職業【先導者】魔法使いとの戦闘を開始する
職業は転職することはできますが、元に戻すことはできません。
「……またあんたか。できれば関わりたくなかったけど」
「俺も同じだ。ただ用があって、会いに来ただけだ」
目線を合わせず声をかけると案の定返答があった。
第五階層は海の上にたくさんの小島が浮かんでいるマップ。そのなかの最南東の島は広めの戦闘に適した場所だった。
私は振り返る。そこには銃にマガジンを入れている最中の銃使い。
「そういや私もあったな、用が」
「……なんだ」
「銃を持ち出して逃げたと聞いたよ」
「その件はもう解決した」
「数時間前銃を撃ちまくってスキルを与えた」
「俺も銃の練習が出来てよかった」
厄介で、それにいちいちうざったらしい発言を残す。
短剣を抜くと同時に足に力を込めた。スキル【獰猛オオカミ】はスピードを一瞬500%上昇させる。
「切ってどうする、俺と戦いたいのか?」
私の剣はアントの胴すれすれで止まっていた。
「利用したな?」
「ギブアンドテイクだ」
アントは表情を変えずに続ける。
「レッカはドッペルゲンガーだ、何度倒してもそいつが主人格じゃなきゃ死なない。カリナは毒の体を得た、【ポイズン】によるダメージがない」
「練習台には都合が良かったな」
「ちょうどいいスキルを手に入れられた。俺だってその代わりにスキルを与えたり不利な条件を飲んだ」
「相手の知らないところで相手を利用すること、私は嫌いだ」
「先導者、あんたも俺と同じだよ」
【『アント』との戦闘を開始しますか?】
「先導者が勝ったらスキルと【先導者】の本来の強さについて教えよう」
「へー、好条件だな!」
「俺が勝てば【翼飛行】を貰う」
「それは困ったもんだ、なにせ種族ポイントを多く消費したんだからな」
何となく【翼飛行】を使い翼を出しアントから離れ着地する。銃を使う人間が不安定な空を飛んでどうするのかと気になるがまぁいい。
今はとにかく鼻につくあの男をボコボコにしてやろうかとスキルの準備を始める。
「YES」
「交渉成立!」
私は魔法陣を展開しスキルを発動すると、翼を使い5m程飛び上がる。
「これは驚いた、なんのつもりだ?」
「スキル【使役】魔族の種族スキルだ」
「【使役】は一時的にテイムモンスターに変えるだけの無能スキルだろ」
「私のテイムモンスターってことは【先導者】でスキル奪い放題って訳だ」
「大スライムが二体もいる訳は? 仮にも階層ボスだぞ?」
「さぁな、この魔法陣にでも聞いてみたらどうだ」
そう言うと魔法陣は小さくなって消えた。【純白の魔法陣】は発動したスキルをもう一度発動する効果がある。まずは体力の多い大スライムを置いて一度アントの出方を見る。
案の定アントはフルオートの銃を構えて大スライムに撃ちまくる。銃のダメージは魔法の通常攻撃扱いで一発4ダメージ程、連射速度がまぁまぁ早いためもうすぐ一体目が倒されそうだが一体を倒すのにMPが125必要。彼が基礎ポイントをMPに振っていれば1マガジンで倒しきることができるが……
「……」
アントがため息をつきマガジンを変えた。おそらくMPにはポイントを振っていない。魔法攻撃力も高くないわけでおそらくは素早さに振っているのだろう。
強い魔法をすくないMPで素早く撃つことで高火力な攻撃を、連続した属性技でのボス攻略を目途に考えてきたのだろう。そうなるとアントの攻撃は当たることを前提とした銃での攻撃。
「【草色ミツバチ】」
そう言うと『草色ミツバチ』が一体、第三階層以来の派手な登場をかました。一体目の大スライムが倒されたがまあいい、私は『モーションダガ―』に装備を変え蜂と共に攻撃を仕掛ける。『モーションダガ―』の効果は相手の動きを1秒間遅くさせることができる。プライドの高いアントには最適の武器だろう。
私は蜂が作った隙を狙い短剣を振る。
「卑怯な手を使う」
「カリナだって状態異常を使ってただろ?」
「状態異常技は優秀な技を持たない弱者の味方だ」
「カリナを弱者だと……?」
「語弊だ」
アントはとにかく銃を撃ちまくるが大きなフルオート銃じゃ対応できないのだろう、たびたび蜂や大スライムから攻撃を受けもろに短剣が入る。
短剣が入ると動きが遅くなり攻撃が当たる、その隙にまた短剣を突き立てる。負の連鎖が完成していた。
私は大きな隙を見つけるとすぐさま短剣を喉元に突き刺す。
「降参しろ」
「……」
【『アント』との戦闘に勝利しました】
画面が途端に現れる、私は翼をしまうとモンスターも全員引かせた。
【スキル【魔法使い】を習得しました】
「……は?」
「お望みのスキルだ」
そう言うとアントは拳銃を握った。
「さぁ、もう一度戦おう。先導者の本来の強さを教えてやると言っただろ?」
モンスター名のスキルは【テイム】と【支配】を合わせ持ちかつ、オプションがついて来ます。




