表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超次元戦闘スーツ――ステラ別話  作者: 安田けいじ
11/31

決戦、スコーピオン

 太平洋上では、米軍の太平洋艦隊が、ネーロ帝国のロボット、スコーピオンの潜む海域を、戦艦、巡洋艦、空母などで包囲し、爆雷や魚雷で一斉攻撃を開始していた。


 ズン! ズン! ズズーン!! 


 海中で無数の爆発が起こり、白い水柱が上がった。


 暫くすると、赤いレーザービームが海中から放射され、艦隊の巡洋艦の側面を直撃した。その直後、巡洋艦のすぐ横に、黒いサソリ型のロボット、スコーピオンが無傷の姿を現したのである。


 その全長は15メートルと、かなり大きい。スコーピオンは浮上するなり、その両腕のドリルビームを起動させると、唸りをあげて巡洋艦に襲い掛かった。巡洋艦の厚い装甲は、ドリルに触れた途端、瞬時に溶けて大きな穴が開いた。


 その穴から、スコーピオンが艦内に入って暴れまわり、再び姿を現した時には、巡洋艦は大破し海中へと沈んでいった。それは、数分の出来事だった。


 米艦隊は、味方の艦の近くでスコーピオンに暴れられると、手も足も出せず、次々とスコーピオンの餌食となり、海の藻屑と消えていったのである。


 米軍は、艦同士の距離を開ける作戦を取って、スコーピオンが次のターゲットに向かうところを攻撃したが、シールドに護られたスコーピオンに、傷一つ付けることは出来なかった。


 そこへ、ジョーンズ大佐とステラ達がヘリで到着した。彼らの情報をもとに、作戦会議が空母カール・ビンソンで行われた。


 レグルスが、自分達がエイリアンである事を話すと、一同は、まさか、と言って顔を見合わせたが、眼前の化け物の様なスコーピオンの存在を思うと、納得せざるを得なかった。

 艦長は、大統領の水爆の使用許可が出た事を告げたが、ステラは、自分達に時間をくれるよう頼んだ。

 核を使えば汚染の問題もある。それ以前に、この災いを連れて来た自分達が、決着を付けるべきだと思ったからだ。艦長は最初難色を示していたが、懇願するステラの気持ちに免じて「三十分待ちましょう」と言って席を立った。



 米軍は、水爆投下の作戦を開始した。艦隊を退避させ、水爆を搭載した爆撃機は、本土の基地を飛び立ったのである。

 水爆でスコーピオンのシールドが破れるかどうかは、ステラ達にも分からなかった。


 ステラ達三人は、スーツを纏うと空母を飛び立った。彼女には、スコーピオンに対して、一つの勝算があった。それは、触れるものすべてを破壊するというスコーピオンのドリルビームは、両刃の剣でもあるという事だった。


 三人はスコーピオンの居る海域に着くと、米軍の艦隊からスコーピオンを引き離す為に、近くの島に例の発信機をセットして待った。



 暫くすると、発信機の電波に釣られて、スコーピオンが島に這い上がって来た。対峙してみると、十五メートルの体長はかなり大きく感じた。

 スコーピオンは、ステラ達を見つけるなり、尻尾の先端のビームを放ち、盛んに攻撃して来た。だが、ステラ達がビームの発射口目掛けて、一斉に渾身のエネルギー弾を撃ち続けると、意外に、尻尾の発射口を破壊する事に成功したのである。


「右腕に組み付いて!」


 ステラが叫ぶと、レグルス達は、スコーピオンの右手に組みついた。ドリル部分の直径は二メートル位あるが、その腕部分は五十センチほどで、辛うじて腕が回った。

 スコーピオンは、彼らを振り払おうと狂ったように暴れだした。二人は、腕を抑えつける事が出来ないまま、必死に食らいつくしかなかった。


 その間、ステラはスコーピオンの頭部にエネルギー弾を浴びせ続け、援護射撃を行っていた。


 しびれを切らしたスコーピオンが、右腕にしがみ付くレグルス達目掛けて、赤く燃える左のドリルビームを一気に振り下ろした刹那、レグルス達が、間一髪の所で後方に飛び退くと。


 ドドドドーーーン!!!!


 スコーピオンの右腕は、凄まじい閃光と共に、その付け根から吹き飛んだのだ。

 スコーピオンを倒す最大の武器。それは、他ならぬスコーピオンのドリルビームだったのである。


 左腕一本となったスコーピオンは、最後の力を振り絞って三人に襲い掛かった。レグルス達が、再びその腕に組みついて、真っ赤に燃えるドリルの腕をスーツのフルパワーで押さえつけ、スコーピオンの頭部に押し付けようとした、その時、


「危ない!」


 ステラの声が響いた途端、スコーピオンの尻尾が鞭のようにしなり、レグルスとサルガスを、地面に叩き落としたのである。そして、赤いドリルビームが、唸りを上げて二人を襲おうとした時、ステラが、二人の盾になる形で、ドリルビームを両手で受け止めたのだ。


「ウウッ!」


 ドリルビームの威力に圧倒され、彼女は、ズズッと後退しながら懸命に踏ん張ったが、スーツはシュウシュウと音を出して溶けだし、シールドは今まさに破られようとしていた。


「ステラ様!!」


 レグルスとサルガスが、必死の形相でステラを突き飛ばした瞬間、真っ赤なドリルビームが二人を直撃して、数十メートルも弾き飛ばされてしまった。


 二人は、スーツを無残に破壊されて地面に打ち付けられ、ピクリとも動かなかった。


「レグルス、サルガス!!」


 ステラが叫びながら二人に駆け寄り、身体をゆすったが反応はなかった。


 彼女は、レグルス達の名前を呼んで泣き崩れていたが、その身体が震え始め、スーツから陽炎の様なものが立ち上った。顔を上げた彼女の眼は真っ赤に変色し、髪は逆立ち、その形相は鬼のように変貌していた。修羅化である。


 「許さぬ!」


 ステラはそう叫ぶと、いきなりエネルギー弾を、スコーピオンの頭目掛けて撃ち続けた。何故か、そのパワーは桁違いにアップしていた。彼女の怒りがスーツの力を増幅し、修羅鬼と化して暴走を始めたのだった。


 ステラは、スコーピオンが怯んだ隙に左腕を取ると、そのままスコーピオンの頭目掛けて、ドリルビームを押し付けた。


 ドドドドーーーン!!!!


 轟音と共に、スコーピオンの頭部は完全に破壊され、動きは止まった。だが、ステラの怒りは収まらない。かまわず、特大のエネルギー弾を撃ち続けたのだ。


 その時、上空に現れたのはユウキだった。彼は、ステラの身体が心配で、来てしまったのだ。彼は、レグルスのスーツから送られて来た映像を見ていたから、状況は直ぐに分かった。


「ステラ、ステラ!」


 ユウキが、エネルギー弾を撃ち続けるステラの背後から呼びかけたが、彼女が振り向く気配はなかった。


「ステラ!!」


 大声で腕をつかんだ瞬間、ステラの赤い目がユウキを睨みつけたかと思うと、彼女のエネルギー弾がユウキに炸裂し、二十メートルほども吹き飛ばされた。

 いつものステラとは桁違いのパワーだった。スコーピオンは既に跡形もなかったが、正気を失ったステラは、尚も撃ち続けた。


 ユウキは意を決し、彼女の前面に出て、エネルギー弾をまともに受けながら、徐々に近付いていった。スーツの警報が鳴りっぱなしになり、ダメージも半端ではなかったが、核攻撃の時間も迫っていた。ユウキは、早く止めなければと更に近付き、ステラを抱きしめた。

 彼は、振りほどかれそうになるのを堪え、離してなるものかと、気が遠くなるのを懸命に耐えながら、ステラを抱きすくめた。


「ステラ、ステラ、僕だよ、ユウキだ。もういいんだ、終わったんだよ。怒りを静めておくれ……」 


 ユウキは眼をつぶり、ステラの心に届けと祈った。そして、マスクを収納し、その顔を見せたのである。

 すると、ステラの力がフッと抜けて、彼女の眼は赤から緑へと戻っていった。


「ああ、ステラ!」


 ユウキが更に抱きしめると、ステラはグッタリとなって気を失った。


 彼はステラを背に、レグルス達を両脇に抱え空母へと戻ると、彼らの治療と、水爆攻撃を中止するよう伝えた。


 艦長たちは、彼らの戦いを、スーツから発信された映像で見ていた為、既に、核を積んだ爆撃機は「攻撃中止!」の命令を受け、大きく旋回し帰路についていた。


 レグルスとサルガスは、一命を取り留めることが出来たが、修羅化で無理をしたステラは重体となって目を覚まさなかった。


 彼らを乗せたジェットヘリは、アメリカの軍病院へと急行していった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ