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超次元戦闘スーツ――ステラ別話  作者: 安田けいじ
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コスモ①

 ワンダー星の研究所では、ユウキの戦闘スーツの開発が、急ピッチで進められていた。ユウキは、自分も何か手伝いたいと雑用係を買って出て、アンドロイド達と共に働いた。


 研究所に隣接している工場では、戦闘スーツの他に、四体のロボットらしきものも、並行して作られていた。


「あれは何ですか?」


 不思議に思ったユウキが、開発責任者のフラルに聞いた。


「あれは、スーツを護る守護神達です。無敵のスーツはさすがに作れないので、ピンチに陥った時に、彼らがあなたを護ります」


 ユウキは、思いの外、スーツの製作が大掛かりになっている事に気をもんでいた。労力や資金も半端では無いはずだ。何故、見ず知らずの自分たちの為に、ここまでしてくれるのだろうと。

 


 戦闘スーツの製作が始まって、既に半年が経った。ユウキは、日にちが経つほどに、ステラ達の事が心配になり、落ち着かない日々を送っていたが、もう少しの辛抱だと自分に言い聞かせるしかなかった。


 そんなある日、フラルが笑顔でやって来た。


「ユウキ、今日からテストに入ります。心の準備はいいですか?」


「もちろん、いつでも行けます!」


 待ちに待った日が来たと、ユウキは意気込んだ。渡されたのは小さな黄金の指輪だった。


「この小さな指輪の中に、スーツも、守護神達も、全て収まっているんですね」


「その通りです。一つ断っておきますが、このスーツはユウキの身体と一体になりますから、一度装着すると死ぬまで離れることはありません。それでもいいですか?」


「死ぬまで離れないって、お風呂とかどうするんです?」


 ユウキは、スーツを着たまま生活するのだと思ったのだ。フラルは、笑いながら説明を続けた。


「本体は液体のようなもので、細胞に溶け込んでいきます。それが、一つの人工生命体を形成して、主の命令を実行するんです。あなたが指令を出せば、この世界の物質を集めて、戦闘スーツは瞬時に具現化されます。心で命令すれば、脱着は自由ですから、安心して下さい」


「痛みとかはありませんか?」


「最初は多少あります。身体に順応するまで、数日は違和感があるかも知れません」


「分かりました」


「では、その指輪を着けて下さい」


 科学者たちが見つめる中、ユウキが、黄金の指輪を指に着けると、スッと身体の中に溶け込んでいって、直後に、何かが身体中に染み渡るような感覚になった。その内、痛みと共に身体が熱くなって来たかと思うと、彼は、気を失ってしまったのである。



 ユウキが目を覚ました時には、既に痛みは消えており、フラルが心配そうな顔を向けていた。


「体調はどうです?」


「身体に何か入った違和感は少しありますが、問題ありません」


 ユウキは起き上がると、手足を動かし、飛んだり跳ねたりして見たが、特に身体能力に変化は無かった。


「身体能力も多少はアップしますが、もう少し時間がかかるでしょう。コスモに話しかけてみてください」


「コスモ?」


「すでに、スーツの核である人工生命は起動しています。名前をコスモと名付けました」


 ユウキは、心の中で「コスモ」と、呼び掛けてみた。すると、


『私は、コスモ』


 ユウキの頭の中で、誰かの声が響いた。若い男性の親しみやすい声だった。


『私は、ユウキと一体化しています。君が死ぬまで、私達は運命共同体で離れることは出来ません。私の力を引き出すのは、君の心次第です。例えて言えば、他者を慈しむ優しさが君を神にし、邪心や悪心が君を無力にするという事です』


 そこまで説明するとコスモの気配が消えた。


「では、これから訓練に入ります。スーツを着用して下さい」


 フラルに言われるままに、ユウキは、戦闘スーツをイメージしてみた。瞬時に彼の身体を包んだのは、ステラから貰ったスーツだった。


「貴方のイメージ通りの物が具現化されますから、どんな形にもなれます。ノーマルタイプを選択すれば、私が考えたデザインのスーツになります。スーツの形状に関係なく、戦闘能力は変わりませんから、心配要りません」


 ユウキがノーマルモードを選択すると、黄金に光るスーツに変わった。それは、今までに見た事も無い、洗練されたデザインの戦闘服だった。


「流石にプロですね。かっこいいです」


「ありがとうございます。あとは、コスモと相談しながら訓練を進めて下さい」


「了解!」


 ユウキは屋外に出ると、コスモに話しかけた。


「コスモ、何処で訓練しようか?」


『じゃあ、月へ行きましょう』


 その刹那、彼の身体は大空へと舞い上がっていた。風は感じない、呼吸も問題なかった。ステラのスーツのような映像や表示も無い。スーツは身体の一部となって、五感と心で全てを感じ取るのだ。

 グングンと加速して大気圏を抜け、宇宙に飛び出した。振り返ると、ワンダー星が青く輝いていた。



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