七話 助手
夢を見ていた。
存在しない世界の夢。
視界は真っ黒のまま。
声だけが聞こえる。
「楓、学校遅刻しちゃうよ?」
「ううん……」
「ほら、起きて! 何でボクがキミを毎朝起こしに来ないといけないのさ!」
「あと少し……だけ」
「もー‼」
「……んぅぅ、何してんだよぉ」
「もう遅刻確定だし。だったら思う存分遅刻しちゃおう、って思って」
「ちめたい……。布団が冷える。出て……」
「うるさい、うるさい。こんなに可愛い女の子に添い寝してもらってるんだぞ~? 少しは喜べ!」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
(何も、聞こえない……)
楓はゆっくりと目を開ける。
朝日がカーテンの隙間から部屋を照らしていた。ベッドの温もりは楓の温かさだった。そこに、彼女の温もりはない。
夢と現実がごちゃ混ぜになっていた楓だったが、やっと意識が覚醒し始める。そして、気が付いた。
「そうか……。俺はアイツとの未来を想像できなかったのか」
だから夢の会話を途中で途切れたのか、とため息を溢す楓。
楓はゆっくりと布団から起き上がると、カーテンを開けて朝日を全身で浴びる。
「そりゃそうか」
窓を開けると真冬の風が楓の髪を靡かせる。
(だって俺は──)
「ただの助手だ」
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