王様、登場!
俺の前に現れた子。正直に言うと有栖川に似ていた。似ていたというより激似だ。髪型や瞳の色は違う、でも雰囲気が似てると思った。シェリルと同じ金髪にエメラルド色の瞳。兄弟か。
「え、あ、すいません!」
一応、謝って様子を伺ってみる。すると表情を崩さずただ目の前に人が居るというような目で見てくる。
「……いや。名乗り遅れたな 私はディアモール王国第一皇女アリス・ヴィヴィアン・ディアモールだ……以後、お見知り置きを」
やっぱりだ。こいつがこの国の皇女……凛々しい声に、どんとした態度。もうまさに皇女様じゃないか!金髪にエメラルドの瞳、はさっき言ったが。髪型はポニーテールだが問題は服装だ。シェリルみたいに綺麗なドレスじゃなく、こいつの場合は兵士が着る甲冑を着けていた。皇女様なのに騎士みたいだ。
「あぁ、俺は甲斐 蒼熾。よろしく」
「蒼熾だな。では改めて蒼熾 お前にこの国の事、そして魔王の事を話さなければいけない。着いてこい」
そう言うとアリスは一方的に歩き始めた。ここは広い城の中、迷ったら大変だ。俺は黙ってアリスに着いて行く。広い廊下をただ真っ直ぐ歩くだけ。金持ちの定番、赤いカーペットが敷いてある。歩き続ける事、たぶん十五分。
「これから父上に会って貰う。だがこれは一つ、忠告だ……父上はハッキリ言って馬鹿でアホで不潔だ。だが幻滅しないで欲しい。あれでも私達の父なのだ」
「…………」
えぇーっと、どんな父親だよ!?ってかどんだけ娘に嫌われてるんだこの人!娘にああも馬鹿とかアホとか不潔って呼ばれるなんて…同情する。まだ心の準備が出来ないまま王の間という大きい扉に到着した。
「……では、入るぞ」
ギィィィ
そんな音を立てて扉は簡単に開いた。中は広く、俺が寝てた部屋より二回り以上は大きい。真ん中には王様が座るような玉座があってそこにいた。俺達は少し進む。王様の顔が確認出来るぐらいの距離まで来た時。
「あ、あ、あ アリスちゃーーーーん!!」
そんな気持ち悪い声を挙げて王様らしき人がアリス目掛けて抱き付こうとしてきた。ってか、この人が王様!?大丈夫なのかよこの国!
「…来るなっ! この変態!!」
やって来た父親に見事な足技でKOする。同情するが俺が想像してたのより酷い。王様はアリスの足技でぶっ飛び壁に食い込んでいる。そんな王様を助け出してまずは自己紹介。
「いやぁ、見苦しい所をお見せしたね。 君が勇者の……初めまして、私はこのディアモール王国の王でこの子達の父。エヴァン・ヴィヴィアン・ディアモールだ」
何だかんだ言ってこの人、王の素質があるって言うかアリス達とオーラが違う。この人……強い!!
「初めまして、甲斐 蒼熾です」
「ソウシだな。ふむ……それで君が今居る国の事から話そう。この国は知っての通りディアモール王国と言い、我々が守っている。昔の話になるが、ずーっと昔。我々、人間と魔国との戦争により世界は五つに分かれてしまった」
……何だか歴史の授業みたいだ。だけど勉強が苦手な俺でもまだ分かるぞ!
「それが我々、ディアモール王国・バルム王国・ディーゼル王国・リュードミラ王国。そして魔国だ。我々は古くからある書物に書いてある「勇者 転生」に書いてある通りにしてのだ。そこにはこう書いてあった……各国に勇者が集まりし時、邪悪な力 滅びらん」
なるほどな。四の国の勇者が力を合わせれば魔王を倒せるのか!………四の国?じゃあ俺は他の勇者と協力して戦わないといけないのかよー!
「…貴様はこれから私と共に各国に赴き、勇者を探すのだ」
「え? 何だよそれ」
アリスと行動すんのかよ!怖い、凄い怖い。命が幾つあっても足んないよ。ってか何故にアリス?皇子は居ないのかぁー!
「これは決定事項だ。部屋に戻ったら着替えが用意してある、着替えたら再び王の間へ来い」
……これは……拒否権がないようだ。