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超次元戦闘スーツ――ステラ別話  作者: 安田けいじ
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再会

「ユウキ、お疲れ様」


「ステラこそ」


 北部基地の一室で、ユウキとステラは、初めて二人きりの時間を持った。


「アレク将軍から連絡があって、ネーロ軍のスパイが分かったそうよ」


「そうか、先ずは一安心だ。ところでステラ、君は何処に居るんだい?」


「えっ、何を言っているの?」


「お前、スペースなんだろう?」


「……いつ分かったの?」


「ここで君と抱き合った時さ、見た目は誤魔化せても、君を抱いた時の、微妙な感触までは誤魔化しきれないさ。それに、君の傍に十拳士が居ないのもおかしい」


『すみません、ストレンジ博士から頼まれまして。敵を欺くには味方からというでしょう。でも、私を動かしているのはステラですよ』


 と、スペースが言った。


「そうだったのか。兵士達へのステラの対応が、とても偽物だと思えなかったのは、その為だったんだね。……ステラ早く会いたいな」


「私も会いたい。こちらから連絡するわ」


 そう言うと、スペースは煙のように消えた。



 ユウキは本部へと帰り、アレク将軍に任務の完了を報告した。


「よくやってくれた、ご苦労様。先ほどカペラ様から連絡があって、明日レストランに来てほしいとの事だ」


「分かりました」


 ユウキは、ステラからの連絡ではないかと、喜びを隠せなかった。そんなユウキの気持ちを察したのか、アレクが、新しい服でも買えとカードをくれた。


 着のみ着のままでサファイヤ星に来たユウキは、何でも作れるコスモが居れば衣類にも事欠かなかったのだが、実際には軍服しか持っていなかった。

 彼は、その足で初夏の街に出ると、近くの店で服を買い求めた。ファッションの事はよく分からない彼は、好きなブルー系の普段着を店員に選んでもらった。


 次の日、新しい服を着たユウキは、カペラおばさんの店へと出向いた。レストランの窓際に植えられた、色とりどりの美しい花々が風に揺れていた。

 カペラが出迎えてくれて、奥へ通されると、そこには、レグルスとサルガスが座っていた。


「レグルス、サルガス、元気だった? 会いたかった!」


 ユウキは、二人と抱き合い再会を喜んだ。


「ユウキ殿も元気そうで何よりです。ご活躍も伺っていますよ」


 レグルスが、笑みを浮かべながら奥の部屋を指さした。ユウキが、ドアをノックすると、


「どうぞ」


 中からステラの声が聞こえた。中に入ると、奥のソファーに白いワンピースを着て、白い大きな帽子でお腹を隠すようにして座る、ステラの姿があった。


「やっと会えたね」


 ユウキは、感無量になって、ステラの横に座り抱きしめた。二人は、互いの愛を確かめ合うように、長いキスをした。


「せっかく来てくれたのに、連絡できなくてごめんなさい」


「スペースのおかげで、ステラといる気分だけは味わったけどね。少し肥えた?」


 ステラは、ユウキの手を取って自分のお腹を触らせた。ステラのお腹はポッコリと膨らんでおり、そのお腹に当てた彼の掌を何かがポコンと蹴った。ユウキは「えッ」と声を上げ、微笑んでいるステラを見た。


「あ、赤ちゃん?……」


「私達の子よ。もうすぐ生まれるわ」


 ユウキは感動で、目頭が熱くなった。


「いい子ね。お父さんに、ご挨拶したのね」


 ステラは、お腹を摩りながら赤ちゃんに語り掛けた。


 ユウキは、ありがとうありがとうと、涙を流しながらステラを優しく抱きしめ、口元やほっぺに何度もキスをした。


「これからは、ちゃんと僕が護るから」


「ありがとう、でも私にはレグルス達がいる。貴方には、私に変わって戦ってほしいの」


「そうだった。心配だけど、そうするよ。じゃあ、出産して動けるようになるまで会えないんだね?」


「その方がいいと思うわ。それと、今から母に会ってもらえる?」


「いいよ。僕も、挨拶したいと思っていたんだ」


 レグルス達を伴って四人は、首都の山側の高台に建つ、王宮へと向かった。幾つもの塔が立ち並ぶ壮大な建物だった。中央塔の一室に通されると、笑みをたたえた、女王アンドロメダが出迎えた。


「ユウキ殿、よく来てくれました。ステラを救い愛してくれた事に、母として心から感謝します。ありがとう」


 女王が、頭を下げた。


「陛下、私の方こそ、新しい人生を、新しい命を頂きました。ステラあっての私なのです。礼を言うのは私の方です」


 頭を下げるユウキに近寄り、女王は「有難う」と彼の手を取った。ユウキは恐縮して頭を上げる事が出来なかった。女王は、ユウキの肩をポンポンと叩いて、傍らのステラに視線を移した。


「体調は、どうなの?」


「お母さま、ありがとうございます。順調です、最近よくお腹を蹴るの」


「そう、あまり無理をしないで。こんな時ぐらいゆっくりなさい」


 女王は、ユウキ達を座らせると、お茶を進めた。


「私も、公務がきつい年玲になってきたわ。それで、皇位をアトリアに譲ろうと思うの。アトリアは、結婚して下野していたんだけれど、ステラが行方不明になった時、皇位継承権を復活させたのよ。

 本来、皇位継承第一位のステラが継ぐべきものだけれど、今の状態ではそれも出来ない。その点アトリアは子育ても終わっているし、長女として、女王としての教育も受けてきたから適任だと思うの。アトリアと、アレクには了承済みなんだけど、貴方たちの意見はどうかしら?」


「お母さま。お姉様にはご苦労をかけますが、私達に依存はありません。宜しくお願いします」


「そう、よかった。じゃあ、そのようにするわね。ともかく、この戦争を早く終わらせなければね。終わったら結婚式を盛大にやりましょう」


 女王は、頼りにしてるからと、ユウキと握手すると、秘書の言葉に従い部屋を後にした。


 王宮の外へ出ると、ステラは、ユウキに別れを告げ、レグルス達に護られながら何処かへ消えていった。


 ユウキは、元気なステラにも会え、わが子の存在も分かったことで、何としても戦争を早く終わらせなければと、誓いを新たにしてステラを見送るのだった。


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