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閑話 王族の血

「お疲れのようですね、父上」


 王が執務室でバートン達が関与していた不正に関する書類を処理をしていると、金髪の美青年が部屋に入ってきた。彼の名前はレオンハルト・ローズウェンディス。この国の第一王子だ。


「レオンハルトか。たしかに疲れているが、これで国内の膿が一掃されるなら大した苦労ではない。証拠を集めたカサンドラ嬢には頭が上がらんな」


 カサンドラがもたらした資料は国王達が追っていたバートンや奴隷売買組織だけでなく、国王も知らなかったその他の貴族達の不正まで記されていた。その結果、時間はかかったが今まで甘い汁を吸っていた腐敗貴族の摘発に成功した。


「ええ、本当にあの男と血が繋がってるとはとても思えませんよ。そこらの令嬢とはレベルが違います……実に魅力的だ」

「魅力的って……彼女はまだ十歳だぞ?」

「何言ってるんですか父上、十歳だからこそでしょう」

「えっ?」


 国王が固まる。


「あの幼女と少女の間という最高の年頃ですよ? 魅力的に決まってるじゃないですか。でも俺からしたら幼女の方がいいですね。無垢な瞳に、無邪気で愛くるしい仕草。もし舌足らずな口で『大好き』なんて言われたなら、本当に昇天してしまうでしょう! 」


 嬉々と幼女の魅力を語る自分の息子に国王はドン引きする。そしてレオンハルトの性癖にようやく気づいた。


「まさか……レオンハルト、お前はロリコンだったのか?」

「あれ、知りませんでしたか?これでも『幼女を愛でつつ見守るミリム会』の会長を務めているのですが」

「何だその会は!? 」


 そんな名前からして色々とやばそうな組織の存在なんて初耳だ。しかもその変な組織のトップが息子だということに驚愕を隠せない。


「ロリコンのロリコンによる幼女のための親衛隊です。合言葉はイエスロリータノータッチ! 」


 国王は頭が痛くなった。文武両道で性格も誠実、次期国王として文句なしと男女共に慕われている自分の息子が実はロリコンだったとは誰が予想できただろうか。


 レオンハルトには十八になった今も婚約者がいない。婚約しなかった原因はレオンハルトの婚約候補達の能力不足など色々あったが、今回の国家反逆に連座して多くの貴族が処罰された影響で最終的には国外から妃を招くことになっている。そのタイミングでロリコン発言は色々とまずい。


「それでお前はカサンドラ嬢を魅力的だと言っていたが、まさか婚約者にするつもりか? 我が息子でもそれは許可できないぞ」

「いえそれはありえませんよ。実際に手を出した父上と違って、俺はイエスロリータノータッチの紳士ですから」

「ちょっと待て! 私は幼女に手を出したことなんてないぞ! 」

「いや~、見た目幼女の母上を孕ませた父上が言っても説得力がありませんよ」

「うっ……」


 レオンハルトの母でこの国の王妃であるレイカは十八歳の息子がいるにも関わらず、見た目は十歳前後の美幼女にしか見えない。レオンハルトと並ぶと親子というより年の離れた兄妹だ。しかも彼女をよく知る者曰く、『彼女はここ十数年、姿を変えていない』らしい。つまり国王が手を出した時も外見は間違いなく幼女だった。


「人聞きの悪いこと言うな! レイカとは合意の上だし……それに手を出したのは成人になってからだし……」


 国王は反論するが、見た目が幼女の妻とニャンニャンしたことは事実であるため、徐々に声のボリュームが小さくなった。そんな父親の様子にレオンハルトは溜息をつく。


(俺の性癖は遺伝なんだろうな、父上は否定するだろうけど)


「まあ父上がロリコンなのは周知の事実ですからどうでもいいですが「よくないだろ!」でも父上の心配は杞憂ですよ。ちゃんと妻となる人は愛するつもりです。国を傾けることがなければね」

「それなら問題ないが……いや私のロリコン疑惑は問題か」


 すでにレオンハルトの性癖を知る一部の者から王族=ロリコンという不名誉な認識をされているが、国王はそれを知らない。


「いや事実でしょう」

「うるさい。そういえばお前は私に何か用があるんじゃないのか?」


 レオンハルトは滅多なことがない限り執務室を訪れない。バートンの件の時すらここに訪れることはなかった。


「そうでした。父上、明日からミリムスーパードームでライブが行われることはご存知ですね」


 国王は頷く。明日から始まる世界の歌姫ルルアーナのミリム公演を許可したのは国王自身だ。


 ルルアーナとは数年前に突如として現れた圧倒的な歌唱力と今まで見たことことがない楽器やパフォーマンスで人気の歌手だ。その歌声は平民、貴族問わず魅了し、一度その歌を聴くだけでたちまち虜になると言われている。かなりの美少女だが、実年齢や出身地が不明のミステリアスな人物でもある。


「そのライブに行く許可をいただきたいのです」

「ふむ、護衛をつけるという条件なら許可しよう」


 今はレオンハルトに任せる仕事もない。いずれ王太子になったら遊ぶ時間はなくなるだろう。本当なら褒められたことではないが、これも親心だ。仕方あるまい。


(しかしレオンハルトがルルアーナに夢中になってるとは知らなかったな)







「ありがとうございます。これで母上の愛くるしい姿を目に焼きつけることができます」

「………………はい? 」


(いやいやいやいやちょっと待て。ルルアーナのライブだよな?何でそこにレイカの名前が出てくる?)


「母上とルルアーナのコラボか。最前列で母上を応援しないと。母上ファンクラブの副会長として頑張らなくては」

「えっ、ちょっ、まっ……」


 レオンハルトは引き止めようとする国王に気づかず、満足そうに執務室を後にする。





「そんなの、知らない……」


 その日、国王は部屋の隅で体育座りしながらいじけていたらしい(なおその夜、国王にライブのことを話し忘れていたレイカに謝られて、なんとか機嫌を直した)




 しかし大量の仕事が残っており、結局ライブに行けなかったそうな。




「レオンハルト、許すまじ」

「あ、陛下。追加の書類が届いたのでよろしくお願いします」

「嘘だろ……」

国王「レオンハルトがロリコンだった……」

マルクス「間違いなく遺伝ですね」

国王「ち、違う。俺はロリコンじゃない! 」

レオンハルト「合法ロリの母上に欲情した時点でアウトです、父上」

国王「………」


このあと滅茶苦茶いじけた。


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