第二章 第16話 『書斎にて』
『泰然自若。吾輩をして聞くに耐えぬ』
薄暗い、大きな書斎のような部屋。もはや図書館のような出で立ちの空間で、数多の本が飛んでいる。
その数は、数千、いや、数万はくだらないだろう。
各々が自らの意思を持つかのように、その様子は千差万別である。
本棚から本棚へと飛んでいくもの、宙を舞い続けるもの、栞を交換しているものもいる。
静謐な部屋の中、聞こえるのは本が羽ばたく音のみ。
「─────」
「───。──────」
「──。────」
否、よく耳を澄ませば、本同士の会話が聞こえてくる。
しかし、会話は特定の話題で持ち切りだ。
病のように、その話は本から本へ広がってゆく。
表情の無い本であるが、話題の衝撃は大きく、感情の揺れは手に取るように分かる。
「────。──」
「────────」
「─────。─────」
陽の光と言うものはここには存在しない。
ただ微かに、部屋全体が淡く輝いている。
「─────」
「─────。─────」
「───────」
埃っぽい室内には、人の気配は全くない。
まさに、本の楽園と言ったところだろうか。
「─────!」
「────────!!」
すると次の瞬間、唐突に室内の光が輝きを増し───
「隔靴掻痒。疾く、失せよ」
その一言で、全ての本があるべき場所に瞬時に戻る。
ピタリと、部屋の音が止み、静寂が訪れる。
先程まで本が動いていたということが信じられない程に、室内には本達の活動の名残を感じない。
そんな部屋の中、瞬きの間に現れた男が椅子に座っている。
男は立ち上がり、傍の棚にあった分厚い一冊の本を手に取った。そのままそれを開き、パラパラと捲っていく。
数秒後間、男は紙面を眺める。
しかし間もなく本を閉じ、男は再び椅子に座る。
「ふぅ………………」
そして、目を閉じ、嘆息をついた。
「「「────────!!」」」
それと同時に、棚の中の本が震え出す。
一斉に、全て。
男に本棚の様子を気にする素振りは無い。
足を組み、その銀色の眼をゆっくりと開く。
「怒髪衝天。──偽善を蓑にしたしゃつばらよ。己等の死は必定なり」
そう残し、男は再び世界に溶けていったのだった。
蛇足であるのだが、彼が閲覧していた本の表題には『ティア・███』と記されていた。
どうも!一筆牡蠣です!
これにて第二章の〆となります!いかがだったでしょうか?
来たる第三章、第四章と、規模はますます大きくなって参ります。
実は、この作品は第四章を描いてみたくて始めた作品でもあります。(もちろん、第四章以降も続きますが!)
それまで、楽しみにして頂けると幸いです。
ユーガの冒険はまだまだ続きます!
ともあれ、ここまで読んでいただいた貴方に、最大級の感謝を!今後とも、応援よろしくお願いします!




