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4話:アルヴィスの賢者

ここ一週間少々忙しく、大分急いで書いたのでチェック甘めです。申し訳ありません。

誤字、文法ミス、その他ご指摘がございましたら感想等でお伝えいただけると幸いです。

「さあ、着いたわよ。ここが私達の町、魔法都市アルヴィス」


 ミラに案内され辿り着いたのは、一見するとかつて自分が居た世界の町と大差ない外見の町だった。

 建材は分からないが、レンガ造りのような雰囲気の建物が通り沿いに建ち並んでいる。

 全体的に素朴な雰囲気の町は、聡哉が思い描く都市のイメージとは少々乖離していた。


「都市、なんて言うともっと大規模で豪勢な街並みを想像するかも知れないけど……この町が魔法都市と呼ばれる所以は、町の規模や外見じゃなく、その内面にあるわ。まあ、しばらくすれば分かるわよ」


 ミラは歩きながら、どこか得意げに語る。


「それで、今からどこに向かうんだ?」


「とりあえず、この町の町長の家よ。貴方の今後とか、魔法の話とか、話したいことはいっぱいあるしね。町長は偉大な賢者が務めることになっていて、今の代の町長も名高い賢者よ。きっと学ぶ事は多いと思うわ」


 町長と話せば、噂の真相も確かめられるかもしれない。聡哉は頷き、ミラに付いて歩いた。

 そして、ふと浮かんだ疑問をぶつけてみた。


「ところで、さっき君は『私の家は代々……』って言ってたけど、君の家には何かあるのか?」


 ミラはその問いを聞くと、よくぞ聞いてくれました、と言わんばかりの満面の笑みで振り向いた。


「あら、覚えてくれてたの? いやー仕方ないわねー! 教えてあげるわ!」


 うざかわいい、というのはこういうことだろうか。微妙にイラっと来た聡哉を尻目に、ミラは盛大なドヤ顔で語りだす。


「ふっふっふ、実は私の家は、かつて単身で当時の魔王を打ちのめし、この世界で最大級の王国にも極めて大きな功績を残し、今や誰に聞いても最高の賢者トップ5には入る名声を手に入れた稀代の大賢者、ウィーデンス・ソロネの子孫なのよ!」


「へぇ……その人、そんなに凄いのか?」


「そりゃもう、凄いなんてもんじゃないわよ!? そもそも私達が居るこの町も、彼が居なければ生まれなかったんだから! 他にも語るネタはいくらでもあるけど、まあそれは一旦置いといて、とにかく凄いんだからね!?」


 なんというか、必死さというか、本当に尊敬しているんだなぁというのがひしひしと伝わってくる。

 それだけ自分の先祖に誇りを持てるのはとても良い事だと思う。


「わかったわかった。それで、代々って言ってたのは?」


「あー、そっちの話に入るのね……。まあそんな凄い人を先祖に持つ家だから、当然皆魔法使いとしての実力も誇りも高い人ばっかりなの。実際、彼ほどの怪物は流石に居ないけど、過去何人も優秀な賢者を輩出してきたわ。それで王国からもその実績が認められて、うちは代々王国お抱えの賢者としてお呼びがかかるようになった、って訳よ。今までその代の全員が無能だった例は一度も無いからね。これも私の家の誇りよ!」


 なんか、話が変わった途端に若干だがテンションが下がった気がするのは気のせいだろうか……?


「なるほど、魔法使いの名家って訳なのか。通りであんな派手で強そうな魔法を使う訳だ。凄い魔法使いだったんだな」


「いやぁそんな! もっと褒めてくれてもいいのよ!?」


 これはうざい。あんまり調子に乗らせないようにしなければ。たまには面白そうだが。


「っと、そんなこと話してる間にもう目的地ね。ここが町長の家よ」


 ミラはそう言い、目の前の建物を指さす。

 なるほど、町長の――言い換えれば偉大な賢者の家と言うだけあり、他の建物よりも大きく、趣向も凝らされている。家というより、雰囲気としては神殿といったものに近い。

 ミラが玄関にある呼び鈴のような物を鳴らす。


「もしもーし、レメゲトンさん? ちょっと用があるんだけどー」


 すると、今までそびえ立っていた大きな扉が音を立てて開かれる。

 扉の向こうに人の姿はなかった。


「これもちょっとした魔法よ。まあいろんな人の話を聞く限り、科学の世界にも同じような物はあるんでしょう?」


 言われてみれば、確かに元居た世界にもこういう物はあった。だが、それが魔法で出来るとは。

 こんな事をも可能にする賢者とは、一体どんな人物なのだろうか。高名な賢者というからには、やはり老人なのだろうか?

 ミラの後に続いて、聡哉も家の中に入る。

 扉をくぐってまずあるのが、大きなホールのような場所。周囲にはいくつかの階段や通路が見え、おそらくはそれらの先に家としてのスペースがあるのだろう。

 聡哉が周囲の風景を眺めていると、



「なるほど、ミラちゃんが久しぶりに来て用事だなんて言うから何事かと思えば……『外』の人か。こりゃあ確かに用事ねぇ」



 不意に、背後から若い女性の声が響いてきた。聡哉が驚いて振り向くと、そこには一人の女性が立っていた。ここまでは一本道だったはずだが、どうやって回り込んでいたのだろうか。

 ミラがその女性に話しかける。


「もう、脅かさないでくださいよ。いつもは普通に階段降りて来るじゃないですか」


「いや~、『外』の人が居たもんだから、ちょっとびっくりさせてみたかったのよ。ごめんなさいね」


 聡哉の前に居る女性は、気軽そうに答えた。

 聡哉よりも高い身長に、長い赤髪。どことなく姉に似た雰囲気を持つその女性は、状況が呑み込めずに困惑している聡哉に話しかけてきた。


「びっくりさせちゃってごめんなさい。私はレメゲトン。この町の町長やってるわ。貴方の名前は?」


「えっと……僕の名前は三島聡哉です。あの、どうやって僕達の後ろに……?」


「何てことないわ。魔法よ」


 自身の疑問を『魔法』の一言で片づけられ、聡哉はいよいよ魔法という物に困惑を覚える。

 そんな聡哉を尻目に、ミラはレメゲトンに話しかける。


「レメゲトンさん。知っての通り聡哉は『外』の人だから、彼のことについて色々話がしたくて来たの。それに、『外』の世界の人だから、きっと……」


「……なるほどね。じゃあ、まずはそれからね」


 レメゲトンはそう言うと、聡哉に向かって振り向き、こう言った。



「それじゃあ聡哉君。確かめさせてもらうわ。――貴方の『力』を」

お読みいただきありがとうございました!

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