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超次元戦闘スーツ――ステラ別話  作者: 安田けいじ
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サファイヤ軍への入隊②

 ユウキは、将軍の手配した車に乗って、研究所にストレンジ博士を尋ねた。研究所では、色んな戦闘服が並べられていた。

 博士の部屋へ入ると、白髪頭に口ひげを蓄え、白衣を着た男性がユウキを出迎えた。年の頃は六十前後だろうか、顔の皺が苦労の年輪を思わせた。


「おーっ、よく来た。ユウキだね、儂がストレンジだ。ステラが世話になった、ありがとう」


「こちらこそ、お忙しい中申し訳ありません」


 博士に促され、椅子に座ると、早速だがと博士は兵器の説明に入った。


「色々あるが、宇宙船に関しては、ステラが持ち帰った球体を研究中だ。近いうちに高性能の艦が作られるだろう。ネーロ帝国の総攻撃の可能性も噂されているから、急がねばならんな。

 ネーロ帝国との科学力は、ほぼ拮抗している為、イタチごっこを繰り返しておる。戦闘服の開発は、兵を死なせない為にも、儂が一番力を入れている分野だ。一年前に比べれば、シールドも、パワーも格段に上がっているんだ。ところで、ワンダー星のスーツはどうなった?」


「はい、素晴らしいスーツを作って頂きました」


 ユウキが、コスモの性能のあらましを説明すると、博士は身を乗り出した。


「そいつは凄いな。恐らく、コスモは宇宙の働きに似せて作られたんじゃろう。実戦で使う時は、パワーの加減が大変だろう」


「いえ、今はまだ、そこまでの力を出すことは出来ません。パワーも、戦闘力も、まだまだこれからです」


「コスモと話してみたいが?」


「分かりました。コスモ、博士と話してごらん」


 ユウキの指示で分身スペースが現れ、ステラの姿に変身した。


「少し紛らわしいですかね。私も随分会っていないもんですから」


 ユウキが博士を見て、いたずらっぽい笑みを見せた。博士は、しげしげと、ステラに化けたスペースを見た。


「博士、お久しぶりです」


 それは、紛れもないステラの声だった。博士はステラの手を握りながら、


「こいつは驚いた、見分けがつかんな。手の感触も、ほらこんなに」


 と、嬉しそうな博士は、手を取ったままスペースを椅子に座らせた。


「出来るものならば、あなたの科学力を、この星の為に使わせてもらう訳にはいかないもんだろうか?」


 博士の目は真剣そのものだった。


「そうね、他ならぬ博士の頼みですものね。兵士を護る戦闘服の技術を提供してもいいわ。当然、絶対的なものではないので頼りすぎないで。それと、常に最前線で戦う、ステラと、十拳士には、特に高性能のスーツを作りましょう」


「そうか。ありがとう、ありがとう」


 博士は深々と頭を下げた。


「博士、スペースは置いていきますので、よろしくお願いします。ステラの姿だと博士の 身が危ないので、他の姿に変えましょう」


 ユウキは、スペースを、普通の科学者の姿に変化させた。


「それでは、これで失礼します。お体を大切に」


「うん、お前もな。ステラを幸せにしてやってくれ、頼むぞ。あれは、今まで不幸すぎた。お前には感謝しているんだ。父親代わりとして礼を言う、ありがとう」


 博士に送られ、研究所を後にしたユウキは、もう一人会っておきたい人物がいた。


 それは、指導者ロータスだった。文明の繁栄の影には必ず偉大な思想があり、指導者がいる。ユウキは、この戦争に対する彼の意見を聞いてみたかったのである。

 ロータスは宮殿の傍らの、ヒューマンセンターという建物に居た。各国の指導者たちが、彼の意見を聞きたいと集まるそうである。ユウキは、アポイントも取らず行ったのだが、短時間ならと、彼は快く会ってくれた。


「遠いところよく来てくれたね。ステラからも聞いています」


 ユウキを迎えたロータスは、五十前後で、逞しい身体をしていて、その目は限りない優しさと強さを湛えていた。


「忙しいところ申し訳ありません。早速ですが、ネーロ帝国との戦争について、先生のご見解を、お聞かせ頂けないでしょうか?」


「分かりました。戦争は極悪ですが、今回のように一方的な侵略戦争ともなれば戦わざるを得ません。ネーロ軍には、攻撃をやめるよう毎日のようにメッセージを送っていますが、何の返答もないのです。

 ともかく、善なる民衆を守るのが私たちの使命です。私は兵士ではないので銃は取りませんが、兵士や犠牲者の心のケア、ネーロ帝国への呼びかけ、被害に遭った地域への復興支援等、出来る限りの事はやっているつもりです。あなた方兵士には、ご苦労を掛けますが宜しくお願いします」


「今回のケースなら、ネーロ帝国をせん滅する事になっても、止むを得ないと考えてよろしいでしょうか?」


「止むを得ないでしょう。但し、和平交渉は常に続けるべきです」


 ユウキは、戦いの中で止むを得ないとはいえ、人間を殺さねばならないという事に悩んでいたのである。


「戦う以上、中途半端では、かえって悪になってしまいます。出来るだけ殺さないで、相手を倒す方法を模索してください。貴方なら出来ます。例え出来なくても、貴方一人を地獄にはやりませんから、安心して下さい!」


 ユウキは、心のつかえが取れて、気持ちが軽くなっていた。そして、師匠と呼べる人物に出会えたことで、この星でもやっていけるという、確信が湧いて来たのである。


「ありがとうございました。元気を頂きました」


 ロータスに送られ、ユウキは基地へと戻った。


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