昔の話しをしようか 前編
よし、少しだけ昔の話しをしよう。と言ってもそんなに昔じゃないがな。あの日、俺が死んだ日はよく晴れた夏だった。俺と幼馴染みの有栖川 優希は一緒に夏休みの宿題を図書館でやっていた。
「ふぅ 今日の分は終わったわ……蒼熾はどう?」
蒼熾とは俺の事。甲斐 蒼熾は宿題で弱りきっていたが最後の力を振り絞って首を縦に振った。分かってると思うが俺は勉強が苦手だ。夏休みなんかに宿題を出す先生は非情だと思う。どうせ先生は夏休みの間、宿題で頭を悩ませてる生徒達を尻目に遊んでるんだぁぁぁ!!
「どうかした? 蒼熾」
頭を抱えた俺を心配してくれる有栖川だが、有栖川は頭が良い。それも常に成績が上位なぐらいに頭が良い。だから俺が宿題で頭を悩ませていてもスラスラと解いてしまう。だから終わるのはいつも有栖川が先。美人で頭脳明晰、成績優秀、容姿端麗でおまけに家がお金持ちで羨ましい。
「…いいや。 終わった事だし、コンビニ寄ろうぜ!冷たいアイスが食べたい」
「そうね」
こうして俺達は近くのコンビニへ行く事になる。だがこれが後の不幸に繋がる事を俺はまだ知らない。こうなるならコンビニなんかに寄らず家に帰ってゲームをしたかった。そうこうしてる内にコンビニへ到着。やっぱり中は冷たくて気持ち良い。
「俺はやっぱりカリカリ君だな。 有栖川はやっぱりチョコアイスか?」
俺の予想通り、有栖川の手にはチョコアイス。何が恥ずかしかったのか分からないが有栖川は顔を赤らめていた。ブツブツ何か言ってるが気にしない。早速レジに行こうとすると、突然異変が起こった。
黒いマスクで顔を覆った男達が三人入ってきたのだ。三人とも手には包丁が握られている。コンビニ内では客や店員がパニックを起こしていた。そんな中、強盗は懐から拳銃を取りだし天井に向かって一発撃った。客や店員は脅え、これ以上騒がなくなった。
「あ……あ…あ」
有栖川は俺の腕にしがみついている。顔は青ざめ、生気が無い。怖いんだろう。俺だって怖いさ。でも言うことを聞いとかないと殺されるだろう。そんなのは御免だからな。拳銃を持ってる奴を強盗Aとしよう、強盗Aは拳銃を見せながら客と店員を一ヶ所にまとめ始めた。その間、太ってる強盗Bは嫌らしい目で女を舐め回すように見ている。キモくて吐きそうになったが我慢した。そして見るからに普通な強盗CはAの手伝いをしている。
「んじゃ、まずは店員……立て」
強盗Aは店員を立たせ頭に銃口を押し付ける。あまりの恐怖に店員は泣いている。周りも悲鳴を上げるがAはすぐに銃口を客に向けてきたから静かになった。
「…金庫から金を取り出せ」
店員は素直に従ってレジの中から札を必死にかき集め、強盗Bが持つ袋に雑に入れる。強盗Bは俺達人質が何かしないように包丁片手に見張っていた。正直、こんな普通の強盗に負ける気しないが問題は強盗Aだ。奴は銃を持ってるから油断は出来ない。
「よし。金はずいぶんと集まった……警察が来る間楽しませて貰おうか。 おい、女どもは立て」
事態は嫌な流れに向かい始めた。強盗達は女だけを立たせる。勿論、有栖川もだ。全員が立ち上がると強盗達は一人一人物色し始めた。女は嫌な顔をするが抵抗すれば殺されるんだ、怖くても抵抗出来ないだろう。
「っ、おい! お前も立てって」
見ると有栖川はブルブル震えて力が入らない様子だった。俺だってこんな事は言いたくないが抵抗すれば命の危険が伴う。
「かっ 体が力が入らないんです」
「じゃあ俺が手伝って━━━━」
「おい、そこ! 何話してやがる。それとそこの女は立てって命令が聞こえなかったのか?」
しまった!強盗Aは俺達に気付き近づいてきた。そして俺の頭に銃口を向ける。
少し話しを追加しました、ごめんなさい。
プロローグは次で終わりますのでもう少しお付き合い下さい。