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第二話 死神

「こんばんは」


 死神の情報を得て三日。胡桃がついに死神の仮拠点を見つけ出していた。そして、見つけ出したその日の内に、楓は単独で死神の元へと向かっていた。


「……誰?」


 月明かりも届かない深い森の中に少女の声が響き渡る。

 感情のない声。だが楓はその無色透明の声色に、警戒と不安、そして明確な殺意を感じ取っていた。


 黒色のロングコートで身を包んだ小柄な少女。サファイアのように青く輝く瞳は、楓を一匹の敵としか認識していなかった。


 ……あの二人を置いてきて正解だったな。


 楓の経験則上、殺気を放っていない人間ほど、その実力は確かなものになる。


 目の前に立つ死神から殺意は感じ取れるものの、その薄さは今まででダントツだった。つまり、そういう事なのだろう、と楓は読んでいた。


「お前に一つ、頼みがある」

「まずは私の質問に答えて。あなたは誰?」

「……そうだな。今は同業者、とだけ答えて──」


 言いかけた言葉は虚しくも喉付近で行き場を失ってしまった。


「まぁ、その動きは間違いではない。むしろ百点、パーフェクトだ」

「不思議な人……」


 死神のナイフによる一閃を最低限の動きで躱す。しかし、死神の攻撃がその一撃で止むはずもなく、容赦のない連撃はやがて楓の首を掠めた。しかし──。




 手を抜いてる……のか?


 楓は目の前の死神の動きに不自然さを覚えていた。


 ……あまりに動きが遅い。本当にコイツが死神か?


 目の前でナイフを振るう少女は「死神」という異名を持つ本物の「殺しの天才」だ。しかし、目の前の少女の動きはそんな天才のそれではない。

 それが、死神の動きを見た楓の率直な感想だった。


「……いや、俺を警戒しているのか?」


 森の静けさが二人を包み込む。木々の香りが鼻孔をくすぐり、自然を肌で感じる。


「……キミから殺意が感じ取れない。殺意だけじゃない。キミの感情が一切読めない。……本当に不思議な人」

「安心しろ。今、ここにいる俺はお前より遥かに弱い。お前がその気になれば瞬殺されるだろうな」

「……本当に弱い人はそんな事言わない」

「じゃあ諦めるのか? いや、諦めてくれるのか?」

「まさか。逃げられないよ」


 死神はもう一本のナイフを懐から取り出して左手に装備する。そしてそのまま閃光は再度楓を襲う。しかし、逆に楓はそれを往なして間合いを詰める。


 楓の拳が空を切り裂き死神の咄嗟のガードを打ち砕く。その衝撃で二人のロングコートが風で舞い上がり、夜空を泳ぐ翼のように広がった。


「それにキミが私に話しかける前、粒上の何かを飲み込んでいるのを見た。成分は知らないけど感情をコントロールする効果でもあるのかな……。であれば戦況は大きく変わる。まやかしでしかない」

「……驚いた。死神は後ろにも目があったのか」

「否定、しないんだ?」

「違う、って言ったところで信じないだろ?」

「うん、相変わらず殺意は読めないけど動きはまるで素人」

「言うね」


 死神の動きは次第に速く、そして鋭くなってナイフの軌跡が光のように閃いた。一気に戦況は変化し、やがて死神のナイフが楓の肩、横腹、頬といった順に次々と掠めてゆく。先程までの動きとは比較にならない速さの閃光。


 想像の一歩先を行く強さだ……。


 横腹の傷から流れる大量の血が手を真っ赤に染める。深手を負った楓は、死神にとって赤子も同然だった。楓は動きが鈍くなった瞬間を見抜かれ、死神の蹴りを真正面から受け止める。


「最後に聞かせて。キミは何者?」


 一本の大木に背を預けて座り込む楓にナイフを突きつけて尋ねる死神。


「俺の顔に似た人物を知らないか?」

「……キミに似た人?」

「思い出せ。記憶を探れ。あの日のことを。今から十年前、お前は確実に俺に似た人物と会っている」

「…………あ」


 死神はしばらく楓の顔をジッと見つめていたが、やがて一つの答えに辿り着いたようで驚愕の眼差しを向けた。


「もしかして私を殺しに来たのかな」

「ああ。……ああ?」


 その通りだ、と頷こうとした楓だったが、思っていた反応とは別の反応が返ってきたことに焦り色を浮かべる。


「何でそうなるんだよ」

「……キミの父親は私が殺した。いや、祖父なのかな。流石にそこまでは分からないけど」


 まさか本当に思い出すと予想していなかった楓は、一瞬驚愕の表情を浮かべる。


「聞いておいて言うのも何だが……。十年前に殺した親父の顔を覚えてるなんてな」

「強かったから覚えていただけ。流石に全員は覚えてない」 

「……そうか。で、何でお前が殺される、って思ったのかは知らないが俺がお前に接触した理由は最初に言った。お前に頼みがあるんだ」

「……やっぱり不思議な人。でも分かった。聞くだけ聞く。少し興味が湧いてきたから。でも破綻した頼みなら即刻首を落とす」


 相変わらず血も涙もない事を平気でサラッと溢す少女だ、と内心で漏らしつつ、楓は自身の作戦を死神に告げた。


「殺し屋の解体を手伝ってほしい」


──────────────────────────────

死神、綾柳、楓のイラストを池上さんと井上さんにデザインして頂きました!

この場をお借りしてお礼申し上げます。

挿絵(By みてみん)挿絵(By みてみん)

最後までお読み頂きありがとうございます!

これからも頑張って続きを書いていきますので、ブクマやこの下の星でポイントをつけて応援して頂けるととても嬉しいです。

どうぞ、よろしくお願いします!

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