぽいですが、少年チャンピオンでだってなろう風の漫画がいくつか連載されていたりもします(ごめんなさい。他の漫画雑誌にも連載されているみたいなのですが、省略します)。
が、それらは看板作品にはなっていません。いえ、雑誌によってはそうなっているみたいなのですが、ネット上でその雑誌自体が馬鹿にされていたりします。だからなのか、少年ジャンプにはなろうの原作は一作品も連載されていません(ま、要素は取り入れているっぽいですが)。更にヤングジャンプでなろう原作の作品が連載された際には炎上騒ぎすら起こってしまいました。
「なろう原作の漫画なんか、ヤングジャンプで連載するな!」
って、感じですね。
「何故?」って思う人もいるかもしれませんが、実は“小説家になろう”って一部ではとても嫌われていて、“なろう作品”が揶揄表現の一つになってすらいる程なんです。
例えば、動画サイトで探してみると、なろう系作品にツッコミを入れている動画がたくさん出てきます。
もう「なろう系ツッコミ動画」ってジャンルが出来上がっちゃっているくらいの勢いなんですよ。
この現状を踏まえると、なろう系に漫画雑誌が手を出すのは、「ブランドイメージを傷つけるリスクがある」と判断するべきでしょう。だから気軽には手を出せない。
――では、どうしてそこまでなろう系の作品は嫌われているのでしょうか?
■嫌われているタイプのなろう系作品
嫌われている理由を説明する前に、“なろうから書籍化された”と言ってもなんでもかんでも批判されている訳ではない点は断っておきます。
最近、僕は“作業中にかけるラジオ”くらいの感覚で、「なろう系ツッコミ動画」をよく聞いているのですが、例えば“無職転生”とか“蜘蛛ですが、なにか?”とかを批判しているものは一度も耳にした事がありません。
どうも、なろう系にありがちな“ゲームっぽい世界観”の作品が批判されている訳ではなく、別のなろう系作品の特性が嫌われているようなんです。
ここで少し例え話をします。
もし仮に、
「ド〇えもんが、の〇太を甘やかしまくっていて、すっごく便利で役に立つ秘密道具を無条件で与えてしまい、その秘密道具を使っての〇太がジャイ〇ンやス〇夫を何の苦労もせずに簡単にやっつけて見下し、しず〇ちゃんにもモッテモテで、周りからも褒められまくっていて、しかもの〇太がそれを“自分の力だ”と誇示している」
そんな作品があったとしたら、むかつくと思いませんか?
秘密道具はの〇太自身ではありません。でも、の〇太は、それを自分自身だと考え、「これは自分の力だ!」と誇っている訳です。そして、作品の中のどんな登場人物もそれを咎めたりはしない……
なにか物凄く不自然で歪なものを感じます。
これで、もし、本家のド〇えもんだったなら、ド〇えもんがの〇太を叱ったり、調子に乗ったの〇太が何か手痛い失敗をして反省するみたいな寓話的なお話になると思いますが、そうはならないのですね。
実は、これは人間の成長やアイデンティティの確立に関する問題でもあります。
お金持ちの家庭で生まれた人間は、子供の頃はそれに何の疑問も覚えないで「僕の家はお金持ちなんだぞ!」って威張ったりする傾向が強いです。ですが、成長をしてアイデンティティが形成され始めると、そんな自分に疑問を覚え、「偶々金持ちの家に生まれただけで、自分が偉い訳ではない」と悩み、場合によっては、「“金持ちの家”に頼らず、自分の力だけで生きてみたい!」なんて言い始める展開すらも考えられます。
……そんなキャラクターが出て来る物語もありますが。
これは“自分自身の境界線をどこに引くのか?”って話で、健康な人間ならば成長に伴って、道具の力だとか、親の力だとか、恵まれた体格だとかを“自分の力”とは考えず、努力によって手に入れた力こそを“自分の力”と捉えるようになるのです。
そういう人の方が尊敬できますし、だから物語としても好感を持てます。
先の架空で想定したド〇えもんのお話は、の〇太が秘密道具というチート能力を自分自身と同一視しているという点で幼稚で、かつそんなの〇太を世界が全力で肯定している点が不自然で歪なのです。
多分、不快感を覚える方が、こういう作品を読んだ場合の真っ当な人間の反応じゃないのかと思うのですが……
が、ところがですね。
一部のなろう系の物語は、当にその“不自然で歪なド〇えもんのお話”と同じ構造をしているのですよ。
女神だとか謎の存在だとかから与えられたチート能力を使って、主人公がほとんど何の努力をしないで敵を倒して見下し、そして女性にモッテモテで、そんな主人公を全力で世界が肯定している……
まぁ、つまりは、一部の方々から“嫌われているなろう系の作品”と言うのは、どうもそんな作品のようなんですね(もちろん、これは大まかな傾向であって、異なっている部分も多々あったりするのですが)。
断っておくと、これは、“なろう系ツッコミ動画”の内容を僕がまとめて解釈したものに過ぎず、僕自身が、そういった作品を全て読んでいる訳ではありませんし、大規模にアンケート調査をした訳でもありません。
ただ、複数人の人気のあるレビュアーの方々が似たような評価を下しているので、恐らくは一般の感覚に近い感想なのではないかと考えています(その中には、他のタイプのなろう系作品を褒めている人も含まれています)。
もしかしたら、「その程度で、そんなに嫌われているの?」と疑問に思われる人もいるかもしれませんが、これは飽くまで“大まかな傾向に”過ぎず、これにプラスして更に批判される要素が個別に加わっていきます。
話の整合性が取れていない上に、暴力表現や性的表現が“引く”レベルで使われていたり、主人公が女性を道具扱いしているのに、その事に全く主人公が無自覚で、かつ道具扱いされている女性キャラ達はそれを怒るどころか、主人公を“優しい”と評していたり。
登場人物の心情を想像できる人なら、そのリアリティのない反応に違和感を覚えて当然でしょう。
「どっか優しい所あった?」
と。
そして、そこに作者の“エゴ”を感じ取ってしまったなら、その醜さを嫌悪だってするはずです。
つまり、“高度な読み手”(そうじゃなくても?)ならば、作者の作品に対する不誠実な態度だとか、偏った性癖やエゴで歪められた作品の正体が見えてしまうのですね。
社会的な役割を果たそうとしているレビュアーならば、そんな作品を見つけたら間違いなく低い点数を付けます。そして、それらレビュアー達の低い評価が正しいのであれば、そういったタイプのなろう系作品が嫌われる理由も自ずから明らかでしょう。
しかも、この作品に対する軽蔑は、どうやらそのまま作者に対する軽蔑にも繋がっているようなのです。
なろう系作品の主人公達は、チート(不正行為)によって得た能力によって恵まれた想いをし、何の疑問も覚えずに喜んでいる訳ですが、それを書いている作者自身も不正行為によって出版に成功し、喜んでいる……
こう考えると、見事に重なりますが、どうもそう感じている読者も少なくないようなのですね(これは、様々なコメントを眺めた上での僕の感想ですが)。
「――作者が不正を行っている根拠が何処にある?」
と、これを読んで思う人もいるかもしれませんが、少なくとも“複数アカウントによる自作品のポイントかさ上げ”は過去に発覚した事例がいくつもあり、“相互評価クラスタ”と呼ばれる仲間同士でポイントを入れ合うグループの存在も証言のようなものが存在しています(もっとも、完全な証拠とは言えないようなのですが)。
そして、そういった明確な不正ではなく、マナー違反や、倫理上問題がある行為ならば普通に行われている事が知られています。今度はそれらを説明していきましょう。
■嫌われてしまう理由その1 ポイントの低い作品の連載は続けない
“小説家になろう”のサイトはタイトルが目立つ構造になっている為、読者に読んでもらう為には“客目を引くタイトル”にする必要がある訳ですが、どのようなタイトルが“効果的”かは分かりません。
そこで、取り敢えずは良さげなタイトルで投稿し、アクセス数やポイントが少なければ、直ぐに削除してしまうのだそうです。そして、それを何度も“当たり”が出るまで繰り返す……
とても小説執筆の話には聞こえませんが、酷いケースだと幾つも一度に投稿し、その中から最もアクセス数等が多いものを選ぶなんて事をやっている人達もいるみたいです。
これらは「ガチャ」とか「リセマラ」とか呼ばれているらしいのですが。
こういった行為を「クリエイターの態度としてどうか?」とか、「読者を裏切る行為」などと考えている人達がいるようです。
個人的には、その感想は理解できます。
ポイントやアクセス数は少なくても、その作品に期待をしてポイントを入れてくれた読者がいる訳です。連載が始まったって事は、「これから作品を書き続けます」って作者からのメッセージな訳ですよ。作者が「次回作を出す」と宣言しておいて、いつまで経っても出なかったら、何とも言えない嫌な気持ちになります(そうなんですよ? 京極夏彦さん! “鵺の碑”はいつ出るんですか?! って、まぁ、これは作者が悪い訳じゃなく、出版社の事情とか絡んでいそうですが)が、それと似たようなものでしょう。ですから、こういった行為をしている人達は、読者に不快感を与えている事になります。
そして、そこから派生して、どうもこんな風にも思われているようです。
「ほぼタイトルだけで話も内容もあまり考えずに書き始めているから、矛盾だらけの展開になったり、キャラクターの性格が固定していなかったり、似たような展開になってしまったり…… 酷い場合には盗作だったりする」
つまり“品質の高い作品を産み出す意欲がない”と思われてしまっているようなのですね。
因みに、この内容は「YouTubeチャンネル:ギルド【幽焼け一派】」の「【クソラノベ】は何故タイトルが長いのか?何故同じような展開ばかりなのか?『小説家になろう』を読み解く!」のシリーズ1~4を参考にさせていただきました。
■嫌われてしまう理由その2 一日の内に何度も投稿する
マナー違反ならば、他にもまだまだあります。
これは激しく糾弾されるような内容ではありませんが、明確に証拠が残っている点でなろう作家の評判を下げる要因になっているのではないかと思われます。
とあるプロのなろう作家さんが、自分のYouTubeチャンネルで「ポイントを得る為のテクニック」としてこんな方法を“勧めて”いました。
“その日の内に何話も投稿する”
つまりは“連投”です。
明言はしていませんでしたが、必然的に、本来なら一話にまとめるべき内容を細かく刻むって事になると思います(作品によって話のテンポってあるので、無理に話を分けたかどうかまではちょっと判別が難しいですが)。
作品を投稿するとサイトのトップページで宣伝してくれるので、当然、細かく刻んで投稿回数を多くすれば宣伝効果を多く得られるんです。しかもそうしてポイントを得られれば、日間ランキングでも上位に入る可能性が高くなり、益々有利になります。
これ、多分、多くの人が気が付いているでしょう。
だって、投稿した瞬間、明らかにアクセス数が伸びていますからね。
「投稿を繰り返せば、簡単に宣伝できるじゃん」
って。
ただ、実際にやる人はそれほど多くないのではないでしょうか?
その理由は簡単です。「他の人の迷惑になるから」です。
まず“連投”って一般的にネット上でマナー違反とされています。しかも、“小説家になろう”の場合は、自分が作品を投稿して、トップページに表示されると、他の誰かの作品を押し出してその人の宣伝機会を奪ってしまうんです。
つまり、他の誰かを犠牲にして、自分が得しているって事です。他の人のランキングだってその分下がりますしね。それを考えたら、「そんな卑怯な真似はできない」って普通は思いませんか?
いえ、既に述べたようにそこまで激しく批判されるような行為ではないとは思うのですが(なろうの場合、連投を促しているかのようなメッセージも出てきますし)、それでも公の場で他人に勧めるような事ではないでしょう。仮に勧めたとしても「マナー違反になるので、程々にしておきましょう」くらいの注釈があるべきだと思うのです。
罪悪感が麻痺していると思われても仕方ないとは思いませんか?
これは自ら「マナー違反を悪いと思っていない」と実質的に主張してしまっている稀有な事例ですが、他の上位ランキング作品でも履歴の日付を観ればこのマナー違反をしているのは簡単に分かり、そして、5回とか6回、中には、10回近くも一日に投稿している人が、高ランクインの喜びを語っていたりもします。
……これって、軽蔑されちゃいませんかね?
因みに、先に挙げた「YouTubeチャンネル:ギルド【幽焼け一派】」でも、この“連投”は紹介されてあったのですが、ちゃんと「卑怯」って断っていました。
連投を“卑怯な手段”と感じる人が、連投の結果得た成果を誇っている作者の姿を目にしたら、軽蔑してしまうのは自然な心理でしょう。
――ただし、
これ、作者側で参加している人達にとっては迷惑な行為ですが、なろう運営側にとってはアクセス数が増えるのでメリットがあるのかもしれません。
……読者にとってはどうなのか知りませんが。どうなんですかね?
■嫌われてしまう理由その3 書籍化決定と共に投稿が停まる
どうしてなのか理由は分かりませんが、書籍化が決定するとなろうでの投稿を停めてしまう人がいるそうです。
この話を聞いて、実際に観察してみたのですが、「書籍化決定」と報告すると共に投稿がなくなり、ランキングを落としてしまう人が確かにいました。
せめて書籍が出版されるまでは現在の順位を維持して宣伝した方が、絶対に売上が上がるので良いと思うので謎な行動ですが、とにかくそういう人がいるみたいです。
これも読者側にしてみれば、「自分達がポイントを入れて応援したお陰で書籍化が決まったのに、投稿しなくなるの?」と裏切られたように感じてしまうのではないでしょうか?
それに、もしかしたら、本人にとってみれば、“書籍化こそがゴール”なのかもしれませんが、出版社にとってみればもちろんそれがゴールじゃありません。「売り上げを出す」事を目的に出版化を決めているんです。出版を決めた途端にランキングが下がるんじゃ、まるで詐欺じゃないですか……
仮に何か投稿を停止する理由があるのなら、ちゃんと説明しておいた方が良いです。そうしないと印象が悪くなってしまう。
■嫌われてしまう理由その4 盗作が多い
既に少し触れましたが、なろうでは盗作が多く、それが嫌われる原因となってしまっているようです。
過去に盗作が発覚し、作品自体が削除されたり停止されたりしているそうで、その所為でなろう作家全体のイメージに傷がついてすらいるようです。
(今もそうなのかは知りませんが、なろうに投稿しているというだけで、ランキングサイトへの登録申請が断られるなんて事態にもなっているそうです)
それと、書籍化しているばかりか漫画化やアニメ化までされているある作家さんに盗作疑惑があるのですが、本人が盗作を認めてしまっているらしく、「どうして、咎められない?」という疑問と共にその話が広まっているようなので、それがなろう作家全体のイメージに悪影響を与えてしまっているという事もあるかもしれません。
因みに、盗作が疑われているなろう系のプロ作家さんは他にもいます。
■嫌われてしまう理由その5 性的描写に頼り過ぎている
話の設定や展開に中身がなかったり、矛盾があったりする作品に多く観られる傾向のようなのですが、どうも性的描写…… つまりは“エロ”に頼って読者を獲得しようとしている節があるようです。
これは単なる僕の憶測ですが、作家本人もそれを自覚している証拠のようなものならあります。
アニメ化した自分の作品の宣伝に「毎週、一回はエロシーンがあります」といったようなコメントをしていたり、性的描写が禁止されているコンテストで性的描写を使って失格になっていたりするようなので。
――これって、作品の質に自信がないので、つい性的描写に頼ってしまうのではないでしょうか?
いえ、すいません。先にも断った通り、これは単なる僕の憶測です。
ただ、一部の読者にそう思われている事はほぼ確実ではないかと思われます。そして、「読者を馬鹿にしているのか? エロが見たいのならエロ本を読むわ!」みたいに思われてしまっている……
■嫌われてしまう理由その6 低い評価のレビューを攻撃する
先に「なろう系ツッコミ動画」があると説明しましたが、そういったレビューやアマゾンでのレビューなどを攻撃したり、削除してしまったりする作家さんがいるようです。
いえ、作家さんが直接依頼して削除されたのかどうかは不明なのですけどね。
ただ、どちらにせよ、動画が削除されてしまっている点は事実です。そして、それによってなろう作家には「自分にとって都合の悪い評価は、攻撃したり排除したりする」というマイナスイメージが付いてしまっているようです。
個人的な意見ですが、仮にアンチな内容であったとしても、自分の作品のレビューは削除しない方が良いです。自分の作品に自信がある場合は特に。それってつまりは宣伝してくれているって事ですからね。
実際、そう考えている人達もいるらしく、「YouTubeチャンネル:ナカイドのゲーム情報チャンネル【辛口】」では、低い評価のレビューであったにも拘らず、ゲーム会社の社長からお礼が来て、かつ「また取り上げて欲しい」とまで言われたそうです。
また、「YouTubeチャンネル:カナブンチャンネル」では、なろう系小説にツッコミを入れた動画に対し、出版社と作家自身からそれぞれお礼があったらしいです。
僕の経験談ですが、低い評価のレビュー内容を見つけ、「そんなに酷いのか、なら読んでみよう」と興味を惹かれて読んでみて、「そんなに酷くないじゃん」って思った事が何度かあります。事前にハードルを下げられている分、評価が甘くなるというか何と言うか。まぁ、「書いてある通りに酷い」と思った経験もあるのですがね。
■嫌われてしまう理由その7 その他、なろう作家の数々の問題行動
今まで述べて来た傾向に、作家の問題発言や行動が加わります。
先に挙げたマナー違反を勧めていた作家の方は、他にも自分のYouTubeチャンネルで、「なろう読者は馬鹿だから、それに合わせた」みたいな発言もしているらしいです。僕自身が確かめた訳ではないので、ニュアンスがこの通りどうかまでは分かりませんが、そんな発言をしていれば嫌われてしまうのも無理はありません。
その他にも、イラストレーターさんへの卑怯な手段での誹謗中傷や、宣伝目的でスラングの起源を主張して後に嘘がバレたりといった問題行動をなろう作家がしてしまったという話があります。
一応断っておきますが、それら問題発言や行動が事実であるかどうかは関係なく、そういった噂がある時点でマイナスイメージになります。
そしてそういった噂がピックアップされる際には個別の作家の名前ではなく、どうも「なろう作家がこんな問題を起こした」といった伝えられ方をしてしまうようです。
つまり、例えなろうの問題ではなくても、なろうが悪いかのような印象を持たれてしまうようなのですね。
以上でなろうが嫌われる理由の説明は終わります。
どうです?
ざっと記憶している限り挙げてみましたが、これだけでも嫌われてしまう理由としては充分ではありませんか?
ですが、これだけではありません。
ここにまことしやかに語られる“不正ランキング操作”の問題が加わります。
■なろうランキングは、不正行為が非常に効果的で“嫌われる作品”も淘汰されない
なろうの採点方式は、不正が可能な仕組みになっている上に、それがとても効果的という困った問題があります。
ゲームなどのレビューの場合、不正を行って評価ポイントを上げてもそれほど効果的ではありません。一例として、「YouTubeチャンネル:ナカイドのゲーム情報チャンネル【辛口】」の「【完全版】発表から3年半かかった新作ゲーム、売上が厳しすぎる状況に…【BLAZBLUE ALTERNATIVE DARKWAR】」という動画で紹介されていた事例を挙げます。
この動画のゲーム。どう考えてもレビューポイントに工作を行っているようにしか思えません。
動画制作者のナカイドさんが画像でエビデンスをちゃんと残してくれてあるのでほぼ疑う余地がないと僕は考えているのですが、初めの画像では、“Google Play”の評価が、279件で平均“2.1”です。ところがそこから評価が上がり、次の画像ではなんと1852件で平均“3.7”にもなっています。1600件近くも評価件数が増えていますが、見ると5ポイントの評価が異常に多くなっているのが分かります。
これがゲームの評価が上がった結果というのなら話は分かるのですが、売上は上がっていないようですし、コメントがついたレビューでは低評価が多いようです。
こんな証拠を突きつけられて「不正を疑うな」というのは難しい話です。増えた1600件近くのレビュー件数が全て工作だとは思えませんが、それでも1000件くらいは工作だと考えるのが妥当ではないでしょうか?
世間には「いいね!」を増やす業者がいると言われていますが、検索をかけてみると「1000件で5980円」などといった具体的な数字が出てきました。これが本当かどうかは分かりませんが、或いは、この評価はこの手の業者を利用した結果なのかもしれません。
ただ、このような工作を行ってレビューポイントを上げても、ゲームの売上が爆発的に上がるような事は起こっていません。つまり、それほど効果的とは言い難いのです。
がしかし、“小説家になろう”の場合は、この手の不正は大いに効果的なのです。
仮に1000件分で“ブックマーク”も含めて1件12ポイントを入れるとしたなら、なんと12000ポイントも入ってしまいます。すると、日間ランキングの上位に入り、それによって高い宣伝効果を得られてしまうのですね。そして、それで更にポイントを得られれば、月間ランキングでも上位に入り、書籍化まで決まるという可能性だってあり得ます。
つまり、不正による加算で得られる宣伝効果が非常に高いのです。
しかも、読者の多くがその作品の質が低いと感じていても“平均ポイント”を採用しておらず、“マイナスポイント”が存在しない為、それが表面化しません。最低ポイントでも、作品のポイントが増えて、むしろ作品にとってプラスになってしまうので、恐らく、低い評価をした読者は点数を入れないのではないかと思われます(批判的な感想を書いている人がその作品にポイントを入れているかどうかをいくつかサンプリングで調べてみたのですが、やはり入れていませんでした)。
要するに、仮に品質が低い場合でも、一度でも高ポイントを得られれば、そのまま作品が書籍化されてしまうという事だって起こり得るのです。
実際にどの程度の不正が行われているのかは分かりませんが、それでも少なくとも“小説家になろう”において、不正が極めて効果的であるのは事実です。
そして、これと同じ理由で、普通は“嫌われている作家や作品”は、低く評価され、上位にランクインしたりしないはずですが、なろうのシステムの場合は一部の層に人気さえあれば、それで書籍化できてしまったりする可能性があるのです。
“盗作疑惑”が顕著ですが、アマゾンのレビューを観ると、盗作疑惑のある作家の作品はポイントが低いのです。世間的に“盗作”が軽蔑されている事がよく分かりますが、“小説家になろう”の場合は、軽蔑されていても、そのまま高ランクを維持できてしまえます。
実際、盗作疑惑のある作品が、ランキング一位になり、そのまま出版化が決まっているのですがね。
時折、「なろう読者はおかしい」といったようなコメントを目にする事があります。「低品質だったり、趣味の悪い作品に高い評価を下す事が信じられない」というのです。
ですが、なろう読者の多くはそのコメントを不本意に感じるでしょう。
「自分は、こんな作品は選んではいない」
と。
つまり、何が言いたいのかと言うと、“小説家になろう”の採点方式は、「欠陥のある作品」や「問題のある作家」を淘汰する機能を持ってはいないという事です。
結果として、ヤングジャンプでなろう原作の連載が決まると、炎上騒ぎが起こってしまうくらいに一部の読者達からは嫌われてしまっている……
正直、僕は“小説家になろう”の運営さんが、このような“なろうのイメージ”をどのように考えているのかは分かりません。
ビジネス戦略上改善しなくてはいけないと考えているのか、それともこのままでも良いと考えているのか。
が、どうであったとしても、もし仮にこれから更なる事業の拡大を考えているのであれば、この欠点は解決しなくてはいけないのではないでしょうか?
実は僕は「上位ランキング」にはあまり興味のない人間でした。採点方式に問題があることは認識していましたが、周囲の評価よりも「どんな作品を書くべきなのか?」、或いは「どんな作品を自分は書きたいのか?」を追及するスタイルでずっとやって来て、現在、840件以上も投稿しています。
まぁ、人間性がそんな感じなんです。
では、どうしてそんな自分が突然に“上位ランキング作品の問題”に関心を持つようになったのかと言えば、コミカライズやアニメ化などによって、小説家になろう以外でも品質の低い作品や、それに伴う不正ランキング操作の問題が語られるようになっているからです。
つまり、“小説家になろう”に長年投稿しているのに、それ以外のサイトでそれを知ったって話なのですが。どうも、“小説家になろう”ランキングの問題は徐々に大きく取り上げられるようになっているようなのですね。
なろう原作小説を、メディア展開しないのであれば、この“なろうのイメージ”は、それほど大きな問題にはならないかもしれません。
ですが、アニメ化などを視野に入れると、この欠点が障害になる可能性は大いにあります。いいえ、既に障害になっています。
実は、中国でアニメの「無職転生」が、配信停止になるという事件が起こってしまっているのです。これは中国独自の流れというよりも、欧米の“ポリコレ”などの影響を受けたという側面が強いらしいので、全世界的な傾向と捉えるべきでしょう。
「無職転生」に関しては“女性の性的な扱いが問題”とされたからのようですが、個人的にはそこまで大きな問題があるとは感じませんでした(まぁ、不快感を覚える理由も分かるのですがね)。
「厳しいな」とそれで僕は思った訳ですが、それと同時に「他の問題有のなろう原作のアニメ作品ならば、配信停止されても仕方ないけど」とも思ってしまったのです。それらアニメ作品の全話は見てはいないのですが、一部だけを観ただけで、ちょっとと言うか、かなりドン引いてしまったので…… 先にも少し述べましたが、女性を道具扱いしていたり、尊厳を貶めていたり、レイプしていたりするんですよ、それらの作品。
そういった作品のレビューを見てみると、やはり問題視している人が多く、フェミニストでも何でもないどころか「エロ本大好き」を公言しているレビュアーまでもが、「この作品は駄目だろう」といった主旨の意見を述べていました。中には「どうして、放送中止にならない?」と疑問の声を上げている人まで。
もし仮に、このまま、なろうにそういった作品の数が増えていったのなら、その問題の内容がより大きく取り上げられるようになる事は充分に考えられます。近年、日本の“男女平等問題の遅れ”に世間はより敏感になっていますから、海外に向けてアニメや漫画などを売りに出す際には特に気を付けなければいけないはずです。
日本のアニメ・漫画産業の欠陥にすらなってしまうかもしれません。
■マイナスポイントの効果には限界がある
こういった品質に問題がある作品を上位にランクインさせないようにする為には、採点方式やランキング方法を変更するしかありません。
例えば、作品の評価を平均点での評価にすれば、最低評価ポイントを付ける事にも意味が出てきて、品質に問題のある作品のランキングを下げる事ができます。平均が下がって、その作品の評価が下がりますから。がしかし、平均点のランキングには大きな問題点が二つあります。
一つは、平均点だけじゃなく統計処理全般に言える事ですが、充分な数が集まらないと信頼性のあるデータにはならない点。
例えば、評価したのが一人だけで、その人が満点10ポイントを付けたら平均点は10でランキングは最高になりますが、偶然その人にその作品が合わなくて最低の評価を付けられてしまったなら、2ポイントで最低順位になってしまいます。
ならば、ある程度の件数、評価を得られた作品だけのランキングにすれば良いと思うかもしれませんが、その場合、どの程度の件数にすれば良いのかが分かりません。不正行為でどの程度のポイントを得られるのかは知りませんが、件数によっては大幅に有利になってしまうでしょう。
また、嫌がらせで最低ポイントを入れるという行為へ、ペナルティを与える事もできません。結果として、ユーザー同士の嫌がらせ合戦みたいな事も起こってしまうかも……
だから僕は“不正ランキング操作を抑制する方法”というエッセイで“マイナスポイントの導入”を提案したのです。
お気楽に小説投稿を楽しみたい人もいるでしょうから、マイナスポイントを受け入れるかどうかを選べるようにし、マイナスポイントを受け入れた場合は、それ専用の別のランキングにも載るというメリットを与えます。
そして、嫌がらせでマイナスポイントを入れる行為へのペナルティとして、マイナスポイントの符号を入れ替えて加算する“賛否両論ランキング”なども創設します。
その賛否両論ランキングでは、マイナスポイントを入れられるとポイントが上がるのですね。結果として良作の場合は目立って更にポイントが入り、品質の低い作品の場合はマイナスポイントが増えるか何も起きないという事になります。
このマイナスポイントを導入すれば、品質が低すぎる作品や盗作などが上位にランクインする事は防げるでしょう。
因みに、この“マイナスポイント”は、「YouTubeチャンネル:ギルド【幽焼け一派】」の「【クソラノベ】は何故タイトルが長いのか?何故同じような展開ばかりなのか?『小説家になろう』を読み解く!」のシリーズ4でも、提案されてありました。
「嫌がらせを防ぐには、マイナスポイントにメリットを与えれば良い」という点は指摘されてありませんでしたが、それはこの動画のメインテーマが採点方式を改善するものではなかったので、そこまでは考えなかったからでしょう。
僕は「おお! 自分と同じ様な事を考えた人がいた!」とこれを見て喜んだのですが、それと同時にこんな感想も持ってしまったのです。
「……“小説家になろう”のランキングって、もしかしたら、マイナスポイントを導入する程度では、どうにもならないくらいに世間からズレまくってしまっているのじゃないだろうか?」
■小説家になろうのランキングは“目立った作品”ランキング
数年前から、“小説家になろう”では、「ざまぁ系」の作品が大流行しています。主人公が酷い目に遭って、その後、復讐する(ちょっと違うけど)みたいな話がテンプレートとして蔓延しているのですね。僕はトップランキングにあまり興味がなかったので、それほど詳しくはないのですが、数年前にそれをネタにした「なろうって性格の悪い連中ばかりなのか?」みたいな記事を見た記憶があるので、かなり息の長い流行のようです。
ですが、これを見て
「なんと! “ざまぁ”ばかりだ! このジャンルを出版すれば売れまくるに違いない!」
なんて思う人はまずいないでしょう。
試しになろうの検索で“ざまぁ 書籍化”で最もポイントの高い作品を探し、その作品をアマゾンで検索してみたのですが、レビューの数がとても少なかったです。売れてないって事でしょう。多分。
つまり、なろうで流行しているジャンル(?)で最高クラスのポイントを獲得した作品が、世間ではほとんど存在感を示せてはいないのです。
ラノベの2020年の売上ランキングを調べてみると、なろうの有名作品がいくつかランクインしていたりしますが、少なくとも“ざまぁ系”は入っていません。
因みに、ここ最近、爆発的に売れまくっているなろう系の恋愛ラノベがあるのですが、これも“ざまぁ系”ではないようです。そしてその作品のなろうでのランキング順位も少なくとも現在(2021年5月末)はそれほど高くはありません。
と言うか、そもそもスマフォ向きの作品も書籍化向きの作品も漫画原作向きの作品もみんな“同じジャンル”となっている時点で既に滅茶苦茶なのですがね、なろうのランキングは。
これって、例えるのなら、マラソン選手と50メートル走の選手を同じ基準で評価しているようなものなんです。比べられるはずがないのですよ。特性が全く違うのだから。
前述したように、なろうでランキングを上げる手法は、作品の品質とはあまり関係がありません。「いかに目立つか」しか重要じゃないのですね。一応断っておくと、目立つ為の一要素に“品質の高さ”もありますが、それは一要素に過ぎません。
だから、本来なら、「なろうランキングで月間一位の作品を売りに出せば、ヒット間違いなし」みたいな状況にするのが望ましいはずなのに、「なろう自体が異世界」と呼ばれる程に別世界になってしまっていて、あまり当てにならないのですね。
だから僕は考えました。
これはもう「なろうランキング」の立ち位置の変更を目指すしかないのではないだろうか?
と。
■どこに本当の世間の作品評価が現れているのか?
前述した「YouTubeチャンネル:ナカイドのゲーム情報チャンネル【辛口】」の動画の中で、ナカイドさんは、ゲームの本当の評価の指標として“コメント付きレビュー”使っていました。
単にクリックするだけで入れられるレビューポイントとは違って、コメント付きは労力がかかりますからね、サクラの割合は低いだろうって判断なのだと思います。
それで僕はこう思ったのですね。
「もしかしたら、“小説家になろう”でも同じかもしれない」
そこで前述した、僕がショックを受けた程品質が低レベルの作品のレビューを見てみたのですね。
すると、なんと“0”でした。
確か、記憶の中では、1か2はあったと思うのですが、もしかしたら、低評価のレビューだったので消してしまったのかもしれません。
作品のあらすじ欄によると、この作品はかつてはかなりの高順位までいったようです。なのに、良いレビューを書いた人が0。
これって、おかしくないですか?
そこで僕は現在(2021年5月末)のランキングの上位作品を見てみました。月間1位は、
「ブサイクで有名な令嬢と婚約した。彼女はとても可愛らしい性格の人だった。」
という作品で、“ざまぁ”ではありません(“ざまぁ”じゃないってだけで応援したくなりますね。がんばってください! って、もう完結しているみたいですが)。
この作品のレビュー件数を見ると、38件もあります。他のランキング作品を見ても7件とかは普通ですね。内容も高評価が多いようです。
が、少し僕が読んでみて「これは酷い」と思った高ランク作品がまだ他にもあるのですが、その作品はレビュー件数は5件とそれなりに多かったものの、肝心の内容は悪い評価が2件もありました。
もしかしたら、小説家になろうでもコメントのあるレビューの方が信頼できるのではないでしょうか?
残念ながら、現在は、小説家になろうのレビュー機能で点数は付けられないので、確かめる事ができません。
そこで僕は、アマゾンのコメント付きレビュー(5段階評価)に注目して、少しばかり検証をしてみました。
アマゾンの“コメント付きレビュー”には、レビューが役に立った人数が表示されています。自分ではポイントを入れないけど、“役に立った”ボタンなら押すって人は多そうですよね。或いは、これには世間の正直な評価が現れ易いのかもしれません。
なので、「コメント付きレビューのポイント×役に立った人数」で計算し、そこから平均値を求めてみました。因みに、データを集めたのは、5月の第四週です。
何度か挙げている「盗作疑惑のあるなろうのアニメ原作」でまずはやってみたのですが、普通のレビュー平均点は3.7でした。が、この方法で導き出した平均点は1.2となりました。
随分と低くなりましたね。
多分、これが世間の本当の評価に近いのではないでしょうか? 「盗作疑惑がある」ってだけで嫌われますからね。
もう一つ、同じ時期にアニメ化されて「女性を道具扱いしている」と批判された原作でも試してみました。
すると、普通のレビュー平均は4.2でしたが、この方法の場合は2.6でした。また、随分と下がりましたね。
一応断っておくと、この作品、そもそもレビュー件数自体が少なかったので、データの信頼性は低いです。“サクラ”の割合が高いだろう点を考慮すると、本当はもっと平均が低い可能性もあります。
品質に問題のある作品だけでは、このポイントが信頼できるかどうか分からないので、今度は比較する為に世間的に評価の高い作品を試してみました。
選んだのは「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」というなろう作品です。どっかのサイトで高く評価されいるのを見かけたのがその理由です。
この作品の普通のレビュー平均は、4.6。“コメント付きレビューのポイント×役に立った人数”の平均は、なんと4.6で変わりませんでした。
つまり、これって、本当に高く評価されているって事じゃないですかね?
「蜘蛛ですが、なにか?」「無職転生」でも試してみました。「蜘蛛ですが、なにか?」は4.6から3.6へ「無職転生」は4.5から3.3へとそれぞれ下がりましたが、それほど低くなった訳ではありません。
ここまでを試して、僕はもっと工夫できるのじゃないかと考え始めました。平均なんてシンプルな統計処理じゃなく、もっと高度な統計分析をやってみたくなってしまったのですね。
そこで、それぞれのレビューポイントの“標準偏差”を求めてみる事にしました。
“標準偏差”っていうのは、データのバラツキの値です。ですから、この値が高ければ高いほど「賛否両論がある」という事になります。
これに何の意味があるのか分からない人もいるかもしれませんが、実は大いに意味があるのです。
この標準偏差…… (仮に分かり易く“賛否両論指数”とでも呼んでおきますが)が高い場合、レビュー平均が低くても、売れる可能性があるんです。何故なら、それは高く評価している人の存在を意味しているからです。
レビュー平均3で、賛否両論指数が低い場合は、ほとんどのユーザーが“普通”と判断しているって事でしょう。普通と思っている人がその小説を買ってくれるとは思えません。
ですが、レビュー平均3で、賛否両論指数が高い場合は、1の評価もあれば、5の評価もあるって事なんです。5と評価した人なら、それを買ってくれる可能性が高いでしょう。
まぁ、ぶっちゃけて言ってしまうと、賛否両論指数なんてわざわざ求めなくても、高評価の割合を求めれば良いだけなのですが、この方が面白いからちょっとやってみました(単に理論好きの血が騒いだだけ、とも言える)。
そんな訳で、それぞれで賛否両論指数(標準偏差)を求めてみました。
平均の低かった「盗作疑惑のあるなろうのアニメ原作」は、0.624でした。比較的安定しています。低評価の割合がとても多いって事です。
同じく平均の低かった「女性を道具扱いしているなろうのアニメ原作」は、1.020で評価にバラツキがあると分かります。サクラの割合が多いお陰か、高得点の割合が多いのかもしれません。
「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」は、0.329。高評価ばかりで安定しているみたいです。凄いですね。
「蜘蛛ですが、なにか?」は、0.818。ややバラけていますが、まずまず安定した評価と言えそう。
「無職転生」は、0.943。女性読者が低い評価を下したっぽいのが原因か、それなりにバラけていますね。
これに高評価(5点と4点)の割合を求めて、更に他の作品でも試してみたのが、以下の表になります(作品を個別に攻撃する事が目的ではないので、低評価が出てしまった作品の作品名は変えてあります)。
(もし、計算式の間違いがあったら、ごめんなさい。それと、エクセルに手で入力していったので、そのミスもあるかも)
音楽CDもなんとなく加えてみました。いや、なんか、面白くなっちゃって。
一応断っておくと、「映画原作のなろう作品」は、コメント付きのレビューの数が多過ぎて、途中で入力を挫折しました。まぁ、それでも充分に件数は多いですが。それと、「姑獲鳥の夏 文庫」は、作品自体の評価よりも売り方に対する出版社の姿勢を批判しているレビューの方が多かったです。それを削ると、“コメント付きレビューのポイント×役に立った人数”平均は3.8にまで上がりました。
意外だったのは、大ヒットしている作品の“コメント付きレビューのポイント×役に立った人数”平均が低くなってしまったって点でしょうか。
まぁ、大ヒットって作品自体の評価ってよりも、集団心理とか群集心理の効果で起きるっぽいですからね。そこに、大きな期待値と作品の質の落差が加わって評価が厳しくなってしまいがちなのかも。
……当り前ですが、作品の質が高いって事がそのまま売上が多いって事を意味しないのですね。
「蜘蛛ですが、なにか?」「無職転生」は、名作と言われる他の作品と比べても遜色ないポイントですね。もっとも、「ラノベとして評価されている」って違いはあるかもしれませんが。
なので、「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」はもちろんですが、「蜘蛛ですが、なにか?」「無職転生」については、売れると判断した出版社の判断は妥当といったところでしょうか。
ですが、「盗作疑惑のあるなろうのアニメ原作」、「女性を道具扱いしているなろうのアニメ原作」は駄目でしょう。
「盗作疑惑のあるなろうのアニメ原作」の方は過激な性的要素のお陰で多少は売れているかもしれませんが、多分、出版社のブランドイメージは傷ついています。
盗作って真面目にがんばっている素人作家はもちろん、一般の人からの「楽して儲けてるんじゃねー!」っていう反感もかなり高そうですからね。
現代の盗作は、コピペでいけるから物凄く楽な作業ですしねぇ……
さて。
もし仮に、これと同じ…… いいえ、もっと高度な分析が“小説家になろう”で可能になったら面白いとは思いませんか?
読者や出版社は、現在のようなただ単に“目立ったポイント”ではなく、その分析結果を元に読む作品や出版するべき作品を選ぶのです。
■レビュー機能を拡張し、高度な役割を担えるようにする
もちろん、今のままではそんな高度な分析は不可能でしょう。
分析に用いようにも、なろうで入れられているポイントは正確なものではありませんから。低評価の人はあまりポイントを入れず、複数アカウント、相互評価クラスタ、業者、その他組織票などで、ポイントが不正加算されている可能性が大いにありますし、ブックマークでのポイント加算の場合はどのようにそれを判断すれば良いのかも分かりません。
また、小説のタイプも判別が付きません。
スマフォ向きの小説と、一般書籍化向きの小説って根本から評価基準が異なっていますが、高評価を受けているその作品が、どんなタイプなのかなろうランキングだけを見ていてもまったく分からないのです。
読む前に知りたいですが、不可能なのです。
これを解決する為には、今までのポイントシステムとは別に、新たなもっと詳細な分析が可能なポイントシステムを作る必要があります。
ですが、そんな詳細なポイントを一般の読者に入れてくれとお願いするのは無理があります。現在のシンプルな方法でも、ほとんどの人はポイントを入れないのが普通のようですから。
ところがですね。世の中には作品を詳細に分析し、コメントまで付けてレビューを行ってくれる人達が稀にですが存在しているのですよ。先ほどのアマゾンのコメント付きレビューを実際に見てもらえば分かりますが、様々な視点から作品を分析し、長文のレビューを書いている人達がたくさんいます。
もちろん、審美眼に優れた人達も多いのでしょう。
つまり、そういう人達をターゲットにし、現在のなろうのレビュー機能を拡張して、ポイントを付ける機能及びに作品のタイプをチェックボックスで選ぶ機能も付けるのですね。
これは飽くまで、一案ですが、
□ スマフォ(電子書籍)向き
□ パソコン(書籍)向き
□ コミカライズ向き
□ アニメ化向き
□ 実写化向き
□ ゲーム原作向き
□ ライトノベル
□ 本格派
などとするのはどうでしょう?
(補足できるように、タグを入力できるようにしても良いかもしれません)
そして、レビュアー達はコメントを付けた上で、評価ポイントを選んで登録を行うのです。
ただ、そのような事を行ってくれるユーザーは少ないので、このままでは信頼のおける規模にまでデータは集まりません。
そこで、そのレビューを読んだ読者達はそれに同意するか、同意しない(不同意)かを選択できるようにします(誰が同意したのかは分からないようにするべきでしょう。他人の目を気にして、どちらのボタンも押さない人がいますから)。
これは先ほどのアマゾンレビューの計算と同じですね。アマゾンレビューの“役に立ったボタン”に相当するものを作るのです。
ただし、「同意数―不同意数>0」のレビューを有効なレビューとして扱います。
本来なら、“多種多様な価値観の尊重”に配慮して、“同意ボタン”のみにしたいところですが、何度も書いている通りに不正行為を行う人達が世の中にはたくさんいますからね。不正なレビューを排除する為に、不同意が多い場合は有効とは見做さないようにするのです。
(不正行為で“不同意”を増やして批判的なレビューを潰す行為は、レビューの数が増えれば限界がありますし、流石に公平なユーザーの数の方が多いでしょうから、心配はいらないと思います。また、現在作者が自作品に対してされたレビューを削除できてしまえますが、これはできないようにするべきでしょう。低評価のレビューを受けたくなければ、レビューを受け付けないようにすれば良いのです)
レビューだけじゃなく、同意者の件数も合わせれば、データ数が多くなり、信頼のおける分析が行えるようになります。
そして、これにより詳細に“自分に合った作品”を探し易くなります。例えば、スマートフォンで作品を読みたいと思っている人は“スマフォ(電子書籍)向き”にチェックの付いた高評価の作品を選べば良いという訳です(もちろん、検索し易くするように条件に追加するべきです。端末がスマートフォンだった場合は、自動的にチェックを入れておくなどといった工夫もするべきかもしれません)。
問題は、「レビューを書いてくれる人が充分に現れるかどうか」です。
実は僕は似たような方法を“不正ランキング操作を抑制する方法”というエッセイで提案したのですが、その時はそこまで現実的な案ではないと判断して、それほど深くは考えませんでした。
何故なら、“信頼のできるレビュアー”が充分な人数現れるかどうかが分からなかったからです。
――が、考えてみれば、既にそういうレビュアーっているんですよね。たくさん。
これも何度も書いていますが、なろう系作品を扱っているYouTubeチャンネルはたくさんあるのです。
ざっとそのチャンネルと、登録者数を列挙してみます(順不同。また、登録者数は、2021年5月26日時点のものです)。
・なろうクソ作品レビューチャンネル 1380人
・【マンガ系YouTuber】ゲス顔 1.14万人
・ゆっくりいろいろ所感室 317人
・笠希々 10.6万人
・へーぜらー15世・なろう系感想動画 5310人
・一般サイコパス 1.93万人
・カナブンチャンネル 555人
・ドルベレビューの館 4970人
・ギルド【幽焼け一派】 3.22万人
どうですか? たくさんある上に中々の登録者数でしょう? 漫画やアニメを扱うチャンネルも加えてありますが、動画の内容を聞いてみると、原作も読んでいたりするみたいで、軽いレビューなどを行っている場合もあったので載せてみました。
断っておきますが、探せばまだまだたくさんこのようなYouTubeチャンネルはあります。ニコニコ動画とかでもあるでしょうしね。
これら動画作成者の方々にPRして、なろうでレビューを書いてもらえるように促しましょう。レビューなどからYouTubeチャンネルへ視聴者を誘導し易いような仕組みにしておけば、動画作成者の方々にもメリットがありますから、それに応じてくれる可能性は高くなります。
“小説家になろう”には、投稿者が収入を得られる機能はありませんが、YouTubeチャンネルは客を集めれば収入になりますからね。もちろん、YouTube側にとっても視聴者が増えるというメリットがあるので咎めたりはしないはずです。
つまり、なろう運営からは一銭も支払わず、優秀な人気レビュアーを呼び込めるって事です(外部サイトへの誘導し易さが鍵ですから、そこは充分に工夫しなくてはなりませんが)。
それぞれのチャンネルには既にかなりファンがついていますから、もし彼らがレビューを書いてくれるのであれば、その新レビュー機能は注目されるはずです。そうして注目が集まれば、更にレビュアーは増えるでしょう。
もちろん、これには“小説家になろう”の閲覧者を増やすという効果もあるはずです。
自分の“小説家になろう”でのレビューの宣伝を、各動画作成者の方々が、YouTubeチャンネルやニコニコ動画などから行ってくれるでしょうし、レビュー自体のファンだって増えるでしょうから。
そして、充分にレビュアーの数が増えたなら、まだまだ増やせる魅力的な新機能はあります。
例えば、小説のランキングではなく、“レビュアーのランキング”を創設するなんていうのはどうでしょう?
「レビューに同意した人数―不同意の人数」の合計値の多さでレビュアーのランキングを作るのですね。このランキング自体が娯楽になるかもしれませんし、それによって、上位のレビュアーを信頼して、おすすめした作品を読むなんて人も出て来るかもしれません。
レビュアーが公平性に欠ける評価をした場合は、信頼性が下がってランキングも下がるでしょうから、自動的に不正を抑制できもします。
そうなると、「お気に入りのレビュアーを登録する機能が欲しい」なんて要望が出て来る可能性もありますね。レビュアーをお気に入りにしておくと、そのレビュアーの最新のおすすめ作品が直ぐに分かるようになるのです。
そこまで“レビュー”から作品を選ぶのが一般的になったなら、小説検索のメインを今の作品のポイントランキングからレビュー評価にするのも良いかもしれません。
高評価レビュー(5段階でなら、5点か4点)された作品の「同意数―不同意数」の総数の順番でランキングを作成するのですね。つまりは「レビュアーおすすめ作品ランキング」を作るという訳です(考えてみれば、3点以下のポイントって、別におすすめしている訳じゃないのだから、ランキングに載る評価ポイントとしてカウントするのっておかしいはずなのですよ。だから、カットしちゃいます)。
そうなって来ると「発掘機能」も欲しくなってきますね。
既に評価、注目されている作品を高く評価するなんて誰にでもできます。それよりも、埋もれてしまっている名作を、レビュアー自身がその優れた審美眼によって見つけて世間に広める方がより面白いのは言うまでもありません。
多分、その方がサイトも盛り上がるのじゃないでしょうか?
仮にですが、発表から1週間以上経過した1000ポイント以下の作品をレビュアーがレビューし、そこから作品の人気が上がってポイントが増えた場合は、その倍率分、“同意者の数”が増えたのと同じ扱いにするなんてのはどうでしょう?
“発掘実績有”。つまりは、“審美眼の実力有”として、レビュアーランキングがそれによって上がるのですね。
このように、レビュアーが“小説家になろう”で、充分にその役割を果たしてくれれば、様々な効果や機能が考えられます。
ただし、問題点もあります。レビュアーの重要性が高まると、レビューを書いてもらえない作品が蔑ろにされてしまいかねません。
そこで、自作品のレビューを可能にするようにシステムを変えるというのはどうでしょう?
自作品のレビューから、レビュアーとしての才能が開花し、注目されるようになるなんて事もあったりして……
このような体制がもし実現できたなら、今のように偏った作品ばかりが表に出るような事にはならないし、少なくとも品質に問題があり過ぎる作品が出版化されるような事にもならないでしょう。審美眼のあるレビュアーなら、きちんとした評価を下してくれると思うので。
また、まったくコミカライズに向いていない“説明だらけの作品”がコミカライズされるなんて事にもならないはずです(そういう漫画が実際にあるそうです)。
力のあるレビュアー達が、ちゃんと作品の特性を評価してくれるからです。
そして、もちろん、賛否両論指数(標準偏差)や高評価割合などの詳細な分析も可能になります。読者もそれを活用できますし、出版社だって有効利用できるようになります。
今現在、小説家になろうから出版化される作品は、ほとんどがファンタジーか恋愛のラノベです。が、この体制になったなら、文学作品や本格派のホラーや推理小説なども出版化されるかもしれません。
カリスマ性のあるレビュアーがそれら作品を評価する事で世間から注目されて、出版化に至るなんて可能性もあるからです。
個人的な経験からの判断ですが、或いはレビューの方が今の作品ポイント重視の体制よりも公平なのかもしれない、とも思っています。
以前、僕は“色覚異常の能力”という作品を投稿しているのですが、ポイントが低いにもかかわらず、その作品はレビューを書いてもらえました。
この作品は、色覚異常者への差別をテーマにした社会的メッセージ性が高いものだからではないかと自分では思っています。他にも農業の問題をテーマにした作品や原子力発電の科学性をテーマにした作品で、やはり低いポイントにもかかわらずレビューを書いてもらえた事があります。
つまり、社会的にメッセージ性が高い作品の方が、レビューを書いてもらい易いようなのですね。
――本来、社会的に価値の高い作品こそ、高く評価されるべきです。レビュー重視の体制にすればそれに少しでも近づけるのではないでしょうか?
因みに、僕は仕事でシステムエンジニアをやっていて、設計からプログラミング、テストからリリースまでを全て一人で行う場合もあります(と言うか、むしろ、そんな場合の方が多い)。
その経験から言わせてもらうのなら、この程度の画面ならば比較的楽に作れます。
ただし、ユーザーの反応は心配ですね。
だから、一部の機能のみを実装したドラフト版を一度リリースして、どう使われるかを一度見ておくべきではないかと思います。それによって、詳細は詰めていく方がより確実でしょう。
■公的な場には、公的な役割が求められる
今回は、主にビジネス的な視点から、なろうランキングの問題点とその改善案を語って来ましたが、個人的な志向の話をさせてもらうのなら、それよりも「社会的意義のある作品が世に広まるのを目指すべきだ」と考えています。
企業は大きくなると「公的機関としての役割を求められる」という社会通念があります。
“小説家になろう”の運営に、もしその役割を果たす意欲があるのなら、このような機能を追加して欲しいとも思っています。
「“テーマに基づいた作品”という特別枠を設け、そこに月一で何か社会的に重要なテーマを運営側から提示する」
例えば今なら、「コロナ対策をしながら、経済も維持する方法」など…… (少し難しいですかね?)。
それをランキングにして、注目を集め易い仕組みにしておけば、斬新なアイデアが出てくるかもしれないし、クリエイターや読者に、そういった事柄を真面目に考えさせる機会を与える事にもなると思うのです。
――もしかしたら、それによって世の中を救うような作品が、出て来るかもしれませんよ。
そんな事がもし実現したら、素敵だって思いませんか?
それでは、“小説家になろう”が、世の中にとってより良い場になる事を願って、今回はこの辺りで終わりにしたいと思います。