プロローグ 午前3時42分
ただの会話です。
ー約束を、しよう。
誰だっけ。
すごく大切なひととすごく大切な約束をしたはずなのに。
あぁ、何だっけ?
「…む……おい…M!!!」
呼ばれた気がして顔をあげる。
「…何…?」
細身の体にぴったりと張り付いているような黒のハイネックに、黒のズボン、黒い革のブーツ。銅鏡のような目に、肩まである漆黒の髪。まるで闇のような人物は一目で確認ができる胸のふくらみと、声から推測すると10代半ばごろの少女である。
「落とすぞ…そいつ」
Mと呼ばれた彼女の手に握られているのは、刃渡り40センチほどの大きな包丁。
10代ほどの彼女が持っているはずが無いそれは、月明かりに照らされ、ほのかに濡れた刀身をきらきらと輝かせている。
「ほんとだ。気付かなかった…」
「刃研ぎ中にぼーっとするなんて珍しいな」
「…なんでだろうね?」
「オイオイ…」
最初の声があきれたような声をだす。
「フードは黙ってなよ。どうせ視野確認と、音声伝達しかできないんだから」
「ちったぁありがたく思えよ!!!!」
色褪せて、裾が紅く染まった黒のロングコートが泣きそうな声で怒鳴る(どなる)。
「さて、そろそろ寝ようかな…」
包丁を水場で洗いながら言うと、
「M…。お前なんか変なもの食った?」
「…燃やす」
「大変申し訳有りませんでした許して下さいごめんなさい命だけは…」
変な謝罪文を唱えている音声を完全スルーして、包丁を高級そうな革のホルダーにしまいベッドに倒れる。
「(…あれ、何だったっけなぁ…)」
「ほんとにもう許してくだs…あれ?」
布団もろくに被らず溶けるように眠っているMを確認した。
「ありゃ…?なんか珍しい…。明日は絶対なんかありそうだ」
どこか楽しそうに、しかし真剣そうに呟いた。
「そんな事より…」
「俺のこと掛けてから寝ろよ…」
現在3時53分。
Mは必ず毎朝5時に目を覚ます。
これから連載予定です!!
次回をお楽しみに!