2つ目の能力珠
「ん……!」
解放と唱えるとさっきと同じように珠と同じ色の眩い閃光が一瞬放たれる。
しかし茶色の閃光か……
地球にいた頃は茶色が光として使われることはあまり無かったからなんか変な感じだな。
でもこれで能力を獲得できたはずだ。
確認してみよう。
職業能力
勇者(王族から無条件の援助)
剣聖(剣と判断される武器の重さを装備時のみ無効)
称号能力
錬精術士(錬金術の成功確率100%)
魔導師(上級魔法までの呪文詠唱破棄)
駆け出し勇者(ダメージが魔族に対してのみ2倍)
創造者(世界の理に反する物質を精製可能)
世界の理を知る者(全魔法使用可能)
剣聖(装備した剣が不壊になる)
固有能力
神の寵愛(毎分自身の魔力の4分の1を回復)
精霊皇の加護(全属性耐性付与)
未知の侵略者(全魔力消費でブラックホール出現)
VS魔族(魔族に対してダメージ2倍)
母親の知恵(家事・料理全般Sランク)
乱獲者(倒した魔物から得る素材2倍)
大切断(一定確率で対象となる物質を無条件に切断)
修得能力
反射壁・型式魔法(魔法を反射する壁が出現)
反射壁・型式能力(能力を反射する壁が出現)
観察眼(対象とするものの詳細を知ることができる)
声明(自身の変化の声を聴くことができる)
未覚醒能力1
未覚醒能力2
修得能力に声明という能力が追加されていた。
効果は自身の変化の声を聴くことができるものらしい。
自身の変化の声を聴くことができる?
どういうことだろうか?
僕が考えていると、ふと誰かが耳元で語りかけてきた。
『職業能力、勇者が解放されました』
「ん?今の、フェルグランさんですか?」
「何がだ?」
「いや、今僕の耳元で喋りましたよね?」
「喋ってないぞ?というよりも私がここにいる以上レイの耳元で喋れるわけないだろう?」
「そう、ですよね……?あれ?」
フェルグランさんは僕の正面から5~6歩離れた所に立っている。
耳元で話せるわけがない。
となるとさっきの声はやっぱり……
『職業能力・剣聖が解放されました』
『職業能力・勇者が解放されました』
『称号能力・錬精術士が解放されました』
『称号能力・魔導士が解放されました』
『称号能力・駆け出し勇者が解放されました。この能力はまだ進化の可能性を秘めています』
『称号能力・創造者が解放されました』
『称号能力・世界の理を知る者が解放されました』
『称号能力・剣聖が解放されました』
『固有能力・神の寵愛が解放されました。この能力はまだ進化の可能性を秘めています』
『固有能力・精霊皇の加護が解放されました。この能力はまだ進化の可能性を秘めています』
『固有能力・未知の侵略者が解放されました。この能力はまだ進化の可能性を秘めています』
『固有能力・VS魔族が解放されました。この能力はまだ進化の可能性を秘めています』
『固有能力・母親の知恵が解放されました』
『固有能力・乱獲者が解放されました。この能力はまだ進化の可能性を秘めています』
『固有能力・大切断が解放されました』
『修得能力・反射壁(リフレクトウォール・型式魔法が解放されました。この能力はまだ進化の可能性を秘めています』
『修得能力・反射壁・型式能力が解放されました。この能力はまだ進化の可能性を秘めています』
『修得能力・声明が解放されました。』
『未覚醒の能力があります。現在のステータスでは解放できません』
『未覚醒の能力があります。現在のステータスでは解放できません』
『―――解析不能の能力があります。解放はされていますが、現在使用することができません』
うん。
この怒涛のように流れてきた能力名のおかげで確信できた。
これが声明か。
ステータス画面を開かないと能力を獲得したのかどうか分からなかったからこれも中々に便利な能力だな。
でも、この声が耳元で聞こえるのはなんとかならないのかな?
声自体が僕的にはかなり美声で女の人のような感じだから少しくすぐったい。
なんというか、耳元で囁かれているような…………
『成長通知を『囁き』から『脳内』へと変更しました』
…………そんな機能がちゃんと備わっているんだ。
今度の声は耳元でなく、脳に響き渡るような感じで聞こえてきた。
便利だ。
「どうだ?声明の使い心地は?私もその能力を持っていてな。今でも重宝しているよ。自分でも気づいていなかった体の変化を教えてくれるからな」
「確かにこれは便利ですね。……あ!でもフェルグランさんもこの能力を持っているのなら、ちょっと聞きたいことがあるんですけど」
「なんだ?」
「今僕が声明を会得してから僕が所持している能力が順番に何々の能力が解放されました、って言われたんですけど、その時に何個かの能力が進化の可能性を秘めていますって言われたんです。これってどういうことなんでしょうか?」
「あぁ、それはそのままの意味さ。まだその能力が真の効果を発揮していないだけさ。能力は自身の成長と共に自然に進化する。何度もその能力を使用したり、戦闘を繰り返したり、技術を磨いたり、進化の方法は様々だが、レイが強くなろうとする過程で必ず能力は進化していくからあまり深く考える必要はないぞ」
「分かりました」
能力が進化、か。
そんなことがあるとは思いもしなかったな。
でも、あの忌々しい受付嬢もあなたのは他のどの勇者が持っている能力の上位互換です!
みたいな感じのことは言っていたような気がするし、この世界ではわりと当たり前のことなのかもしれない。
まぁそれなら進化についてはもういいだろう。
もう1つフェルグランさんに聞いておかなければいけないことがある。
「もう1ついいですか?」
「勿論」
「その能力が解放されましたって言っていた最後に解析不能の能力があるって言われたんです。これはどういうことなんでしょうか?」
「解析不能の能力?未覚醒の能力じゃなくてか?」
「はい。未覚醒の能力はそれとは別に言われました。しかもその解析不能の能力は既に解放されていて、現状では使えないらしいのです」
「それは妙だな。能力が解放されている以上、使えないなんてことはないはずなのだが。……何か心当たりはないのか?」
無いわけではない。
恐らく真能力・超新星爆発のことなのだろう。
……でもこの能力のことを話してもいいのだろうか?
こうやって能力として認識され、解放されているのだとしたらこれは間違いなく新しい新種の能力だと言うことになる。
別に僕はこの能力のことを隠したいわけではない。
ただ、使えもしない能力を所持していると言って何を言っているだこいつ?
と、思われたくないのだ。
…………フェルグランさんには悪いけど、今はまだ、黙っておこう。
僕がこの能力を使えるようになったらまた話そう。
「あ!ごめんなさい!なんか今、声明から追加の通知が来ました。解析不能の能力は修得能力・ハッキングというものだったみたいです」
「ハッキング?それはどんな能力なんだ?」
「コンピュータを強制的に外部から乗っ取る能力みたいです。でも、この世界にコンピュータなんてありませんよね?」
「む……そうだな。少なくとも私は聞いたことがない」
「ですよね。このコンピュータというのは地球で当たり前のように使われていた電子機器で、このコンピュータはそれぞれ独自のセキュリティを使用して本体を防御して――――」
「あー、レイ?悪いが私には何一つとして理解できない。つまりどういうことなんだ?」
「まぁ、簡単言えばこの世界では使うことのできない能力ということです。対象となるコンピュータがありませんから」
「……なるほどな。その能力はレイのいた世界、地球でこそ使える能力なんだな?」
「そうです。多分だから解析できなかったのだと思います。この世界にはない概念ですから」
「そうか。まぁ何にせよ、疑問が晴れて良かった」
「はい。ありがとうございます」
勿論こんなのは嘘っぱちだ。
でも、なんとか辻褄を合わせられたようで良かった。
ここの部屋に来るまでに電子機器らしき物はあったから、コンピュータの存在を知っている言われたらどうしようもなかったな。
「他には何かあるか?」
「いえ。他には何もありません」
「よし!なら、長らく留まらせて悪かったな。これで私の方からは以上だ。後は……ローグが目を覚ますまで好きにしているといい」
そう言えば未だにローグさんが出てこないな。
「ローグさん、何かあったんですか?」
「いやなに、ただの過労さ。あれでもギルドマスターなんだ。他の人よりもやるべき仕事が沢山ある。多分あいつのことだから殆ど休んでいないのだと思う。だから別室で休ませたんだ。案の定起きてこないところをみるとそれなりに無理をしていたのだろう」
「確かに……その片鱗は僕も見ている気がします」
僕が初めて未知の侵略者を使った時の市民の反応は凄かった。
とにかく原因の究明を求める為にギルドヘ大勢の人が集まっていた。
そしてその原因が分からないローグさんを責める声も。
流石にあんなのが毎日のように多発しているわけではないと思うけど、それでも後処理とかもしてくれたと言っていたし、僕のあの一件だけでもかなりローグさんに負担をかけてしまっているのかもしれない。
今回だってここに連れてきてくれたのはローグさんだし。
……ローグさんにはゆっくり休んでもらおう。
「分かりました。それなら他の人の迷惑にならないよう、この本部の中を見学させてもらいます。どこか立入禁止の場所はあるのでしょうか?」
「あるにはあるが、そういう場所は魔法で封印が施されて入れないか、この部屋の前にいるような警備兵が立っているから入ることはできない。それ以外の場所なら好きに見学してくれていいぞ」
「分かりました。なるべく時間をかけて見学するつもりなので、途中でローグさんが起きても休んでくれていいと言っておいて下さい」
「あぁ分かった。なら……ほら。これを持っていけ」
「おっ、とっと!っと!なんですかこれは?」
フェルグランさんが僕に投げて渡してきたのは銀色のカードのようなものだ。
大きさはトランプくらい。
厚さと重さはトランプを10枚分重ねた感じだ。
「見学許可証みたいなものだ。どこかの部署を見学したければその部署にいる誰かにそれを見せればいい。それを持っていれば、私から連絡をすることもできるから、レイが帰りたくなればそれを使って連絡してくれ。使い方はそれに向かって話してくれれば私の方に声が届くから。多分その時にはローグも起きているだろう」
この世界版のトランシーバーのような物なのかな?
まぁ、なんとかなるだろ。
最悪ここまでまた帰ってくればいいし。
「ありがとうございます。それじゃ、少し見学をさせてもらいますね」
「あぁ!存分に見てみてくれ。勇者をサポートする者達がどのうような仕事をしているのか、是非ともその目で見てみてくれ。あいつらはあいつらで、苦労しているのも確かだからな」
「分かりました。……それでは」
期待と好奇心を胸に僕はフェルグランさんの部屋を後にした。
最初に行くとしたらやっぱりあそこかな?