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二人で歩く街並み――Date


 ある晴れた日の休日のこと。

「……待たせたわね」

 むすっとした顔つきで神那荘から出てきた日澄。

 本当、随分と待たされたよ。おかげで暇つぶしに雪風の相手をしていたらべろべろに舐められたから、一度顔洗いに行ったぐらいだ。

「なによ、その顔。不満ならいいのよ別に」

「んなこと言ったってなぁ」

 神那荘ココに引っ越してきてからというもの、俺と日澄(主に日澄)が毎日のようにどたばたしていたため、これからの神那荘のことを考えると、俺らの関係は改善しなくてはいけないという点が浮上してきたのだ。

 たとえば、俺が信子ちゃんや黒姫と話しをしていると、日澄が火炎放射器(スプレー+ライター)で汚物は消毒だー! をリアルでかましてきたり、俺がキーアに絡まれていると、100tハンマー(偽者)を召喚したり。

 そんことがあり、タダでさえボロい神那荘がこれ以上ダメージを受けるとヤバイため、俺たちの仲を改善しろとのお達しをうけて、神那荘で行われた全体会議の総意(キーアは血涙を流していた)の元、俺と日澄、二人で遊びに行くこと(つまりデート)が決定された。

 が、日澄はゴネまくり、さらにはつい今しがたまでゴネていたことを知っている。なにせ壁が薄いため、本人は内緒話しのつもりで話しているのだろうが、めちゃくちゃ嫌がっていた声がで聞こえていたからな。

「つーか、お前はいいのか?」

「しょうがないでしょ、皆が仲良くしろって言うんだから。今日は仕方が無く貴方に付き合ってあげるわ」

 ……なんだろう。コイツを素直になれない子ツンデレっぽく見ないと、やってられない気分になってくる。

「それじゃ、行きましょうか」

「しっかりエスコートしてくれるんでしょうね」

「おいおい、俺、ここに引っ越してきて日が浅いんだぞ。女の子と二人で遊べる場所なんて知るはずが無いだろ」

「私だってイズマキから外に出て日が浅いからそれほど街のことなんて知らないわよ」

 沈黙が訪れる。どうやら互いに相手任せのプランだったようだ。

「……それなら、とりあえず街へ出て探してみるか」

「それがよさそうね」

 こうして、行き当たりばったりの計画で繁華街へくりだすことになった。



 この真織市の移動手段は徒歩か自転車か電車。車は地位のあるヤツしか所持していない。

 ちなみに、北側には北側全体をカバーするように環状線の地下鉄が通っているため、俺達をはじめ、北側のほとんどの住人がコレを移動手段として利用している(なにせ定期を買うと電車乗り放題だからな)ので、自転車を乗るやつは少ない。

 あと、南側はほぼ田園地帯となっており、電車は通っていないどころか、同じ市内かと思えるほど様変わりしているらしい(時矢情報)。

「あのさ、前から聞きたかったんだけどさ」

 移動中の電車の中、ぼけーっとしていた時、隣で座っていた日澄が問いかけてきた。

「貴方って、キーアと付き合ってるの?」

「それは無い」

「即答ね。あれだけ仲が良いのに」

「あれで仲が良いと見えるのなら、俺はお前に眼科を勧めるぞ」

「でも、あんたとキーアってよく漫才やってるじゃない」

「周囲がアレを漫才と捉えるからキーアが付け上がるんだ。俺は本気で嫌がってるっての」

 肉体接触系イベント以外は。

「なんか言外に含むような言い方」

 鋭い。

「――とにかく、容姿はともかく性格が俺の好みじゃないの。だから付き合うことは一生無い」

 おしとやかなのは好みじゃないのかな? などとつぶやいているが、ソレはキーアがネコかぶってる時だっつーの。

「じゃぁ、信子ちゃんか黒姫が狙い? 最近よく話しかけてるし」

「あのな、そりゃお前が俺の評価をどん底に叩き落してくれたからフォローしてんだよ。それにあの二人は逆に容姿がなー。幼女と白子だろ。さすがにそこまでマニアックな趣味は無い」

「貴方、本人達に聞かれたら怒られるわよ」

 いや、むしろお互い容姿ソレを売りにしてるところがあるような……

「あっ、そ、それじゃぁ、貴方の好みって、もしかして……?」

 私? と目で問いかけてくる。

 うーん、こうして見ると本当に織華にそっくりな外見だけど……

「ちょっ、なにじろじろ見てるのよ。本当にそうなの!?」

「いや、お前も性格がちょっと残念だから、ごめんなさいだな」

「残念ってなによ! だいたい、私だって貴方と付き合うなんてごめんなんだからね!」

 ふんと明後日の方向を見る。

 しまった、今回の企画の趣旨は仲良くなることだったっけ。

 でも、この気難しいお嬢さんと仲良くって、どうすればいいんだ?



「さて、繁華街にやってきたが、どうする」

「私、お腹が空いた」

 電車の中でのことを引きずっているのか、むすっとした表情で言ってくる。

「なら、うまいラーメン屋を知って――いたっ」

 尻を蹴られた。

「あのね、仮にもデートでしょ。なんでそんないかにも学園帰り、みたいなノリなのよ」

「つったってなぁ。じゃぁ、お前は何が食べたいんだよ」

「私? 私はお好み焼きが……」

 と、そこまで言った時、俺がジト目で見ていることに気がついた日澄はハタと我にかえると、慌て両手をふりまわし×をつくる。

「今の嘘! じょーだん! そうね、せっかくだしオシャレな店を探しましょう!」

 言うやいなや日澄ずんずんと先を歩き出す。俺は、ため息を一つつきその後を追った。

 ――で、結局なにを食べたかというと。

「……悪かったわね」

「別に」

 二人でファーストフードでハンバーガーを買って、歩きながら食べていた。

 考えてみれば、俺達それほど金を持っているわけではないのだ。

 俺は市からの保護支給(外からやって来た異能者に対して三年間は市から一定額の援助金をもらえる制度。だが、将来援助された金は返さなくてはならない)頼りだし、日澄は棟長からの援助を受けているが、その金には手をつけたくないらしい(本人曰く借はなるべく作りたくないとのこと)。

「どーしよう。お金が無いって気がついただけで、いっきにやることが無くなった気が……」

「お前の中のデートは、金を使うことしか無いのか」

「じゃぁ、貴方は何か案があるの?」

「いや別に、その辺ぶらぶら歩くだけでもよくないか?」

「ダメよ、ダメ。ほしいの見付けちゃったら、買いたくなるじゃない」

「お前、堪え性がないもんな……」

 本人にも自覚があるのか、うっ、と言葉を詰まらす。

「だけど、せっかくここまで出てきたんだ。このまま帰るのも無いだろ」

「それもそうね……じゃぁ、なるべく欲しい物が目につかない場所を歩きましょうか」

 それはどこだよと突っ込みたくなるが、とりあえず俺と歩くことに異論は無いらしい。

 こいつ、本当に素直になれない子ツンデレなんじゃないだろうか……

 それから二人で繁華街を歩き、いろいろな場所を見て回る。

 お互い知らない場所が多いため迷子になったり、看板の無い店を見かけるたびにどんな店か二人で予想をして騒いだり、その中で見つけた古い家具や用途不明な道具を扱う骨董屋(俺の趣味)を覗いたり、鉈や鋸といった日用品から刀剣まで扱う刃物屋(日澄の趣味)を覗いたり、お互いの趣味のおかしさをバカにしあったり、と、なんだかんだで夕方近くまで金を使わず時間がつぶせた。

「ふぅ、意外と楽しかったわ」

「そりゃよかった。コレをきっかけに神那荘でも仲良くしてくれると嬉しいね」

「あのね、私だって好きで怒ってるわけじゃないのよ、貴方がセクハラ魔なのがいけないんじゃない」

「それは誤解だっつーの。今日だってお前に手だししなかっただろう」

「そうね、確かに誤解だった。うん、いろいろとごめんなさい」

「ん、分かってくれればいいよ。それじゃ、今日の企画は成功ってことで、帰りますか」

「そうね」

 いい感じにまとまったところで二人、帰路に着く。

 行きに来た道を戻るだけの帰り道。それだけだと思っていたが、そうは世の中そうは問屋がおろさなかった。

 この後、のちに『地下鉄の悪魔事件』と呼ばれる事件に俺達は遭遇するのであった――



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