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事態の収束

 ~現在~



「ティンセル!」


「何!?」


「あいつに弱点は無いのか!?」


「弱点はね、確か……キャア!!?」


「ティンセル!!!」




 僕とティンセルの間にEMG-003型の拳が叩きつけられる。

 その拳の余波で周囲の機材や天井が崩れ、落下してくる。

 面倒なことに落下してきた機材のせいでティンセルと分断されてしまう。




「無事か!ティンセル!」


『な、なんとか大丈夫ー!でも、キャア!?』



 状況はあまり芳しくないようだ。

 EMG-003型は幸いにもティンセルの方ではなく、僕の方にいる。

 しかし、未だに建物の崩壊は続いており、上から沢山の物が落下して来ている。

 ティンセル一人で大丈夫だろうか?



「一人で逃げられるか!?」


『なんとか、頑張ってみる!レイ君!アンシューツ博士かベックマン博士を探して!二人なら必ず何か有効な弱点を知っていると思うから!私が知っているのは、EMG-003型の装甲は一定威力の魔法を反射する特殊な鉱石で出来てるの!だから魔法を使うときは気を付けて!』


「あぁ!ありがとう!なんとか無事に逃げろ……くっ!」


『クリエーターハカイクリエーターハカイドコダドコダドコダ』



 EMG-003型の攻撃は至って単純そのものだ。

 威力と範囲が広いことを除けば、同じ単純な攻撃でも不規則かつ厄介だったリフレクティノイドよりは脅威ではない。



中速移動(ラ・クイックロード)!」



 むしろ脅威的なのは四方から飛んでくる破壊された機材や建物の一部だ。

 こればかりは事前に避けるということが出来ない以上、勘で避けるか直前に発見して瞬発的に避けるしかない。

 しかもこれに加えてEMG-003型の攻撃も加わってくる。

 ……面倒だ。

 本当に面倒だ。

 未知の侵略者を使えればどれだけ楽なことか。


 ティンセルはあるEMG-003型に使用されている装甲は一定威力の魔法を反射すると言っていたが、多分未知の侵略者は反射することは出来ないだろう。

 しかし、その代わりに本部の一部が……多分研究施設一帯は消滅してしまうだろう。

 それは流石にマズイ。

 異世界魔法も呪文を詠唱している暇がないから使えない。

 魔法は使えず、剣も無いから応戦出来ない。

 だから僕に出来ることと言えば…………



戦略的撤退(・・・・・)!」



 これだけだ!



『グォォォォォ!ハカイハカイハカイ!』



 とは言ってもただがむしゃらに逃げるわけではない。




「キャァァァ!?」


「く、あ、こっちだ!」


「室長ーーー!!!」



 先程から見ている限り、ここの研究員もただ開発をこなすだけの人員でないらしく、EMG-003型の攻撃や落下してくる物を危なっかしくも避けている。

 先程吹き飛ばされていた研究員達も僕の目の前で必死に逃げようとしている姿が確認出来る。

 恐らくまだ死者はおろか、負傷者でさえ出ていない筈だ。

 しかし、それも時間の問題だ。

 今は避けれているとは言え、いずれ体力は無くなり、少しずつ負傷者が出てくることだろう。

 それを回避させる為にも、



火球(ファイヤーボール)!」


『ハカイハカ……攻撃魔法が被弾したことを確認。ピー……下級魔法、火球(ファイヤーボール)、使用者……不明。ハカイ対象を変更。破壊対象、前方3Mに存在する人間。これより破壊を実行。ハカイハカイハカイハカイハカイ』




 僕が囮になり、なるべく研究員が居ない場所を目指して逃げる。

 僕が放った魔法はあの特殊な装甲に反射され、僕に跳ね返ってくる。

 が、魔法の速度そのものは遅いので避けるのは容易い。

 僕は立っていた場所から右へ移動すると、そのまま真っ直ぐ全力で走り始めた。



「対象、逃亡。追跡を開始」



 EMG-003型は僕の思惑通り、僕の後ろをついてきている。

 当然攻撃もしてくるのだが、攻撃をする際にギギギギギ、と駆動音がするのでそれが聞こえた瞬間一瞬だけ後ろを振り向き、攻撃を避けていた。



「これならまだリフレクティノイドの方が手強いな」



 くしくもあの馬鹿との戦闘が役に立っているみたいだ。

 このままなんとか逃げさせてもらおう。


 そう考えた瞬間、背後から何やら不吉な音声が聞こえてきた。




『クリエーター……ハカイ……対象、破壊できず。これより第2シーケンスに移行。物理攻撃より、魔導兵器、圧縮光魔法(レーザー)による攻撃を開始』




 EMG-003型の音声が途絶えると同時に僕の横にあった機材が一瞬のうちに融解する。

 ……レーザーが放たれたのだ。




「冗談じゃない!あんなのを喰らったらひとたまりもないぞ!?」


『ピー。発射。ピー。発射。ピー。発射』




 間抜けな音声と、発射される直前に鳴り響くキィィィィンという甲高い音と共に、凶悪なレーザーが僕に向けて放たれる。

 発射精度はそこまで良くないのか、ジグザグと走っているとあまり被弾しそうにはならない。

 ただ、それでもギリギリな状況には違いない。

 何か無いか……



「…………そうだ!」



 一か八かだが、試してみよう。

 僕は一度EMG-003型の死角になる場所へ逃げ込み、両手を地面につける。

 そして錬精を開始する。




「錬精!……よし。これで多分、観察眼(ハウンド)!」



 僕は僕が造りだした、宙に浮く巨大な金属の板を観察眼(ハウンド)で観察する。



『浮遊鉱石

 魔力を込めると一定時間浮遊する不思議な石。

 浮遊する高度と時間は込めた魔力に比例する。

 また、この石はありとあらゆる光源を吸収する特性を持つ。

 硬度はあまりなく、簡単に割れてしまう』



 よし。

 僕が望んだ通りの物が出来たようだ。



『ハカイハカイハカイハカイ!』




 造りだした石板はあっさりと破壊されてしまうが、大した問題ではない。

 あれは足止めではなく、レーザーを防ぐ為に造りだした物なのだから。

 僕は錬精を繰り返し、とにかく多くの浮遊鉱石を造りだし、魔力を込めて宙に浮かせてやる。

 EMG-003型はそんなこと構ったものかという感じで手当たり次第に浮遊鉱石を破壊しつつ、僕に向かって走ってくる。

 そして再びキィィィィンという音が鳴り響き、僕に真っ直ぐと向かってレーザーが放たれる。

 今度は間違いなく直撃だろう。

 ……浮遊鉱石が無ければ。



「錬精!」



 近くにあった適当な瓦礫を手に取り、それを錬精して浮遊鉱石を精製する。

 そしてそれをレーザーの真正面に浮かせてやる。

 すると、



 ――――――――………………。



 レーザーは音もなく消滅した。

 否、浮遊鉱石に吸収されたのだ。

 僕が手当たり次第に浮遊鉱石を精製したのは、どれくらいの大きさの浮遊鉱石が、どれだけ魔力を込めればどれだけの高さで浮くのかを調べる為だ。

 とりあえず浮遊時間は今は関係なかったので、ある程度試してやれば大体の見当をつけることができた。

 そのおかげで上手いこと防げたし。

 これであのレーザーの対策は問題無いだろう。

 後は……



『グォォォォォ!!!』



 こいつの突進を避けつつ安全な場所へ逃げるだけか。

 まだ避難しきれていない研究員も居るが、先程に比べるとかなり数は減っているように見える。

 順調に避難が完了している証拠だろう。

 どこかこいつが浸入出来ない隙間でもあればいいのだが……

 僕が適当な逃げ場を探しながら走っていると、不意に僕の名前を呼ぶ声が聞こえる。



「レイ君!そこを左だ!」



 どこから声がしている?

 周囲を見渡すが人影はない。

 だとすると……上か。

 上を見てみると、初めにここに来るときに見かけた人が乗って動く円盤にスペリーさんが乗っていた。




「そこを左に曲がって真っ直ぐ行くと瓦礫に塞がれた通路がある!そこならそれも通ることは出来ない!人が通れるだけの隙間も確認したから何も考えずにそのまま走ってくれ!」


「了解です!」



 スペリー博士の指示に従い走った。

 すると確かに通路が瓦礫に塞がれているのが確認できる。

 とにかく急ごう。

 たまにEMG-003型がレーザーを放ってくるが、背中に浮遊鉱石を背負っているので僕に直接ダメージを与えることは出来ない。

 見た目に反して重さがあまりないことに助けられた。

 僕は通路にある瓦礫に到着すると、背負っていた浮遊鉱石を捨てて、瓦礫の隙間をくぐり抜け、向こう側へと移動する。

 そしてそこにはスペリーさんが立っていた。



「うちの者が迷惑をかけたようだね。レイ君のお陰で皆無事に避難することができ…………っと!?」


『グォォォォォ!!!第2シーケンスより第1シーケンスに移行。進路を阻む障害物を破壊。ハカイハカイハカイ!』



 どうやらEG-01型が瓦礫の撤去を始めたようだ。

 凄い勢いで瓦礫が無くなっていくのが分かる。

 このペースだとすぐにまた僕らの目の前に姿を現すだろう。




「今はお礼を言っている暇はないみたいだね。……でも大丈夫。後は私に任せてくれればいいよ」


「いや、でも!」


「大丈夫大丈夫。まぁ見てなって」




 EMG-003型はほんの少し僕がスペリー博士と言葉を交わしている間に、自身が通れるだけの通路を作り上げてしまった。

 この機動力は本当に頼りになるものだと思う。

 暴走さえしなければ。




『ピーーーー。対象を確認。第1シーケンスより第2シーケンスに移行。対象を破壊を続行』


「うん。本当によく出来ているね。よくここまで高性能なものを完成させたものだよ。でも、ちょっと作りが甘いかな。後でお説教だ」


「スペリーさん!?」



 スペリーさんは目の前から突進してくるEMG-003型をまるで意に止めず、避けるわけでも、攻撃するわけでもなく、ただその場に立っていた。

 勿論そんなことはお構い無しにEMG-003型はそのままスペリーさんに突進していく。



「危ない!!!」



 僕がそう叫んだのと同時に、EMG-003型が姿を消した。

 否。

 姿を消したのではない。

 分解されたのだ。

 ほんの数秒前までEMG-003型が居た場所には規則的に装甲や配線が並べられていた。




「……ふぅ。固有能力(ユニークスキル)完全分解(オーバーホール)発動っと」


「……あの、もしかしなくてもですけど、これはスペリーさんが?」


「そうだよ。私の固有能力(ユニークスキル)完全分解(オーバーホール)。この能力(スキル)は機械的に結合された物ならなんでも一瞬にして分解することが出来るんだ。戦闘向きの能力(スキル)ではないけど、中々に役に立つだろう?怪我はないかな?」


「あ、はい。大丈夫です」


「うん。それは良かった。全く……人様に迷惑をかけるどころかまた建物を壊して……。しっかりお灸を据えてやらないと駄目みたいだな。とりあえずレイ君、出口まで案内するから私に付いてきてくれ」


「は、はい!」




 EG-01型が分解され建物を破壊をする物が無くなった為に建物の崩壊はようやく収まり、後には避難した研究員達の喧騒が遠くで聞こえるだけだった。

 僕はスペリーさんに案内され、研究所の外に出た。

 外に出ると被害を被った研究員がぞろぞろと僕達を出迎え、何故かティンセルとエミリアさんが縄で縛られその場に正座していた。


 か


「…………アンシューツ?」


「はい…………」


「…………ティンセル?」


「あの、ね?ベックマン博士?え、と、その……」


「問答無用。皆。二人を私の部屋に連れて来てくれ」


「「「「「了解です!ベックマン博士!!!」」」」」




 そしてスペリーさんの指示により、ティンセルとエミリアさんが他の研究員によって運ばれていく。



「もう……どうしてこうなるのよ…………」


「ベックマン博士ーー!部屋に行くのはイヤーー!皆も真顔で運んでないで助けてよーー!」


「「「「「それは無理ですティンセル博士」」」」」


「薄情者ーーー!!!」



 な、何なんだ一体?

 僕は近くに居た研究員に事情を聞いてみる。



「あの、あれは一体?」


「あ。あなたがキリサトさんね。今回は助かったわ。ありがとう」


「いえ。僕に出来ることをしただけですので」

「謙虚な良い男。……ごほん。それであなたの質問だけど、今回あの兵器を動かすのは本当はもっと随分先の予定だったの。色々調整は残ってたし、何より魔素に汚染されてない金もなかったから。でも、あなたのお陰で必要な金が手に入って浮かれちゃったのでしょうね。ここで行われる全ての研究の陣頭指揮を取るベックマン博士に何の許可もなくあれを動かしちゃったんですもの。それだけなら良かったけど、ここまで被害を出しちゃったらそりゃベックマン博士もお怒りになるわ」


「二人が連れて行かれたことに何か意味は?」


「まぁ単純にお仕置きね。とは言っても何をされるのかはお仕置きをされた本人しか知らないのだけど。皆頑なに口を開かないのよ。よっぽど酷いお仕置きをされたのかもしくは……よっぽど恥ずかしいことをされたのか?どちらにしても私には関係ないことね。ティンセル博士やアンシューツ博士みたいに馬鹿はしないもの。」



『おーいフルアー!片付けを手伝ってくれー!』



「あ、と、ごめんなさい。片付けに行かなくちゃ。機会があればまた来てね。今日はありがとう。それじゃ」



 フルアと呼ばれた女性研究員は瓦礫の山と化した研究室へと入っていった。



「……帰るか」



 ティンセルとエミリアさんのその後が気になる所ではあるが、ここに居ても時間な無駄な気がするので僕はフェルグランさんの部屋へと帰ることにした。

 その途中で聞き覚えのある声の悲鳴が二人分聞こえたのはきっと気のせいだろう。

未だに主人公が主人公っぽい強さを見せつけてくれません。

なるべく早くには圧倒的強さを身に付けさせてあげたいのですが中々どうして上手くいかないものです……



感想・評価・評価等ありましたなんでも受け付けておりますのでよろしくお願いします!

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