昔の話しをしようか 後編
銃口を向けられた俺は固まっていた。冷たい鉄の感触が額に当たる。怖い…今すぐにでも言うことを聞いた方がいい事は分かる。
「や、止めて下さい!」
隣で有栖川の悲痛な声が聞こえる。見ると強盗Bに腕を掴まれていた。元々気持ち悪い目付きだが有栖川を見る目はより一層気持ち悪い。すぐ止めさせようと動くが強盗Aの銃口が深く当てられて動けない。
「止めろ! 有栖川から離れろっ」
口だけ動かすが当然、聞き入れてはくれない。それどころか強盗Bはベタベタと有栖川の体を触り始める。ここまでされて俺も黙ってられない。突き付けられた拳銃を握り反対側に押しやり有栖川の元に走る。強盗Bを体全体で離そうとするがデブで突き飛ばすのがやっとだった。
「そ、蒼熾 ありがとう」
涙を浮かべて何度も言う有栖川。だが事態はより深刻になった。強盗Aは有栖川に銃口を向け、強盗Bは今にも俺に襲い掛かりそうだった。
「テメェ こっちは一人ぐらい人質減っても平気なんだよ! お望み通り 死ね!!」
銃口は有栖川に向けられてる。有栖川が撃たれると思うと体が勝手に動いた。銃口と有栖川の間に割り込んだ。そんな事したら死ねって分かるのに不思議だよな。
バンッ
そう耳鳴りがするような音と共に銃弾が体を貫く。衝撃で床に倒れる。傷口から流れる鮮血で体が冷たくなっていく。隣の有栖川は泣きわめいていた。有栖川がこんなに泣くの、初めて見た。次第に眠気が俺を襲い今までの人生が走馬灯のように見えた。
ってこれ、俺死んじゃうみたいな流れだけど本当に死ぬのか?
いやだああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
そう心で叫びながら俺は簡単に死んだ。