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そして世界は落ち着いた(と思ったら)

その後、俺は何とかヒロインたちの暴走を抑え込むことに成功した。精神空間での対話が功を奏し、愛美は少しだけ冷静さを取り戻し、ルクシアも暴走魔法を鎮めた。みかは拳を振り下ろすのをやめ、クラリスは金の力で校則を改変しようとするのを一時停止した。


教室は、目に見えるほど静けさを取り戻した。空気が一変し、まるで嵐が過ぎ去ったかのように感じられた。


俺は深いため息をつき、肩を落とした。


「もう、ほんとに…疲れた」


呟いた言葉に、愛美がすっと近づいてきた。


「遼くん…お疲れさま」


その顔は、あの狂気じみた愛情の色を少しだけ消して、優しさがにじみ出ていた。いや、逆に言えば、愛美にとってはこの「穏やかな時間」が一番怖いのかもしれない。彼女にとっては、俺を取り巻く狂気こそが心地よい刺激になっているのかもしれない。


「ありがとう、愛美。でも、もう少し落ち着いてくれないか?」


「私、遼くんと一緒にいられるなら、どんな世界でも幸せよ」


その言葉には、裏があるような気がしてならなかった。


「それは、ちょっと怖いな」


「でも、遼くんが望むなら、私は変わるわ。だから、私を…」


愛美は言いかけた言葉を飲み込み、再び静かな目を向けてきた。まるで何かを悟ったかのように。


「…でも、もう少しだけ、君を見守らせて」


その一言に、俺は思わず肩をすくめた。こんな日常が続くわけないことは分かっている。だが、少なくとも今は、少しだけでも穏やかに過ごすことができるかもしれない。


その時、教室の扉が開いた。


「遼くん!」


声をかけたのは、日比野みかだった。彼女は顔を真っ赤にして、汗をかきながら俺に走り寄ってくる。


「みか?」


「遼くん! さっきは…あ、あの…」


彼女は突然、顔を背けてぶつぶつと独り言をつぶやき始めた。


「ごめんなさい、つい、感情が…でも、私は絶対に遼くんを守る! だから、あんなこと…しないって言ったのに…」


「おいおい、みか、落ち着けって」


俺は苦笑しながら彼女に手を差し伸べたが、その手を掴んだみかは、まだ顔を赤らめたまま言った。


「でも、遼くんがどんな状態でも、私は支えるから。これからもずっと、ずっと、遼くんと一緒にいたいから!」


その言葉に、俺は思わず頭を抱えた。


「それ、さっきから言ってるけど、俺、全員にどう対応していいかわからないんだよ…」


その時、また扉が開いた。今度は、クラリスが現れた。


「遼くん、少し話があるの」


クラリスは冷静に言ったが、その顔に少しだけ不安が見え隠れしていた。どうやら、彼女もこの状況に疲れ始めているらしい。


「話って?」


「うーん、実はね、ちょっとした事務的なことを…まあ、君と一緒に話さなきゃいけないことがあるの」


「事務的な…?」


「まあ、そう。遼くん、君の特殊性についてだけど、今後の学園での扱いを少し見直す必要があるかもしれない」


クラリスのその言葉に、俺はピンと来た。


「まさか、俺を学園の特異枠で、どうにかしようって話か?」


「うん、それも含めて。正直、君の精神力があまりにも高すぎるから、このままでは学園の安定が危ないかもしれない」


俺は思わず一瞬黙った。正直、クラリスが言っていることも、十分理解できる。精神力SSS級というのは、確かに異常なレベルだ。


「それでも、俺は普通に学園生活を送ってるつもりだけどな…」


「それが、君の強さなんだよ。だから、君が壊れないように、私たちも協力しなきゃいけない」


クラリスの目に強い決意が宿っていた。どうやら、彼女もこのままの状態で収めようとしているわけではないらしい。


「でも、君にはちゃんと答えてもらわないといけない」


「答えてもらう?」


「君がこれから、この学園でどんな形で過ごすか、それを決めるのは君次第だってこと。私たちも、君を守りたいと思ってるから」


その言葉に、俺は一瞬、言葉が詰まった。確かに、どうすればいいのか、まだ決めかねている自分がいた。


その時、背後から聞き覚えのある声が響いた。


「遼くん、もう一度、私にチャンスをください!」


それは、天音だった。彼女の表情は真剣で、目には確かな光が宿っていた。


「天音…」


「遼くん、私たち、最初から繋がっているって信じているから」


その言葉に、俺の胸が熱くなった。天音が俺を信じ、俺も彼女を信じていることは分かっていた。しかし、こんなに多くのヒロインたちとどう向き合っていけばいいのか、俺にはまだ答えが見つからなかった。


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