大掃除大戦争 ~負けたら罰ゲーム(主人公が)~
「――というわけで、掃除当番は、対決によって決めます!」
学園のホームルームで突如発表された、謎の掃除ルール。
その名も「大掃除大戦争」。どうやら、各委員会ごとに掃除当番を決めるだけでなく、勝者には『掃除ではなく』お楽しみ特典があるらしい。その特典とは何か、聞くまでもない。
「何、特典って? 誰かとデートとか?」
「違う、もっと面倒なやつ」
「誰が得するんだこれ?」
学園全体がざわめく中、続々と参加者が現れる。
「遼くん。あなたが掃除の負けた側になったら――」
「大掃除大戦争、勝った者には、罰ゲームとしてお昼ご飯を一緒に食べてもらいます!」
これが発表された瞬間、全員の目がキラリと光った。
「ま、待って! 罰ゲーム!? 俺が負けたら、その罰が俺に!?」
「その通り、遼くん。君が罰を受けるのよ。覚悟してね」
その言葉に、遼くんは無理矢理ニッコリ笑顔を作る。
「じゃ、じゃあさ、俺はチーム代表として立候補する。仕方なくね、こういうの……」
そして、戦争の幕が切って落とされた。
その日の午後、体育館に設けられた会場で、各チームが集まり、早速掃除対決が開始された。
「チームリーダーは、遼くんよね」
「お前が引っ張れよ、せっかくの掃除なんだし」
俺がクラスの代表となった以上、責任は重く、でもめんどくさいというあたりが理不尽である。
「遼くん、私が使う道具、準備したわ。これであなたも完璧に掃除ができるわよ」
「な、何を……?」
クラリスが取り出したのは、さりげなく高級感溢れる掃除道具セット。まるで百貨店のセール品みたいだ。
「ふっ。無駄だ。お前には、汗と努力が必要だろう。さぁ、みんなで無駄に使ってやろう!」
日比野 みか、掃除の道具を拳で叩きつける。
「ちょっと待て!! それ、物壊すための道具か!?」
「言ったよね? 掃除道具って物を大事に使うって」
「それは本気で言ってたのか!!」
やり取りを見守っていると、他のヒロインたちがどんどん勝負に加わってきた。
「よし。これで完全無欠だ!」
ルクシアは、背後で実験道具を取り出し、何かを用意している様子だ。おい、それ、掃除道具じゃないだろう。
「絶対、やめろ、ルクシア! それが掃除に使えると思うな!」
「ちょっと待って。これが新しい魔法掃除術よ。完璧だわ」
掃除してるのか、魔法実験してるのか分からなくなったその瞬間、突如会場内に火花が散る。
「遼くん! 私がついていれば、もう何も怖くない!」
クラリスがその高級道具をどこかに投げつけ、魔法が発動した。たぶんそれは掃除用ではない、絶対に。
「え、いや、ちょっと待って!?」
「これが掃除の新しい流れよ!」
どんな流れだよ、この学園。
その後、ルクシアの魔法は少し暴走し、周囲の床を焦がし、日比野は気合いで手をあげ、なんとなく掃除のようなことをしている。
しばらくして、予想通りの事態が訪れる。
「何、これ……」
目の前には、大きな焦げ跡が広がっていた。
その隣には、クラリスの高級掃除道具がすでに焦げ、ただの炭のようになっていた。
「大掃除大戦争が……ちょっとヤバくない?」
「こんなにやる気出してるのに、無駄すぎる!!」
「何もかもがアホらしくなってきた」
俺の心は疲れ果て、意識がふわふわしている。だが、心の中では1つだけ、疑問が浮かぶ。
「そもそも俺、何でこんなに巻き込まれてるんだ?」
その時、ルクシアがキラキラした目で俺に寄ってきた。
「遼くん、今度は私の魔法で掃除してあげるわ!」
「やめろ! 他に頼め!」
気づけば、結局掃除は最終的に「チームで一緒に片付ける」方向になった。最初からやり直した方が早いのでは? という疑問を胸に、俺はチームメンバーを見渡した。
「こんな状態で、掃除しているとは思えない」
「私の魔法、たった今発動してしまったからね」
「あっち、みんな何してるんだ?」
他のクラスも似たような事態になっていたが、どうしてこうなるんだ。
放課後、ついに勝者が決まった。
「……あれ?」
「お前たち、何が一番やばいって、全部が分かってるのか?」
「勝ったのは、遼くん」
「どういうこと!? 俺、全然掃除してねぇぞ!!」
「君の無気力に、みんなが夢中になりすぎて……掃除の時間が乱れたってことだろうね」