表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/69

職業【遊ぶ者】宇宙を味方につける

魔族にはスライムやゴブリンの他に、鬼やゾンビと言った人の見た目をした者もいます。

「こ、ここは!」


 気が付くと、僕は第一階層の洞窟の中にいた。

 目の前には大きなモンスター。僕の五倍以上はある大きな体、全身青い艶のある綺麗な肌、何処を見ているのか分からない目線。


「おぉ、大スライム」

「……えっ?」


 それと、小さな少女がいた。

 少女の頭には黒く染まった二本の角が生えており、とても長い。髪は青白く身長は低い、そして顔は幼くて可愛らしい。少女は白のローブを羽織っており、おとぎ話に出てくる魔法使いのようだった。

 少女はこちらに気付いたのか、ゆっくりと歩み寄ってくる。僕は攻撃をされるのかと警戒をしたが、武器が取りだせず焦る。


「え、ちょっとまって! まだ僕は――」

「【衛星】」


 少女がそう言うと僕と少女の体からカラフルな粒子が舞った。

 僕は訳が分からず混乱していたが、それに見とれているとなんだか平常心を保てた。


「これで私とカリナは一心同体。私はカリナに干渉できないし、カリナは私に干渉できない」

「ど、どうして僕の名前を……」


 少女はその小さな手をこちらに差し出す、握手を求めているのだろう。

 私はしぶしぶその握手に応答しようとした。しかし、その手を掴むことなくすり抜けてしまった。


「えっ……?」

「このスキルはお互いに敵対していない人にしか反映されない」

「それは……」

「やっぱり噂通りだ」


 そんなことを話していると、大スライムが怒ったようにこちらへにじり寄ってきた。

 僕は焦ると少女の体を掴もうと必死にもがく。


「あ、危ないよ! 逃げて、逃げて! このスライム僕には攻撃しないから!」

「【シリウス】」


 少女の手元には僕の身長の半分ほどの大きさの球が青いエフェクトと共に現れた。その球は少しずつ浮かび上がると、淡い光を放ち出す。

 この演出はインベントリからアイテムを取り出すときに出るものだ。しかしこんなアイテム、僕は見たことがない。


「目を閉じて」

「え、うん……」


 僕はそれを聞くと、反射的にぎゅっと目を瞑る。

 その瞬間、目を閉じていても分かるような光を感じた。


「っ!!!」


 瞼越しでも分かる光量に怯んでしまう。

 時間が経ち、熱が冷めたと感じた時、腕を握られた。ハっと目を開けるとそこには僕の腕を握る少女。

 あやうく腕を引こうとしたが、少女の熱い目線に目を奪われ正気に戻った。


「これ、持ってて」

「……これは?」

「【アルデバラン】」

「え……あるで……?」

「危ないと思ったら取り出して」


 そういうとインベントリに新たにアイテムが追加された。

 そう言えばと思い大スライムのいた方に目を向ける。

 反対に少女は僕の腕を引きながら、ゆっくりと洞窟の入り口の扉を開ける。


「……っ」

「大スライムは倒した。それより、見て」


 主の消えた洞窟から少女は出ると、そっと指を差した。

 そこにはあまたの人数が戦いを始めた、いわば乱戦状態だった。


「ど、どうしてこんなに人がいるの!? だって、プレイヤーはバラバラに配置されるんじゃ……」

「私たちはボスの部屋にスポーンした」

「そ、そうだね」

「でもカリナがもし第四階層や第五階層のボスの部屋にスポーンしたらどうだった?」

「そ、それは……」


 私には【スライム支配】があったため大スライムは一人で倒すことができる。持っていなかったとしても今のレベルだったら普通に倒せるだろう。

 しかし他の階層ではどうだろう。答えは……


「倒せない」

「なんでそう思ったの? それとこれとは……」

「つまり、カリナは第一階層がふさわしいとされた」

「……それって、レベルによって何階層にスポーンするか決まっているってこと?」

「私のレベルは高い、だから多分それだけじゃない。スキルへの依存率とか武器の攻撃力とかも計算の内かも。私だってスキルがなきゃ大スライムは倒せない」

「このゲームは始まってまもない、だから初心者が多い。そんな初心者プレイヤーがみんな第一階層集まってしまったからこんなに人が多いってこと……?」

「けどこれは私の憶測、【衛星】」


 すると再度二人の周囲にカラフルな粒子が舞いだした。

 おそらく【衛星】の効果はフレンドリーファイアをオフにするという効果だと思われる。それに追加で少女の攻撃力を上げたり、技を模倣することはできなさそうだ。互いが互いに干渉することができなくなったということだろう。

 スキル名が【衛生】や【シリウス】となんだか宇宙を彷彿とさせる。しかしなんだか既視感がある……

 そんなとき、レッカとの会話を思い出した。


『【勇者】……かっこいいね!』


『そう! かっこいい! トロイさんはとってもかっこいいのに対して、マゼランはとっても可愛い!』


「もしかして……」

「カリナっ!」


 その瞬間、腕を剣で切られた。


「だ、だれ!」

「戦いに巻き込まれた、【プロキオン】」


 亜人族のプレイヤーが四人、こちらに向かってくるのが分かった。幸いなことに【斬撃耐性】と【我慢】を持っていたおかげでダメージは無い。

 少女は今度は白い球を設置すると、こっちをじっと見た。渡されたアイテムを出せということだと理解すると、僕はインベントリからそのアイテムを取り出す。


「で、でか、あっつい!!」


 脈を打つように赤く光る球がエフェクトを纏って現れた。案の定それも少女と同じくらい大きかった。僕は身の危険を感じ、すぐさま球から離れる。

 すると、いつの間にか少女は高く飛び上がっていた。その手には少女と同じ長さの黒い棍棒が握られていた。

 岩でできた大きな武器を振り回す少女の姿に、開いた口が塞がらない。


「っ!! 重い……」


 その威力は地面を揺らし、辺りのプレイヤーの動きを封じた。

 今だ! そう感じた瞬間、体は動いていた。


「【毒壇場】!」


 毒を纏った状態でトドメのナイフで切れば強いダメージを与えることができる。

 しかし動けるようになった亜人族達は、皆少女を狙っているようだった。ダメージを受けたのもつかの間、皆立ち上がると、各々が重そうな武器を少女の体に容赦なく振り下ろす。


「どういうことだ!」

「おかしい、こいつ!」

「透明だと!?」


 しかし、それらの武器は少女の体をすり抜けた。

 棍棒をもう一度振り回すと、プレイヤーたちはダメージを受けたように吹き飛んでいく。


「当たってない……?」


 だけど、僕の目には棍棒は空振りしたように見えた。

 少女の棍棒は宙に撃ったのに、四人は直接触れたかのような衝撃を食らっていた。


「カリナにも教えておくよ」

「そのスキル……」

「【プロキオン】の周りでは私の体はここに無い」

「……え? ど、どういうこと? だって……」

「実際には多分左に5歩くらいの位置にある。ほら」


 そう言って少女は棍棒で地面を叩く。すると、私から見て少女から少し離れた右の位置で砂ぼこりが立っていた。


「そしてもう一つ、【アルデバラン】は周囲の力を蓄積する」


 少女は赤い球の付近まで歩く。四人のプレイヤーはタフなようで、ゆっくちと立ち上がる。


「それは一定時間、それか私が触れた瞬間に放射する」

「っ……!!!」


 少女の手がその球に触れた瞬間、球は強く光り震えだし、赤い光線が周囲に何本も広がった。

 それは先ほどのプレイヤーのみならず、辺り一帯のプレイヤーにダメージを与え、何人かはそのまま倒されていった。


「おい! あれ!」

「二位のやつじゃねぇか! なんでこんなところに!」


 辺りから声を掛けられているのが分かる。

 そうか、やはり私の目の前にいるのは……


「カリナが星を置いて、私が力を放出した。だかは今倒したポイントは平等に分けられる」

「二位……」

「カリナ? そうか……どうしてずっと不思議そうにしているのか分からなかったけど、私のこと知らなかったのか」


 そう言うと少女は棍棒をインベントリにしまい上目遣いをした。


「私は【天文学者】のマゼラン。よろしく」

しかし、これは流石に人が多すぎる……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ