目覚めた蒼熾、再び異世界へ
「……うっ」
長い夢を見てた気がする。死ぬ間際のあれ、有栖川の顔を思い出すだけで寒気がする。
頭がボーッとしているが上半身だけ起こして周りを見る。フカフカなベッドに豪華そうなカーペットに花瓶や家具。そんな部屋の中で俺は寝ていた。いつの間にここへ運ばれて来たのだろうか?
ガチャッ
突然、ドアが開いて俺は自然に顔をドアに向ける。入って来たのは少女だった。少女と言っても綺麗なドレスを着て、金髪の髪にエメラルド色の瞳が似合う女の子。気が付いたら話し掛けていた。
「あ、君が助けてくれたの?」
「えっ………きゃっ!」
俺を見た一瞬、固まり次にはドアの後ろに隠れてしまった。でもそんな姿も儚げな少女にはもう似合ってて心臓がバクバク言ってた。というかこの状況、他の人が見たら危ない人だと思われるぞ。
「………えっと、ビックリさせてゴメン。えぇーっと、俺は甲斐 蒼熾って言うんだけど 良かったら君の名前も教えてくれるかな?」
あまり刺激しないように、まるで幼稚園児を相手にするように優しく言うと少女はドアの後ろから出て来てくれた。
「さ、先程はすみませんでした。 私はディアモール王国 第三皇女。シェリル・ヴィヴィアン・ディアモールと申します」
……ディアモール王国の皇女!?こんな小さい子が王国の皇女様なのか……それにしても第三皇女って事は皇女はあと二人居るのか。でもしっかりとした子だな、礼儀作法も余裕でクリアだな。
「えっと…シェリル皇女だっけ? 今、ディアモール王国って言ったけど。異世界であってるよな」
「シェリルで平気です、勇者様。王国について、はお姉様から説明があると思いますので少しお待ち頂いてよろしいですか?」
勇者…か。いい響きだ!シェリルのお姉様だからな、きっと凄く美人なんだろうな。早く会ってみたいぜそのお姉様に。
「…そうだ! 一つ、お願いがあるんだけど」
「お願い…ですか?」
「やっぱり城の中は広いなー! な、シェリル。お前も楽しめよな」
「はい。でも勇者様! 勝手に探索というのは気が引けます……せめてお姉様に許可を」
今、俺達は城の中を探索している。だってこんな所に来たら探索したくなるだろ?しかし、さっきから出てくるお姉様の名前って何だろうか。
「………なぁ。お前のお姉様って名前は?」
「…? 名前は、“アリス・ヴィヴィアン・ディアモール”ですけど」
アリスだって!!?有栖川の事じゃないよな?別人だよな? だってあいつがこんな所に居るわけないし。別人だ。
ーーーーーーーーーベツジンッテ、ホントウニ ソウオモッテルノ?
くそ、またあの声か。ムカつくぜ!
「……勇者様?」
「………何でもない。さぁ、誰かに見つかる前に早く探索済ませちまおうぜ シェリーーーーー」
「おい、貴様! そこで何をしているっ」
初めて聞いた勇ましい声に凛々しい態度。忘れる訳がない、これから先俺はもっと関わっていく事になるのだから。