表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超次元戦闘スーツ――ステラ別話  作者: 安田けいじ
4/31

偽りの夫婦②

 ステラが、酒癖が悪いというのは、ユウキにとっても意外な発見だった。二度と酒は飲ませないと思いながらも、ステラがヤキモチを焼いてくれた事が嬉しかった。


 家に帰ると、布団を敷いて、服を着たまま寝かせた。彼が床に就こうとした時、襖があいて、「お水頂戴」と、ステラが苦しそうに言った。持っていった水を一気に飲み干すと、ユウキの前で服を脱ぎ始めたのである。

 ユウキが、慌てて自分の部屋に戻ろうとすると、ステラは彼に抱き着き、離れようとはしなかった。


 やむなく、ステラの布団に一緒に入り、彼女が眠るのを待った。下着だけのステラに抱き着かれたユウキは、数センチの所にある彼女の顔を、どうしたものかと、眺めるしかなかった。

 アルコールの匂いが鼻を突いたが、それ以上に、この状態は彼を興奮させるに充分すぎて、眠る事は出来なかった。


 どれくらい経ったか、彼女の腕枕になっていた左腕が痺れてきたので、そっと腕を抜いた。スヤスヤと寝息をたてている彼女の額にキスをして、ユウキは自分の布団へと戻っていった。



 翌朝、朝食の準備をしながらステラが聞いた。


「私、飲みすぎて昨日のこと何も覚えて無いんだけど、何かあった?」


 ステラは何も覚えていなかった。ユウキが昨日の出来事を聞かせると、


「いやだ、ごめんなさい」


 彼女は、恥ずかしそうに顔を赤らめた。


「それで……何もなかったわよね?」


「男と女が、裸で抱き合って何もないわけないだろう」


 ステラは、まさかと言うような顔をしてユウキを見た。


「お酒の匂いがすごくて失神しちゃったよ」


「ひどい、嘘なのね!」


 ふくれっ面のステラは、大笑いするユウキを睨んだ。


「ごめん、ごめん、お酒は合わないようだから、あまり飲まない方がいいんじゃない」


 ユウキは、そう言って話題を変えた。


 その夜の事である。ユウキが寝床に入って、本を読んでいると、ステラが枕を抱いて部屋に入って来た。


「どうしたの?」


「一緒に寝てもいい?」


「えっ」と言ってユウキが戸惑っている間に、ステラが布団の中に滑り込んで来た。ユウキは、暫くステラの顔をうかがっていたが、その、美しい瞳に吸い寄せられるように彼女を抱き寄せると、唇を合わせた。


 ユウキは、熱いキスをしながら、溢れる気持ちを抑えきれなくなって、ショーツの中に手を滑り込ませようとした。だが、彼女はピクンと震えて、ユウキのその手を拒んだ。


 ユウキがキスを止めて、ステラの顔を見た。


「ごめんなさい……」


 ステラは睫毛を伏せた。彼女は、抱いてほしくて彼の所に来たものの、いざとなると、拒否反応が出てしまった自分の気持ちが分からなくなっていた。


「無理もないさ、無意識の中の本当の君がダメだと言ってるのかも知れないね」


「……」


 ステラの瞳が潤んで泣きそうな顔になるのを、ユウキが額にキスをして、優しく抱き寄せた。ステラは、ユウキの優しさに包まれながら眠りに就いた。


 ユウキへの想いを募らせたステラの行動は、若い二人が共に凄した、当然の成り行きだったのだが、彼女が記憶をなくしていなければ、異星人と恋に落ちる事は、無かったかもしれなかった。


 次の日、二人は、いつもの生活に戻っていたが、その日から、ステラがユウキの寝床に来る事は無かった。


 彼には、もう一つ気になることがあった。それは、ステラが、時々、暗い顔をして塞ぐことがある事と、夜中に聞きなれぬ言葉を発し、うなされる事があったからだ。


 増々謎が深まる、ステラの正体。考えるほどに、ユウキの気持ちは塞いでいった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ