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職業【遊び人】勇者となる

勇者とは?

「植えてきたよ!」

「了解」


 木陰で座って休んでいたアントに声をかけると立ち上がった。


「「【挑発】」」


 すると、わらわらと蛇のモンスターが寄ってくるのが分かった。しかしそこにはスライムとイノシシが10体も眠っているのだ!

 蛇は僕を攻撃し始め麻痺の効果が効いているのが分かる。しかし罠だということに気が付けないモンスターの負けだ。


「【自爆】!」


 そう唱えると同時に周囲の蛇が砂埃と共に爆発した。

 アントは銃を構えると生き残った蛇たちに銃弾を撃ち込む。



【麻痺無効 獲得】【テイム飢餓スネーク 獲得】【爆ぜる者 獲得】



「【爆ぜる者】ってなんだ?」

「自爆の強化版だね、ダメージが5000%に強化されてるよ!」

「自爆を連発するやつなんて底が知れん……」


 モンスターのドロップ品を集めると、アントに手渡した。

 ドロップ品と言ってもそのほとんどが蛇の尻尾、こんなものを集めてどうするつもりなのだろうか?


「助かる、しかしこれで目標達成だな」

「そうだね! 1時間かからないくらい?」

「ところで、昨日0時くらいに【先導者】にあった」

「それって……フラム!? どうして?」

「錬金術師から紹介された」


 アントは体に着いたほこりや土を払うと、銃を何度か叩いた。

 中に入った砂を除去しているのだろう。なんだか悪いことをしたなと反省する。


「どうだった? いい子でしょ!」

「あいつとはウマが合わんな」


 いつもの通りの無表情でそう言う。正直アントとウマが合う人間がいるのか逆に気になってしまうが……


「ど、どうして……」

「性格が真逆、俺は計画を立ててコツコツと物事を進めたい。それに対して先導者は思い立ったが吉日、とりあえずの思想で物事を進めていく」

「た、たしかに……」


 フラムは僕に爆発の魔法をくれたり、新しいスキルゲットのチャンスを作ってくれたがいわば成り行きだ。

 彼女はアイテムはあればあるほどいいと思うタイプだし、逆にアントのインベントリは綺麗に整理されていそうだ。それこそすべてのアイテムが5の倍数になっていたりしてそう。


「なんか変な事考えてるな」

「そ、そんなことないよ!? でも、4人でチーム組んで戦えたらすごく良くない?」

「それはどうだろうか?」

「なにか懸念点でも……?」

「時に遊び人、あんたの戦闘スタイルはなんだ」


 そう言われ目を点にしてしまう。これまでの戦いを振り返ってもそのほとんどは僕の作戦ではない。


「モンスターを召喚して、投擲して自爆する……?」

「あんたは魔族に転じた方がいい」


 アントはため息をついた。何がいけなかっただろうか……


「例えばその装備している剣で戦うとか、魔法を使って遠距離から攻撃するとか、そういう型に合った戦い方はできないか?」

「でも、剣振り回すの苦手だし……魔法つかうMPも魔法攻撃力も上げられないし」

「遊び人がそんなにネガティブでどうする?」


 そういうとアントは僕の傍まで近づくと銃をしまった。

 距離が近い、真っ黒な装備に自分よりも高い身長に固唾を飲みこむ。


「職業【遊び人】こそ、このゲームを遊びつくすべきじゃないのか」

「え……?」

「すべての武器を試して、すべての魔法を唱えて、すべてのスキルを手に入れてこその遊び人じゃないのか」


 言葉が出ない。

 しかし、自然と笑みがこぼれる。


「アント、僕はいま何ができるかな……!」


 彼は久々に口角を上げた。


「もし4人でパーティを組むとする。すると俺は遠距離からの攻撃をするいわゆる【魔法使い】だ」

「攻撃方法は物騒だけどね」

「先導者は魔法で戦うがおそらく近接での攻撃がメインになるだろう、さながら【戦士】だ」

「近距離? フラムが?」

「遊び人は先導者の戦い方を見たことないだろう? 先導者の腰には短剣が仕込まれていた、あれで敵を状態異常にして中距離で魔法をたたみかける。一人で戦うにはぴったりの立ち回りだ」


 たしかに短剣を腰にしているのは知っていた。しかしそんな理由があったとは到底考えていなかった。

 フラムは僕よりもゲームが上手い、その気になれば一人でこのゲームの最強にまで上り詰めるのだろう。少し寂しくなる。


「最後に錬金術師、あいつはバッファーだ。【僧侶】と例えるのが正しいだろう」

「バッファー? 確かにドッペルゲンガーは攻撃に向いていないよね……」

「あぁ、しかし攻撃を避ける分には最強格だ。あいつの複製は主人格を変えることができる。そして遊び人、少し不思議なことを思いつかないか?」

「不思議な事?」

「第三階層のボスを倒したとき、俺たちは銃を装備した。しかし遊び人は武器の装備ができないはずだ。何故装備できた?」

「たしかに……気にしてなかった! それって……」

「職業【錬金術師】のスキルだろう。進化した職業はかなりの無茶も通すことができる」


 銃はレッカ作のオリジナル武器だった。よくよく考えれば職業が【鍛冶屋】だからと無茶を通した部分が多くある。

 何故気づけなかったのだろうと自身を悔いてしまう。しかし、それ以上にレッカの隙を覗きたくなる。


「俺達三人は勇者パーティで言うところの【魔法使い】【戦士】【僧侶】だ。しかし勇者パーティには欠けてはならない職業が空いているな」

「それって……」

「【遊び人】、あんたは【勇者】だ」

「勇者……」


 肩書きが大きすぎる、そんな大役をこの僕に成し遂げることができるだろうか……

 眉をしかめアントを見つめるが、彼の目線はじっと僕の目の奥の方を見ていて動かない。


「口角を上げた【魔法使い】が魔法で相手の弱点を突く。目を輝かせた【戦士】が相手にデバフをかけダメージを稼ぐ。体を翻す【僧侶】が味方にバフをかける」


 そう言うとアントは僕を指差した。


「心を躍らせろ【遊び人】、とどめを刺すのが【勇者】の役割だ」


 そのとき、通知を知らせる効果音が鳴り響いた。


『職業【遊ぶ者】への転職が可能となりました』

サービス開始三日後、『チーム』の結成が可能となります。

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