職業【略奪者】猫又メイドとの戦闘を始める
これはニーナ目線。
「一度正面から戦ってみたい」
俺はそう言うと愛用の剣を取り出して走る。
『アンノウン』のメンバーはおそらく4人。キメラの上級銃士、ドッペルゲンガーの錬金術師、魔人の略奪者、人間の遊ぶ者。
正直個人的にこいつらと戦えと言われたら絶対に戦いたくないが、チームのリーダーになってしまったものは仕方がない。どうにかしてフラムだけでも倒さねばならない。
フラムは大スライムを召喚すると、後衛の二人が数を増やした。先ほどと同じ18体。またしてもチームにどよめきが走る。
大スライムを一瞬で処理しなければならない。俺はフラムの対処に集中したいため、魔法を使う彼らには大スライムに手間をかけさせたくない。
生憎素早さに基礎ポイントを振っているため速く走ることができる、しかしそれはフラムほどではない。
「遅すぎっ!」
ほれやっぱ来た、アントの銃弾が遅れてこっちに来る。おそらくフラムは独断で動いているのだろう、さっきから護衛の女二人も前線には出ずに見守っている。
それならば一度フラムを倒せば体制が崩れるかもしれない。こちらにはまだ見せていない技もある。
「【猫騙し】かみち――」
「見えてる!」
「【神契り】」
手元にあった紙を短剣でやぶられた、しかし本命はこっちではない。
大スライムは順当に姿を消す。
「は!? なんで!?」
「足元」
「お前!」
地面に本命の紙を置いてあった、それをフラムが踏んで破いてしまったため【神契り】は発動した。
一旦大スライムを退いた、アントの攻撃が魔法攻撃の相殺へと切り替わる、一対一なら負ける気がしない。
下を向いたフラムの頭に剣を刺す、逃げられないよう体の上へと魔法を先に打っておく。
「【爆発】」
「あまいっ」
そう言うとフラムの体は一瞬にして消えた。と思った瞬間そこに一匹のスライム。
「弱体化だな」
「そりゃ偽物だ」
後ろから声が聞こえ剣を後ろに振る。
しかし後ろには誰もいない。しまった、このスライムが本命だ!
俺は全力で体を後ろへとやるが、短剣が体を掠る。途端に体が動かせなくなる。
「負の連鎖だっ!」
「猫騙し」
「そこっ!」
【猫騙し】は相手のいる位置から真後ろへと回り込むことができる。しかし、スキルの詠唱と淡泊なよけ方ですぐに対策されるのがオチ。
しかし、フラムにはこれが効く。
俺は動けるようになった瞬間フラムの胴に剣を突き刺す。
「発動してない!」
「だから言ったろ? 猫騙しだ」
俺は間髪入れず剣を振るが素早く避けられる。
剣を構えるとフラムはこっちをじっと見つめた、おそらく俺が待ちの姿勢であることがバレた。しかしこれは予想済み。
俺は剣を投げ捨てると、インベントリから紙を取り出すし目の前に突き出す。
「それだけはっ! やめろ!」
フラムが短剣を持って迫ってきた。予想通り。紙を手から離すと、短剣が俺の胸を貫いた。
「嘘だろ!?」
「フラム! 逃げろ!」
アントの叫ぶ声が聞こえるが、彼女の耳には届かないのだろう。
フラムは短剣を抜くと同時に俺の方をじっと見つめた。俺の体は力なく倒れていく。
「【黄泉返り】」
途端にフラムが胸を押さえて倒れた。
「フラム!」
誰かしらの声が聞こえる。俺は立ち上がるとその場に落ちていた『フラム』と書かれた紙を拾い上げる。
【神契り】の効果は紙に書いた対象を破綻させる。書かれた内容がスキルや魔法、攻撃ならその威力を9割減らす。書かれた内容がプレイヤーであれば、一時的に戦闘不能にさせる。
その紙を、フラムの動かなくなった手を使って破く。
「【神契り】」
黄泉返り、読み返り、蘇り。




