表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰祈(はいき)の聖痕(スティグマ)  作者: 波浪


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/21

第19話「黒き祈り、白き絶望」

地下聖堂は、まるで世界の底のようだった。

天井から滴る黒い水は音もなく落ち、床に刻まれた古代文字が淡く脈打っている。


「……ここが“原初の契約”の間か」


アレンは剣を握る手に力を込めた。

イノセンスは微かに震え、何かを拒絶するように白い光を揺らしている。


その時――。


「やっと辿り着いたね、継承者」


闇の奥から、低く優しい声が響いた。


姿を現したのは、千年伯爵ではない。

だが、それ以上に“世界を知っている”存在だった。


黒い法衣を纏い、顔は仮面で覆われている。

その胸元には、砕けたイノセンスの欠片が無数に縫い付けられていた。


「……誰だ」


アレンの問いに、男は微笑む。


「私は“失敗作”。

神と人の間で捨てられた、最初のエクソシストだよ」


その言葉に、リナリーが息を呑む。


「最初の……エクソシスト?」


男はゆっくりと歩き、聖堂中央の祭壇に手を置いた。


「イノセンスは武器じゃない。

人の“祈り”そのものだ」


祭壇が反応し、巨大な影が壁に映し出される。

それは、人と悪魔がまだ区別されていなかった時代の記憶。


「祈りが強すぎれば、世界を壊す。

弱すぎれば、救えない」


男はアレンを見つめ、仮面の奥で目を細めた。


「君はもう限界だよ。

白も、黒も、君の中で喰い合っている」


――その瞬間。


アレンの左眼が激しく疼いた。


「ぐっ……!」


視界が反転し、悪魔の魂が叫ぶ声が洪水のように流れ込む。


《やめろ》

《救ってくれ》

《殺してくれ》


「アレン!」

リナリーが叫ぶが、近づけない。


男は静かに言った。


「選ぶんだ。

“救世主”になるか、“終焉”になるか」


アレンは震える手で剣を突き立て、必死に立ち上がる。


「……それでも、俺は――」


彼の背後で、イノセンスが黒く染まり始めた。


白と黒が混ざり合い、今までにない形へと変質していく。


「俺は、誰も見捨てない……!」


次の瞬間――

聖堂全体が、眩い光と闇に包まれた。


そして男は、満足そうに呟く。


「ついに始まったか。

“最後の継承”が」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ