dog of love
僕には好きな人がいる。でも叶わない――――。
なぜなら僕は犬だから。
僕は自分の飼い主の梓に恋をしているんだ。
梓はいっつも僕のことを可愛がってくれて、散歩に行くときもいつだって一緒。
優しくて、でもいけないことをしたらちゃんと叱ってくれる梓が大好き。
「リンジィ、散歩に行くよ!」
梓が言った。僕の名前はリンジィ。梓が好きな服のブランド名らしい。
梓が僕の首にリードをつけた。さあ、行くぞ・・・。
道を歩いた。どこか梓は納得いかないような顔をしている。
僕が不安げに梓を見上げると梓がこっちを向いた。
「やあだ、どうしちゃったの?どうした・・・・」
言い終わる前に梓は泣き出してしまった。
あわてて道端のほうに梓を引っ張っていく。
「リンジィ。私、フラれちゃったんだ・・・」
夕日に照らされた梓の横顔はとても綺麗だった。
しかし僕は心の痛みを覚えた。
梓に好きな人がいた・・・?いたとしてもなんで僕に言ってくれなかったの・・・・・?
秘密はナシ。そう言ったのは、梓なのに・・・・・。
「ごめんね・・・。隠し事しちゃいけないのに・・・・」
ヒック、ヒックと嗚咽しながら梓が言った。
そんなことない。梓も悪いかもしれないけど、それに気づけなかった僕も悪いんだ。ごめん・・。
そんなことを考えながら、僕達は帰っていった・・・・・。
ピーンポーン。家のチャイムがなる。
「はーい!」
元気に返事をして梓が飛び出していく
「やっほー!」
部屋に入ってきたのはいとこの絵梨。
「お~リンジィ!!」
そういいながら僕の頭を撫でる。
「ちょっと待ってて。お茶かなんか出す」
梓はそう言ってキッチンへ向かった。
「ねえ、もしリンジィが男の子だったら好きになる?」
な、なんてこと言うんだ、絵梨は。
「ん~犬だったらまず無理。でも人間だったら好きになるかもなぁ~・・・」
な、なぬ?!今のままでは梓は僕のことを好きになってくれないのか!!!
よし、今からの俺の夢は人間になることだ!!!!
はじめて自分のことを「僕」から「俺」といえた日だった。
夢に向かって突っ走るぜ!!!!
END
かなりの短めです。どうでしたでしょうか?