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鍛冶屋《ブラック・スミス》


中は本気に営業してるのか分からない程に荒れていた。この宿を見たらアリスは倒れてしまうだろう。仕方ない、違う宿を探すか。


「あ、あの」


「あんたは見た感じ、旅人じゃなさそうだねぇ。もしかして勇者かい?」


宿屋の女将は驚きもせず、普通に言う。言っても良いのか悩んだが言う事にした。

これまでの事情を話すと不思議と気分が楽になった気がする。


「なるほど。隣の国に用があるのかぃ」


「はい……それにしても今日は混んでますね。何か祭でもやってるんですか?」


「祭? 祭と言ったらそうだが、いつもって訳じゃないよ。今日は特別なのさ!」


特別な祭か。せっかくだからこの世界の祭を見てみたい!宿を見付けるってい内容う任務も果たしたし、後は自由行動って事で良いよな。


「楽しそうだな! あ、この宿に泊まりたいんですが、さっき話した皇女様とバレットって人間も入れて三人」


「はいはい、三人ね。予約は完了したよ! 夜のご飯時には戻ってくるんだよ?」


夜には必ず戻ると約束をして俺は宿を飛び出した。お金は途中、馬車の中で分けてもらったのである。こっちの世界でお金の事を1Φ《いちペッド》と言うらしい。意味深だ。


「さぁさぁ、ビィーヴ特産の炙りキャンディはいかがかね? 今なら一袋、100Φだよ!」


炙りキャンディか。キャンディはそのままで食いたいが、何故炙ったのかは疑問だが食べてみよう。100Φって事は100円か。


「すいません、一袋下さい」


「おぉ? 少年はなかなか魅力があるねぇ!はい、100Φね」


俺は屋台のオッサンが持つ小袋と銀色の裏、表Φのマークが付いてるお金を渡して店を後にする。

さて、いよいよ初めてこの世界の物を食べる。茶色の小袋から一個のキャンディを取り出す。全体的に赤茶色の色だ。たぶん、元の色が赤で炙って焦げたから茶色なんだろう。意を決してキャンディを口へ運ぶ。味は………うん、不味い。本来の味である苺が焦げた部分と合わさって気持ち悪い。

本気にこんなのが名物なのだろうか?疑問に思いながらも小袋をポケットの中に入れて再び歩き始める。


少し歩くと剣の形をした看板の店を見付けた。あれは剣が置いてあるんだな。足は自然と店へ向かっていた。中は客が一人も居ない。だが様々な形をした剣が飾られている。

中へ入るとレジで新聞を読んでいた店の主が俺をジーっと見つめていた。耐えきれず声を掛ける。


「あ、あの。実は俺、勇者なんですが剣が欲しくてですね……お金はあるんで貰えますかね?」


「…勇者……だと?」


店の主はブルブルと震えている。怒らせてしまったんじゃないかと思って謝ろうとした時、主は突然俺の両手を掴んで激しく上下に振り回した。


「あ、あの」


「先祖様が言った通りだ! 本気に勇者が俺の店に来たんだ!!」


喜ぶ店の主に俺は訳も分からず立ち尽くしていた。


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