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超次元戦闘スーツ――ステラ別話  作者: 安田けいじ
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初陣のユウキ

 決戦の前日、ネーロ帝国の破壊神グラースは、もうそこまで来ていた。ステラたちは、北海道を戦地とは出来ない為、ユウキが訓練を行った無人島を、決戦の地に選んだ。グラースをおびき寄せる為の発信機を島に設置し、準備は整った。


 決戦の日、ステラ達四人は出撃前に作戦会議を持った。戦闘隊形は、レグルスとサルガスが前面に出て攻撃し、ステラは、状況を見ながら臨機応変に動き、ユウキは後方から援護する事になった。


 ユウキは、皆のお荷物にだけはなりたくなかった。せめて、自分の事は自分で護ろうと心に決めていた。


「じゃあ、行きましょう!」


 ステラの言葉と共に、必要な武器を持って四人は出撃した。


 五分程で無人島に着いた彼らは、付近の地形や戦いの位置等を確認してから、サルガスがグラースの位置を調べる為に、海へと潜っていった。


 だが、サルガスは二分もすると戻り、グラースはすぐそこまで来ていると告げたのである。

 四人が臨戦態勢をとっていると、ほどなく、グラースの赤茶けた巨体が波を割って現れた。

 身長は五メートルを超える大きさで、頭の真ん中の大きな目が、目でもあり、レーザー砲なのである。グラースの頭が上下左右に動き、しきりにターゲットを探している。


「来るわよ!!」


 ステラの甲高い声が、スーツの中に響いた途端、グラースの凄まじいオレンジ色のレーザービームが、四人を襲った。

 ズズーン!!!! 轟音と共に、周りの岩や木々が噴き飛んで、彼らに降り注いだ。


 ユウキは、初めての戦いに恐怖を感じ、足がすくんだ。


「ユウキ、もう少し後方に下がって!」


 ステラの叫びに我に返ったユウキは、後方へと下がった。


 グラースは、続けざまにレーザーを発射しながら接近して来る。その、レーザービームを掻い潜り、レグルスとサルガスの放ったエネルギー弾が、グラースを捉えた。


 爆音と共に噴煙が舞い上がり、それが収まり視界が戻ると、グラースは傷一つ無かった。


「シールドも半端ないわ。同じ場所を狙って撃って!」


 ステラの指示で、レグルス達がグラースの足に集中攻撃すると、転倒させる事に成功したものの、特殊合金とシールドに守られた彼に、大きなダメージを与える事は出来なかった。



 そんな戦いが暫く続く中、ステラは、相手の弱点を見つけようと、スーツのセンサーをフル活用して懸命に探った。

 そして、レーザービームを撃つ瞬間、シールドが解除されるレーザー口を攻撃するしかないと結論したが、グラースの頭は前後左右にクルクルと動く為、狙いが定めにくいのが難点だった。

 ステラ達は山の後方へと一旦退いた。



「グラースを破壊する為には、あのレーザー口に、ビーム発射の瞬間を狙って火力を集中するしかないと思うの」


「そのようですね。誰かが囮になり、引き付けるしかありません。それを攻撃する瞬間を狙いましょう。三人の火力を集中すれば勝てるかもしれません!」


 レグルスが興奮気味に言った。


「ユウキも必要なの?」


「火力は二人では足りません。攻撃は一ミリの誤差も許されない。となると、囮はユウキ殿しかいません」


 ステラが難色を示したが、選択の余地はなかった。


「やらせて下さい!」


 ユウキが満を持して答えた。彼は、恐怖に震える自分を鼓舞して、ステラ達の役に立てるなら、死んでもいいという気持ちになっていた。


 そうこうしている内にも、ドーン! ドドーン! と、地面を揺らすグラースの攻撃は止まず、山をも崩す勢いで、そこまで迫っていた。


「ユウキ、シールドをMAXにして!」


 ステラに言われるままに操作すると、全パワーの八十%がシールドに、残りがスーツの動作に設定された。



 ユウキは、グラースの百メートルほど前まで行くと、グラース目掛けて全力で走り出した。

 高速で突進してくるユウキを捉えたグラースが、レーザー口の照準を合わせ、両足を踏ん張って、前傾姿勢になった。レーザー口の温度が上がり、今まさにビームが放たれようとした途端、


「今よ!!」


 ステラの声が響くと、グラースの視界からユウキの姿が消えて、三つの閃光が走ったかと思うと、ズドドドドーン!!!! 轟音と共に、グラースの頭は吹き飛んでいた。


 ユウキの後ろにステルスモードで隠れていた、三人の渾身のエネルギー弾が、グラースの顔面に炸裂したのである。更に止めの一撃を受けると、グラースは、あえなく大破し炎上した。


 ユウキが、上空からゆっくり降りてきて、カシャカシャとマスク部分が格納されると、緊張した顔が現れた。


「怪我はない?」


 ステラが、そう言いながらユウキに近付き抱きついた。


 興奮状態にあったユウキが、その緑の優しい瞳に見つめられて我に返り、ステラを抱きしめると、甘い髪の香りが彼の心を落ち着かせた。


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