職業【遊ぶ者】心の中では夜行性でした
PvPはプレイヤー同士でできる公式の戦闘ですが、特別なルールは特にありません。とにかく倒しましょう。
「それでそれで! みんな何回勝ったの!?」
「8回かな……」
「私は12回っ!」
「16連勝」
第四階層の広野の上で、僕たちは座って話していた。小さな風が気持ちよく、なんだか居心地がいい。
「そう言えばアント、職業進化したんだよね?」
「そ、そうなの!? 教えて教えて!」
「先導者のおかげだ」
「うるせぇ、私に話しかけるな」
ここに集まってからというもの、なぜかフラムとアントの仲があまり良くない。と言うかフラムが一方的にアントを嫌っている感じがする。何かあったのだろうか。
「【上位銃士】、条件が軽かった」
「どうして条件知ってるの?」
「勘。と言いたいが実は面白いものを見つけてな」
アントは画面を開いて見せた。
「このゲームはAIによって作られているだろ? そのAIを模倣したAIを作ってみたんだ」
「なんだそれ?」
フラムが乗り上げて画面を覗き見る。アントがなんとなく嫌な顔をするが、当の本人は気にする様子がなさそうだ。
「つまり、その人工知能に質問すればこのゲームの仕様に近い情報をくれるってこと?」
「あぁ、といっても百発百中じゃない。だから結局は条件っぽいものをひたすらやりまくるだけだがな」
画面を閉じるとアントは立ち上がった、つられたのかフラムも立ち上がる。
「どこに行く?」
「俺は落ちる。戦い疲れた」
そう言うとアントは画面を開きボタンを進める。
しかしその手を止めるようにフラムが腕を握った。
「邪魔するな」
「来い、戦うぞ」
「歯切れの悪い奴だ」
フラムは翼を開くとアントの服を握り飛んでいった。強引すぎるフラムに僕たちはたまらず苦笑する。
「仲良さそうだね!」
「あれって……仲いいって言うのかな?」
レッカは何が面白いのか、体を翻すと赤い鳥達と戯れていた。
ちなみにレッカとの戦闘は相打ちに終わった。両方が勝利判定になりお互いにアイテムの受け渡しをしなければならなくなったが、僕たちはスルーした。
その代わり僕はいつか戦う強いモンスターの素材を、レッカからは僕に合った武器の製作をお互い約束した。
「僕はそろそろ落ちるよ……なんだか眠くなってきちゃった」
「あれ? お昼に寝たって言ってなかったっけ?」
「知ってる? レッカ、人間は夜行性じゃないんだよ」
そう言うと僕は画面を開く。
「あちゃー、そりゃ苦しいね。また今日の夜遊べる?」
「約束するよ……第四階層のボスも倒さなくちゃ」
「じゃあとりあえず明日の夜はボス討伐! ログインして待ってるね!」
ウインクをすると手を振った。そんなレッカに手を振り返し僕はゲームをログアウトさせた。
なんだか体に力が入らない、疲れすぎたのだろう。僕はゴーグルをつけたまま寝てしまった。
「職業進化したやつが現れたってま!?」「いまPvPで上位に食い込んでるこいつだよ!」「こいつの何が強いの?」「戦ったやつが言うには気づいたらやられてたって!」「やられてることに気付かないのか!?」




