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東方幻想入り  作者: コノハ
最後の反乱
102/112

望君の秘密と私

 住処に帰ると、キアが部屋の真ん中で体育座りをして大人しくしていたのが見えた。

「キア。保留だったね」

「はい」

「だから、あなたの処断も保留。望君に感謝して」

 キアは頷いた。私に言葉をかけてもらえるならなんでもいいのだろうか。

「はぁ、なんか疲れた」

 最近、こればっかり。幸せになったかと思ったら突き落とされて、の繰り返し。どうせ、キアと仲良くして幸せになろうとしたらキアが暴走するか裏切るかして地獄に突き落とされるんでしょ?

「……はぁ」

 疲れた。あぁ、もしかして望君に拒絶されたことが効いてるのかな。だろうな。私も何度か、望君どころじゃなくて拒絶したことあったけど……こんな切なくて苦しい気持ちになるんだ。

 望君が私を拒絶した理由はなんだろう。理性的な頭は私のせいじゃなくて自分の記憶だけでいっぱいいっぱいなんだってのはわかる。けど恋する私は、もしかしたら私が何かしたんじゃないか、もしかしたら嫌われてしまったのかもしれない、なんて思ってる。

 信じなきゃ。望君は私が好きなんだ。信じて信じて信じぬかなきゃ。

「ねよう、キア」

「はい」

 私が横になると、キアも私の隣で眠ろうとする。

「……好きにしたらいいよ」

 どうせ、いつか裏切られるんだ。それなら今裏切らせて、信じることをやめよう。

 そんなことを考えるくらい、私の心は疲弊していた。


 目を覚ますと、キアが私を抱きしめていた。まだ全身の感覚は不確かだ。

 ……おかさ……れ……?

 次第に、意識が覚醒していく。

「キア……?」

 はっきりと目覚めると、キアが私を抱きしめているだけだということがわかった。おかしい、な?もしこれがパパなら、一晩中ヤられてたところなんだろうけど。でも、私はずっと無防備だったにも、関わらず、何もされていない。いや、抱き締められているだけ。

 信じちゃダメ。そうだよ、こうして油断させて、それから……。

「ん……マスターぁ……」

 愛おしそうに、私を呼ぶ声。意識を軽く探っても起きている様子はない。彼女は無意識に、その可愛らしい吐息をもらしたのだ。

 なにやってんだろ、私。

 疑って、疑心暗鬼になって。これじゃ前と変わらない。

「キア、起きて」

 パチリ、と、キアが覚醒した。びっくりした。微睡むことさえせずに起きたのだから。

「おはようございます、マスター」

「うん、おはよう。私、今日、望君に会いに行くね」

 私がそう言うと、キアはゆっくりと私を解放した。

「いってきます」

「いってらっしゃいませ。お帰りお待ちしています」

 なぜだか自然に、そんな会話を交わしていた。

 私は外に出ると、背中から翼を生やし、いつものように永遠亭へと向かった。


 私が永遠亭の庭に降り立つと、縁側に望君がいた。

「望く……ん?」

 手を振って彼を呼ぼうとした私は、彼の雰囲気に圧倒されて黙り込んだ。彼のそばにくると、その雰囲気は彼が何か深い覚悟をしたから生まれているときうことがわかる。

「……ミオちゃん。話したい、ことがあるんだ」

「な、なぁに?」

 も、もしかして別れ話? い、いや、違うはず……。

「僕らの仲にも、関係あることだから。辛いけど、聞いてほしいんだ」

 わ、別れ話、だ。キアなんかを奴隷にしてたから、仲間だと、思われた?

 や、やだよ。私、望君が好きなんだよ? 望君と一緒にいられたら他の何もいらないくらい、望君だけで幸せなんだよ? もしかして、私と望君の関係って、今日終わっちゃうの?

「……お願い、ミオちゃん」

「……………………………ぅん」

 望君に手を引かれて、私は永遠亭の奥に連れていかれた。この先は、どこに行くのだろう。

 望君との関係の、終わりかな。そんなの、やだ。

 でも、なんでも気にせず口にしてきた私だけど、今日だけはなぜか、何も言えなかった。


「座って」

 狭い部屋だった。四畳くらいの部屋に、ちゃぶ台がひとつ置いてあるだけ。望君が先に座って、反対側を促した。

「失礼、します」

 なんだか変な気分になって、自分でもわからないうちに敬語を使っていた。

「……この部屋、周りに誰もいないから。だから、話したい。僕のことを」

 望君の、こと?

「昨日、キアを見て……それから、ミオちゃんに優しくしてもらって、気付いたことがあったんだ。僕、ミオちゃんにずっと隠し事してるって」

「そんな、それなら私だって、たくさん! 望君だけじゃないよ」

 私が言うと、望君は微笑んでくれた。

「うん。でも、僕は秘密にしておくことが、嫌になったんだ。だから、話したい」

 聞いてくれる? と、彼は聞いてきた。

 頷く。当たり前だ。望君が話してくれるなら、私はなんでも受け入れる。

 彼から感じた覚悟は、並大抵ではなかった。それこそ、私が解放団に捕まったときのように、何をされても、何があっても曲げない、そんな固くて強い意思。

「僕は……。外来人じゃない」

「……え?」

 いきなり、何を言われたのかわからなかった。

「僕は、ミオちゃんのように意図せずにここにきたんじゃなくて、来るべくして来たんだ。新しい、幻想郷の住人として」

 それから、彼が語った彼の歴史は、衝撃だった。

 彼は、とうの昔に現代社会からかけ離れていて異常だった。だから、ここに来た。親や友達、全てのしがらみを捨てさせられて。

 そして、ここに来たのとほぼ同時、解放団に攫われて、陵辱された。

「……」

 望君が言葉を失うのも、当たり前だ。ずっと私は、彼がただ解体されたり拷問されたり、ということだけだと思っていた。

 男の子、なのに。なのに、彼は私と、同じ辱めを受けていた。

 ……でも、男同士でどうやって? 一瞬だけ、疑問に思う。そして、思い当たる。

 もしかして……。

 ぞっと、背筋に冷や汗が流れる。そんな。アレ、は、とても痛くて、苦しくて。そんなのを、望君が。

「……ごめんね、ミオちゃん。僕、こんな、弱くて」

 そう言って、彼は涙をちゃぶ台に落とす。

「弱くなんてない! 望君は弱くなんてないよ、大丈夫だよ、望君!」

 私は叫んで、彼のそばにかけよる。彼の顔が間近に迫る距離までくると、ほっぺたにキスをする。

「ミオ、ちゃん」

「望君。大丈夫だよ。私だって……」

 そこから先は、言葉が出ない。

「……ありがとう、ミオちゃん」

 望君はそう言って、私の頭を撫でてくれる。

「ずっと不安だったんだ。こんな僕でいいのか、僕よりもっとふさわしい人がいるんじゃないかって」

「私にふさわしい人は望君ただ一人だよ。他の人には、たとえ何をされても靡かないよ」

 それだけは、断言できる。

「……ありがとう」

「うん。次は、私の番だね」

 私は望君に、キアの心を治すときした治療、口移しのことを話した。

「キア、と」

「……ごめんね、望君」

「ううん。もうキアは、ミオちゃんの奴隷だもんね。ご主人さまなら、面倒見なきゃ、だよね」

 自分に言い聞かせている風の望君の言葉に、胸が痛む。

「大好きだよ、望君」

 疑ってほしくない。そして、私の愛を知ってほしい。だから、そう言った。

「僕も、大好き」

 自然に私達の顔は近づいていく。

 ゆっくりと、だが確実に。

 私は、目を閉じた。あなたになら、何をされても構わない。そんなサインのつもりだった。

 ちゅっ。

 頭にそんな可愛らしい音が響いた。

 しばらく、唇同士の優しいキスをしたまま固まる。

 彼のぬくもりを、精一杯感じる。

「……ん」

 どれほど、そうして口付けを交わしていただろうか。私たちはどちらともなく離れた。望君の顔は、恥ずかしそうに真っ赤になっていた。

 きっと私の顔も、真っ赤になっているだろう。

 パパにされたのとは、全然違う。ただのキス。パパとはもっとエッチなのもたくさんさせられた。けど、パパとしたときは全然興奮しなかったし、早く終われ、早く終われ、って思いながらだった。でも、望君としているときは正反対。キスだけなのに天国にいるみたいに幸せで、刺激は最小限のはずなのにどんどんボルテージが上がって行く。もっと繋がっていたいと思う。離れるのが寂しい。

「……もう一回、しよ?」

 望君から話を聞くまでは貝か別人みたいに黙っていた私だけれど、今は自分でも驚くほど、ストレートに要求していた。

「な、何を?」

「言わせる気? もう、上手なんだから」

 私は望君の肩を掴んで、軽く唇同士を触れさせる。

「……」

 望君はちょっと面食らってるみたいだった。

「ミオちゃん、酔ってる?」

 なんで? なんでその返答なの? 私、勇気出したのに。

 ……もう。ちょっとむっとしたから、ふざけてみよう。

「酔ってるよ、望君に」

 そう言って、もう一度キス。すると、望君は顔を真っ赤にして後ずさった。胸を両手で抑えながら、はっはっと短い息を繰り返している。

 可愛い。

「どうしたの、望君?」

「ご、ごめ、ごめん、ミオちゃん。ちょ、ちょっとドキドキしてて」

 ああ、本当、愛らしい。ぎゅっと抱きしめて、そのまま頭をなでなでしてあげたい。

「ふふふ、望君。望君、キスは嫌い?」

「ぜ、全然! む、むしろなんていうか、す、好き……かも」

 最後の方は、消え入りそうな声だった。私は四つん這いで、望君のすぐそばまで移動する。顔を赤くした望君が、視界いっぱいに広がる。

「望君、もっかい、しよ?」

 もちろんキスだけで、その先なんてしない。望君が嫌だろうから。

「わ、わ、ちょ、ちょっと、待って! 待って~~~!」

「大丈夫、望!?」

 バン、と襖が勢いよく開いて輝夜が入ってきた。

「……あ」

 三人共、同じことを言った。

「……お、お取り込み中、ごめんなさいね」

 すすーっと、輝夜はスライドするようにして部屋から出て、襖が閉まった。

「待って輝夜、これは違うの!」

「待って輝夜、これは違うんだ!」

 こう言いながらも、きっと望君だって、私と同じことを考えているだろう。

 何が違うと言うのだろうか?


 そのあと、私たちは叫び声が聞こえて心配で飛び込んできた輝夜になんとか説得……キスだけで、決してそういうことをしようとしていたわけではないこと伝えた。輝夜は終始呆れたような表情で、うんうん頷いていた。

それで、それからしばらく輝夜も含めた三人で遊んで、夜になってから私は住処に帰った。


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