てか、交通手段はどうする?
俺達は路地裏へと連れ込まれた。俺は内心ビクビクだがアリスは違う。あの強気な態度を崩さない。
「――――うっ!」
賊の一人が俺を拘束する。舞台は整い、賊のリーダーはアリスに提案も持ちかけた。リーダーはツルッパゲの頭に奪った物を身に付けていた。体格は普通の男並みだし、なんでリーダーになれたのだろうか?世の中。不思議なものだ。
「フッ、フッ、フッ。 さぁ、これはある提案だ。お前が身に付けてる物と金を渡せ。大人しく渡せば後ろの弟は助けてやらなくもないぞ」
……弟だと!こいつ、俺のどこがアリスの弟に見える!?言ってみやがれっ
アリス、早く倒しちまえ
「………分かった。渡せば蒼熾には手を出さないのだな」
「…えっ?」
アリスはあろうことか、身に付けていた装飾品や金を奴に渡してしまった。
なんでだアリス!お前ならこいつらなんてボコボコだろうが。
「ほぉ~! お前、高そうな装飾品持ってやがるな。でも俺様は全部と言った筈だぞ?腰に差してる剣も渡せ」
「……これは無理だ」
相手の要求に嫌だと答えるアリス。返ってきた返答に賊のリーダーは固まっていたが何かを思い出すと部下に目配せした。そして俺の喉元に短剣が突き付けられる。
「おい、見えるだろ? 弟が目の前で殺されたくなければ早くその剣を渡せっ!」
何だか大変な事になってしまった。アリスの事だ、俺を見捨てるだろう。肝心な事はその後だ。こいつらから逃げれる自信がない。
「……出来れば穏便に済ませて起きたかったが、仕方あるまい」
今までの雰囲気と違う、いや! 雰囲気が変わったんだ。これは王族としてのオーラ?
アリスは左手でフードを取った。見えたのは金髪にエメラルドの瞳。そう、ディアモール王国第一皇女。
「き、金髪に碧目! アリス皇女殿下!!」
賊達は驚いていた。腰を抜かす奴もいた。だけど逃げようとする奴は一人も居なかった。それはたぶん、アリスの放つオーラに本能が危険だと告げたから?ま、大げさすぎるかな。
「堅苦しいのは苦手だ。 それにしても、貴様らのせいで私の計画が台無しだ………どう責任を取るつもりだ?」
怖い!怖いよ、アリスさんっ!あまりにも可哀想だったので助ける事にした。
「…やめなって、アリス。 なぁ、オッサンはリーダーだろ? 俺達を運べるような……例えば、馬車とか無いか?」
アリスは今にも殺すオーラが出ていたから俺が変わりに聞いた。ハゲのオッサンは何故か脂汗を流して何度も頷いていた。あぁ、俺にも分かるさ。物凄い殺気が後ろから感じるのを。
場所は変わって城下町の少し外れ。俺達と賊がいた。ハゲのオッサンは馬車を取りに行くと言ってどこかに行ってしまったが逃げはしないだろう。
「……そ、それにしてもよく考えついたな。賊に馬車を用意させるなど」
アリスは顔を赤くさせてそっぽを向いていた。言葉使いも優しい気がする。
「賊って事は馬車ぐらい持ってるんだろうな、って思ったから言ってみただけだよ。でも身分を証して大丈夫なのか?」
「問題ない。黙らせればいいだけだ」
……うわっ。やっぱり怖いよこの人! 敵じゃなくて良かったと思うよ改めて。 ん?どうやら馬車が到着したみたいだ。茶色い馬に雑に造られた、もはや小屋。二人は乗れるだろうが心配だ。
「おぅ、待たせたな! 悪いが馬車ってもボロいのしか無いんだが。これで許して下さい!」
すぐさま土下座で謝るハゲのオッサン。俺は我慢出来るが問題はアリスだ。俺はアリスを見る。馬車を見て動かない。
「…おーい……アリスさーん」
「…ハッ! 私とした事が。それで、どこに馬車があると言うのだ?」
「い、いや。皇女殿下……これしか無いのですが………………いや、こう見えても丈夫なんですよ!…乗ってみます?」
「…………」
ヤバイ!アリスのご機嫌が瞬く間に損なわれてるぞ。このままじゃハゲのオッサンを殺し兼ねない。
「…お、俺は良いと思うけどな」
本当は良くないがアリスの機嫌を直す為にそう言った。でも俺が言った所で直るとは限らないが。
「……仕方あるまい、我慢しよう」
よしっ! 機嫌は戻ったか
「で、では俺達はここで―――――」
「「…………待て」」
アリスと初めて息が合った。せっかく手に入った交通手段だが俺が動かすのは無理だ。そうなれば必然的に決まっている。