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職業【遊ぶ者】スライムさん、いただきます

味は現実にある近しいものの味がします。

「……ということだ」

「フラムが!」

「狙われてる!?」


 アントは帰って来るや否や僕たちの元へと来て事情を説明してくれた。

 第五階層の初期リスポーン地点から少し離れた孤島、そこで僕たちはスキル獲得に向けて努力していた。


「ところでなにをしている……?」

「HPドレインって技があるでしょ?」

「それを使ったカウンター技の取得に励んでるってわけ!」


 僕は再度スライムにかみつくとレッカはスライムに技を命令する。

 ダメージを受けつつもスライムに対してずっと噛み続ける。



 スキル

【狂科学者 獲得】

 与えた累計ダメージ数+HP



「ほらほら! いいのきたよ!」

「カリナもこれでマッドサイエンティスト!」


 ハイタッチをするとアントは呆れた表情でため息をついた。

 途端にレッカが焦った様子でアントの方へ振りかえる。


「というかどうするのフラムの件!」

「今回の戦いは数の多い対人戦となる」

「つまりするべきことは対人用のスキルや武器を用意することだね」

「そうだ。対人で大切なことは三つ、相手の動きをある程度予測する。相手の意表を突く。最後に相手の嫌がることをするだ」

「その考え、だいぶFPSによってないかなアント君ー?」

「異論があるなら受け付けるぞ」


 そう言うとレッカは急に真顔となり僕の影へと隠れた。煽るなら最後までちゃんとスタンスを守ってほしい……

 たしかに僕もFPSをしたことがあるからこそ、FPSに寄った考え方だと思う。しかし、こちらの遠距離攻撃は強いし状態異常などの痛い所を突く攻撃もある。

 彼の言うとおりに作戦を立てれば割とうまく行くかもしれない。


「相手の嫌がることをするねぇ、アントは考えてるの」

「遠距離からの攻撃だな。避けることができないかつチクチクとダメージを稼げば、しびれを切らして特攻するだろう」

「レッカは何か考えてるの……?」

「相手が嫌がることをだよね」


 そう言うとレッカはうーんと唸る。


「暴言……?」

「そういうことを聞いてるんじゃない」

「いやじゃん」

「いやだが……」


 アントはこちらに目線を向けると顎でしゃくった、僕も考えろと言うことだろう。

 しかし、今まであまり人を怒らせようとしたことなど無いため簡単には思い浮かばない。


「暴力……?」

「思想が同じじゃないか」

「いやじゃん」

「いやだが……」


 この流れ、さっきもした気がする。

 アントはインベントリから一つのナイフを取り出すとそれを目の前で振る。


「例えば、遊び人なら状態異常を常に相手にかけさせるとか。錬金術師なら強そうな武器をちらつかせるとか」

「状態異常……」

「強そうな武器……」


 二人して顎に手を付いて考え始める。


「残念ながら遠距離から相手の動きを止める魔法を俺は持っていない」

「私、持ってるぜ」


 その瞬間、三人が一斉に声のした方を向いた。


「げっ」

「『げ』とはどういうことだ、アントさんよ」

「いや、そうだな。強いて言うなら俺は用事を――」

「まてまてまてまて」


 フラムだ、正真正銘のフラムだ。さっき見たフラムではない、オーラのまとっていない普通のフラムがそこにはいた。

 彼女はアントの首根っこをつまんで話し出す。


「すまんかった、一応寝たから体力は十分……だと思う。それよりも大事なことが起きてるらしいな」

「そうだよフラム! 狙われてるよ」

「それに向けた作戦会議中だ、あんたからはなにかあるか」


 フラムはアントを降ろし画面を開くと、少し考えた後親指を立てた。


「まぁ、なんとかなる!」

「私、不安になってきたよ」

「俺達三人は作戦会議をする。あんたは寝とけ」

「どういうことだよ! 私も混ぜろ!」


 どうやら今日は長い夜になりそうだ。




スパイスの効いた舌を焼くような味がしました。

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