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超次元戦闘スーツ――ステラ別話  作者: 安田けいじ
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米軍の思惑

 太平洋艦隊の基地である、カリフォルニア州サンジエゴ海軍基地の軍病院で、ステラは検査と治療を受けが、彼女の心臓は手の施しようもないほど弱っていた。

 一週間が過ぎて、ステラの意識は戻った。傍には、ユウキの心配そうな顔があった。


「……私の修羅の顔を見たの?」


 ベッドの上のステラが、目を伏せながら、微かな声でユウキに聞いた。出来る事なら、あの姿をユウキには見せたくなかったからだ。


「ああ、美人の鬼さんだったよ。どんな姿になっても、僕のステラへの思いは変わらない」

 ユウキは、そう言って微笑むと、優しいキスをした。ユウキの優しさが身に染みて、ステラの緑の瞳が潤んだ。


「レグルス達も助かり、核攻撃も回避できた。すべて、君のお陰だ」


「そう、良かった……」


 ステラは、安心したように、また眠りについた。


「もはや、回復は見込めません。今でも心臓が動いているのが不思議なくらいです」


 医師は、顔を曇らせるばかりだった。



 ユウキは、レグルス達にステラの様態を知らせる為に、彼らの病室を訪れた。


「どう、元気になった?」


「私達は心配いりません。それで、ステラ様の様態はどうなんです?」


 レグルスが心配そうに聞いた。


「予断を許さない状況です。今は眠り続けています」


「また、あれをやってしまったんですね。私達が不甲斐ないばかりに、申し訳ない!」


 レグルスは涙ぐみ、サルガスは声を上げて泣いた。



 数日が経って、レグルス達が回復した頃、ジョーンズ大佐が現れた。彼は、大統領からの親書をレグルスに手渡した。

 その中には、ステラ達の活躍を絶賛し礼を述べた後、ネバダ州のネリス空軍基地に来てもらいたいと書いてあった。

 レグルスは快諾し、軍や病院の関係者に礼を述べて出立の準備に入ったのだが、ユウキは、ステラに付き添って残る事になった。


「ユウキ殿、ステラ様を頼みます」


 レグルスとサルガスは、ステラの寝顔を見てユウキに言葉をかけると、ジョーンズ大佐と共に、ネリス空軍基地へとヘリで出発した。


 ヘリの中で、レグルスが大佐に話しかけた。


「お国の方たちの中には、我々の科学力の粋を集めた戦闘服に、興味がある人がいるんじゃないですか?」


 大佐は、少し驚いたようにレグルスを見て、お手上げのポーズをして見せた。


「お見通しなんですね。実は軍の上層部から、スーツの情報を提供するよう説得してほしいと頼まれています」


「では、ネリス基地での要件は、その話ですか?」


 サルガスが、なんだというような顔をして訊いた。


「詳しくは話せませんが、その話もあります」


 と、大佐は含みを持たせた。



ほどなくして、ネリス基地に着くと、物々しい警戒態勢が敷かれていた。二人が一室に通されると、既に、高官らしい人物が中央に座り、左右には、軍服を着た上級士官達が並んでいた。

 長身で口ひげを蓄えた中央の高官は、国防長官だと紹介された。物々しい警備は彼の為だったのだ。彼は、二人に着席を促すと、


「大統領から、皆さんにくれぐれも宜しくとの伝言を預かってまいりました」


 と前置きしてから、本題に入った。


「早速ですが、我が国としては、貴方たちの戦闘服の技術を、是非提供して戴きたいのです。そのお返しと言ってはなんですが、エリア五十一に、エイリアンの宇宙船が保管されているのです。動くかどうかは分からないのですが、一度その宇宙船を見てはどうでしょう。動くものなら差し上げます」


「交換条件という事ですか?」


 レグルスは、長官に厳しい目を向けた。


「動けばの話ですが、私どもの科学力では解明は難しいのです。これからご案内します」


 長官は席を立つと、レグルス達を促し、ヘリでエリア五十一へと向かった。



 エリア五十一で知られる基地に着くと、ここでも、厳戒態勢で迎えられた。


「ここからは、一部の軍関係者以外は入れないエリアです」


 長官はそう言いながら、一つの格納庫の地下へとエレベーターで下りて行った。そこは、大きな地下格納庫になっており、数機の最新鋭機らしい機体があって、その奥に、一種変わった物体が置かれていた。


 直径は十メートル位だろうか、鈍い緑色をした球体で宇宙船のイメージとは、かけ離れたものだった。


「これが、その宇宙船です。いや、らしきものと言った方が適切かもしれませんが……」


 長官はそう言って、球体の周りをぐるっと案内した。


「外装には傷一つありませんが、入り口が無いのです。色々試してはいるのですが、今まで、何も解明されていません。あなた達の星のものですか?」


「いいえ、私も、このような物は見たことがありません」


 レグルスが答えると、長官は、残念そうに頷いた。


「間違いなく、異星人のものでしょうね。この船を動かすことが出来たら本当にいただけるんですか?」


 レグルスが興味深そうに球体を見ながら訊いた。科学の発達したエイリアンの宇宙船なら、ステラをすぐにでもサファイヤ星に連れて帰って、治療を受けさせることが出来ると思ったからだ。


「差し上げます。ただし、例のスーツを一体だけ提供してもらいたい」


「今の地球の科学力では、あれを解明するにしても、百年はかかるでしょうね。作り方が全然違うのです。私共も科学者ではないので、技術の手ほどきは無理だと思います」


 レグルスが、説明すると、


「何とかならないですかね?」


 長官は、懇願するような目でレグルスを見た。


「長官。私共としましては、強力な兵器を、一国だけに提供することは出来ません。この星の為にならないと思うからです。しかし、宇宙開発など、全地球的な分野なら多少の協力は出来るでしょう。例えば、次世代の新エンジンの技術提供でしたら、私達でも何とかなります。一度検討してみて下さい」


 レグルスは、自分たちの思いを端的に話した。


「検討しましょう」


 長官は、前向きに検討すると応じた。


 会議室に戻り、今後どうするかを意見交換した。とりあえず、レグルス達と米軍共同で、球体の解明をすることに決まり、新エンジンの件も、世界の頭脳を結集して共同開発することが決定した。


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