使うことのできないスキル
~期待外れの山岳~
「ここなら誰も来ないし魔物もまずいないから思う存分に試せるよ!」
ペガサス支部から歩くこと大体30分。
僕はティルファさんの案内で期待外れの山岳という場所にやってきた。
ティルファさん曰く、ここなら好き放題できると言うが、確かにその通りかもしれない。
期待外れの山岳というだけあってここには何もない。
普通山岳と聞くと美しい景色を想像しがちだが、ここは景色のけの字さえも感じられない程に殺風景な場所だった。
雑草1つ、凹凸1つすらない綺麗な平らな地面。
目の前に広がるのは立ち並ぶ住宅。そしてギルド。
頭上はいつもと変わりのない青空。
そして所々に刺さっている変な槍。
なんだこれ?
とにかく期待外れの名にふさわしい場所だなのは間違いない。
「そういえばレイ君はどんな能力を持っているの?」
「え~……と、口で説明するよりも見てもらった方が早いですね」
ポケットに入れてある勇者カードをティルファさんに渡す。
これには個人情報が沢山詰まっているらしいが、ティルファさんなら別にいいだろう。
見られて困るようなことも僕にはないし。
……多分。
「は……え…?あの……その、ありが、とう?」
「?」
何故かティルファさんの顔が真っ赤に。
何か不味かったか?
「どうかしましたか?」
「あの、えっとね?レイ君はこれに個人情報が沢山入ってるってのは説明を受けているよね?」
「……?はい」
「それでね、その個人情報っていうのが自分のステータスだけじゃなくて、登録者がこれまで体験した経験とか、記憶とかも入力されているの」
はっ!?
それは初耳だ!
「だから……これ1つあるだけでその人が覚えてすらいない、その……恥ずかしい過去とかね?なんか人に知られたくないこととかもね?一緒に入ってるの」
「もしかして、前世も含めてですか?」
「……うん」
ぬぁぁぁぁ!!!
嘘だろっ!?
それは駄目だっ!
こっちの世界に来てからだけなら問題ないが、前世も含まれるのは駄目だっ!
「それで……ね?ちょっと言いにくいんだけど、それが理由でこっちの世界では勇者カード、もしくは王族を含めた一般人に発行される身分カードを「自分が想う異性に渡すことで結婚を申し込む」っていう風習があるの」
ふぁっ!?
結婚!?
「あの、勿論レイ君はそのことを知らないと思うから偶々だったんだろうけど、その……ちょっと勘違いしちゃって……!ごめん!男の人に突然結婚を申し込まれたことなんてなかったから、凄い取り乱しちゃって……」
いやいやいやいや!
それは驚くよ!
僕が逆の立場でも多分驚いてたし!
てかそんなに大事なものだったのかよこれ……
あんまり迂闊に、てかもう人に渡さない方がいいな。
こんなのを渡して「自分はあなたに結婚を申し込みます!」なんて勘違いされたらたまったものじゃ―――
……あれ?
僕1回あの受付嬢に渡さなかったけ?
いやでもあれは初めの説明を受けるために仕方なくやったことで、僕にそんな意図があったわけじゃ……
でも今思い返せばなんか反応が変だったような……?
大丈夫、だよな?
「そんなに謝らないで下さい!僕の方こそ知らずに失礼な真似をしてしまってごめんなさい!だから、そんな気にしないで下さい!僕も新しい常識を知ることができて良かったですから!」
「うぅぅ……ありがとう……」
こういう大事な説明はちゃんとしておけよ!
はぁ……でもこうして考えてみるといくら転生時にこの世界の常識を等が頭の中に入っているとはいえ、こんな風に知らないこともあるんだな。
多分これの他にも沢山あるんだろうな。
どこかでちゃんと勉強できればいいんだけどな。
「それじゃこれ、代わりに僕の能力をまとめたものを紙に書いてみたんで参考にしてみてください」
「ん!ありがとう!どれどれ?」
職業能力
勇者(王族から無条件の援助)
剣聖(剣と判断される武器の重さを装備時のみ無効)
称号能力
錬精術士(錬金術の成功確率100%)
魔導師(上級魔法までの呪文詠唱破棄)
駆け出し勇者(ダメージが魔族に対してのみ2倍)
創造者(世界の理に反する物質を精製可能)
世界の理を知る者(全魔法使用可能)
剣聖(剣の耐久性が無限大)
固有能力
神の寵愛(毎分自身の魔力の4分の1を回復)
精霊皇の加護(全属性体制)
未知の侵略者(全魔力消費でブラックホール出現)
VS魔族(魔族に対してダメージ2倍)
母親の知恵(家事・料理全般Sランク)
乱獲者(倒した魔物から得る素材2倍)
大切断(一定確率で対象となる物質を無条件に切断)
『真能力・超新星爆発(???)』
修得能力
無し
「ふわぁ……やっぱり結構あるね。でもあれ?ちょっといいかな?
」
「なんでしょうか?」
「この『真能力・超新星爆発』って何?」
「何、とは?」
「能力の種類は自身の職業が反映された『職業能力』、職業や成長の課程などによって得られた称号が反映された『称号能力』、その人個人が先天的に、もしくは後天的に会得する『固有能力』、努力や修行などによって得られる『修得能力』の4つしかないの。どんなに特別な人でも5つ目の能力を所持している人なんていない」
「でも、確かにステータスには真能力というのがありますよ?」
どういうことだ?
とりあえずもう一度確認してみようか。
勇者名 レイ=キリサト
職業 勇者・剣聖
称号 駆け出し勇者・創造者・世界の理を知る者・剣聖・魔導師・錬精術士
職業能力
勇者(王族から無条件の援助)
剣聖(剣と判断される武器の重さを装備時のみ無効)
称号能力
錬精術士(錬金術の成功確率100%)
魔導師(上級魔法までの呪文詠唱破棄)
駆け出し勇者(ダメージが魔族に対してのみ2倍)
創造者(世界の理に反する物質を精製可能)
世界の理を知る者(全魔法使用可能)
剣聖(剣の耐久性が無限大)
固有能力
神の寵愛(毎分自身の魔力の4分の1を回復)
精霊皇の加護(全属性体制)
未知の侵略者(全魔力消費でブラックホール出現)
VS魔族(魔族に対してダメージ2倍)
母親の知恵(家事・料理全般Sランク)
乱獲者(倒した魔物から得る素材2倍)
大切断(一定確率で対象となる物質を無条件に切断)
『真能力 ・超新星爆発 (???)』
修得能力
無し
備考
重複転生者
……うん。
間違いなくある。
勇者カードのエラー?
「勇者カードでもう一度確認してみましたがやっぱりありました」
「う~ん……それじゃあさ、とりあえずその能力を使ってみて!もしかしたら新しい能力が誕生したのかもしれないし!」
なるほど。
そういう考え方もあるか。
なら使ってみよ―――
「って待った!」
「どうかしたの?」
「この超新星爆発っていう能力、能力の説明がないんです。こんなのを何の準備も無しに発動してもいいんでしょうか?」
他の能力には能力名の後にそれがどんな効果を持っているのかを表す説明書きがある。
未知の侵略者のように凄い曖昧な説明のもあるにしろ、どれも必ずし大体の能力が把握できるようになっている、
だが、この超新星爆発にはそれがない。
名前の後ろは???になっていて効果が全く分からない。
「多分大丈夫だと思うよ?能力の説明書きがないのはまだ誰も使用したことがない新しい能力の証明。勇者カードはそれを製造する世界連盟勇者斡旋ギルドの本部に魔法的な力で繋がっていて、勇者が使用した能力を勇者カードが自動的に読み取って、その効果を本部が入力することによってその能力がどんなものなのかを教えてくれる仕組みがあるの。だから割りと珍しいことじゃなかったりするんだよ?私も始めに2つ程固有能力が???の状態があったし。だから、とりあえず恐れずにやってみようよ!」
そんな仕組みもあるのか。
この勇者カードって高性能だな。
無駄に。
「そうですね。それじゃ、超新星爆発!」
僕が能力を使用した瞬間、辺りは轟音と共に目を閉じても尚伝わってくる強力な閃光に包まれ、僕達が立っていた場所を中心に半径5㎞以上にあった自然物、建造物が消失し、その代わりに目の前には出来たばかりの赤ん坊の星が創造されて――――
いたら良かったのになと本心から思う。
期待外れにも程がある。
結局僕の使った能力は何の事象も発生させず、不発?のような感じで終わりを告げた。
大袈裟に表現したが本当に何もなかった。
ステータスに変化なし。
環境に変化なし。
音も無ければ光も出ない。
全くの無意味。
残念さで言えば確かに超新星爆発級だ。
「能力、使用したんだよね?」
「一応、そのつもりです」
「何もなかったね」
「何もありませんでしたね」
「…………」
「…………」
まだ誰にも知られていない真能力なんてものがあるのかな?と、期待と不安を込めて使用したらこの様だよ。
なんだよこれ!
あれか?
ここが期待外れの山岳なんて呼ばれているからこんな結果になったのか?
そーなのか?
ん??
このなんか気まずい空気をどーしてくれるっ!
誰か助けてくれっ!
「……何もないってことは、やっぱりその能力は存在しないものなのかな?それとも使用条件が何かあるのかな?」
「使用条件?」
「うん。能力に限らず魔法にもあるんだけどね、たまにその能力を使う際に環境が整ってないと発動できないものがあるの。簡単な例を挙げると水の中でも息ができる「水中遊泳」とか周囲の砂を集めて武器や建造物を創造する「砂遊び」とか。どちらも水と砂が無ければ発動をすることの出来ない能力なの。もしかしたらレイ君のその能力もそんな感じなのかなって」
ん~……
確かに環境せいで発動できないってのはあるかもしれないけどその発生条件ってなんだよ?
さっきの能力だとどの場合で使えるのかは名前からして簡単に見当がつくけれど、これはどうなんだ?
超新星爆発だぞ?
まさか宇宙に行けってか?
いやいや、流石にそれは無理だろ。
宇宙まで行ける能力があればもっと別のことに力を使えるはずだし。
……発動条件が宇宙ではないにせよ、環境が原因かもしれないってのは頭に入れておくべきだな。
「まだちょっと原因は分かりませんが、それも頭に入れておきます。ただ単に、勇者カードが表示エラーを起こしているだけかもしれませんし」
「勇者カードがエラーを起こすのは考えにくいけど、否定できない以上そうかもしれないね」
「はい。なのでこの能力は当分放置しておきます。別に今すぐ必要な能力でもありませんからね。早く他の能力の詳細もハッキリさせておきたいですし」
「うん。そうだね。それじゃ次は何にしてみようか?」
やっぱりこれかな?
ロマン溢れるチート能力。
その名も、
「世界の理を知るものですね」
全魔法使用可能!
こんなにもすばらしい能力が他にあるだろうか!
いや、ない!
アニメや小説、漫画にはまった者なら誰しもが想像したことがあるだろう。
あぁ……もし今この場で魔法が使えたらいいのになと!
僕も常日頃からそう考えた。
勿論叶うことのない幻想だと知りつつも!
だが今はどうだ?
叶うことのない幻想?
ナニソレ?ボクシラナイヨ?
だって僕は魔法が使えるようになったのだから!
長年の夢が遂に叶ったのだ!
さぁさぁどんな魔法を使ってみせようか?
世界の理を知るものを使用したら目の前に魔法の一覧表が分類分けされて表示された。
・初級魔法
・攻撃魔法・火玉・冷風・電叩・etc……
・補助魔法・防御小強化・攻撃小強化・火体制・etc……
・治癒魔法・小治癒・状態異常回復小・etc……
・中級魔法
・攻撃魔法・炎球・冷斬・雷撃・etc……
・補助魔法・防御中強化・補助攻撃中強化・炎体制・etc……
・治癒魔法・中治癒・状態異常回復中・etc……
・上級魔法
・攻撃魔法・火炎弾・吹雪斬・雷激・etc……
・補助魔法・防御強強化・補助魔法強強化・火炎体制・etc……
・治癒魔法・強治癒・状態異常回復高・etc……
ざっとみただけでも100以上の魔法がある。
初級、中級、上級と階級が上がるにつれ、魔法の数が少なくなり、中級以降の魔法名に「中」がついているものは魔法の名前の前に「ラ・」がついて、上級以降では「ラ・」と名前の後ろにその魔法特有の呼び名がついている。
勿論例外もあるみたいだが覚えるのが大変そうだな。
魔法の使うにはその魔法の名前を唱えないといけない以上、魔法の名前を覚える必要がある。
まぁ僕は魔導士の能力のおかげで上級魔法までは詠唱を破棄できるからいいが、それ以上の
最上級魔法
古代魔法
禁断魔法
異世界魔法
は名前が長かったり読みにくかったりして発動させるのが困難過ぎる。
例に挙げるのも面倒くさいぐらいだ。
もっとも面倒なら使わなければいい話。
多分上級以降の魔法を使うことはまずないだろう。
とりあえず上級までの魔法がどんなものなのかを試してみよう。
さぁ、腕がなるぞ!
まずはこれからだ!




