表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Mの法則   作者: 猫又 杷槻
10/11

知らない事

 大きな衝撃の発生源には人がごろごろ転がっていて、誰1人として動かなかった。窓ガラスと窓枠が無くなった高い壁から、風が入ったり出たりする音だけが鳴っていた。


「うわっ…こりゃまた派手にやったな」

「良く1人でここまでやりますよね…」

「さっさと生き残り探して片付けるぞー」

「あ、はい」

 Mが去って静かになった廊下は、壊れていない所が無いくらい壊れていた。


「お?コイツ生きてるか?」

「その様ですね」

「んじゃコイツ宜しく」

「はあ…」

 生返事なまへんじを受け取ると、幻裏はそのまま消えた。まるで蜃気楼しんきろうが消える様に。


     *


 Mはふらふらとした足取りで階段を上がり、屋上に出た。そのまま屋上を歩く。

「…あへ、あはは…気持ちいー…ねぇ、フードもそうでしょお?」

「俺わかんねーからMが俺の分まで味わって」

「わかったー、んふふ…」

 何もかもを取り払った廊下のような屋上をくるりくるりと回りながら進んでいく。転げそうな足取りだったが、まるで道化師がおどけるように、ギリギリのところで立て直す。


「うわっ…ぶえっ!!」

 強い風によろめきながら少しずつ反対側へ歩いていく。


 背後に気配を感じながら。


 屋上のふちに立ち、

「あははぁっ、もう面倒だなぁ」

 そういって彼女は後ろを向いて─────── 落ちた。


 背後から確実にを詰め、それに気づきながらも無視をする少女を、はしまで彼女の足によって運ばせて、やっと自分の手でとどめをさせると思って刃物を突き出した、が、彼女は自分から落ちたので、挙句あげくの果てには自分から殺そうとしたどころか、自分までも身を投げ出す形になった兵士の心など見ず知らず。

 Mは頬を赤らめ、笑いながら呟く。


「ざまぁみろぉ…っははは!」

「う、わ…ひっ、ぎゃぁああああぁああぁぁっぁあああぁ!!!」

 兵士は耳をつんざくような悲鳴を上げ、派手に回転しながらくうを舞った。Mは笑みを顔に浮かべて、背中から静かに、一直線に落ちていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ