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職業【遊び人】スライムを埋める

第二階層の東西に位置する森の名は「フェオレの森」と「フェラテの森」です。

 ゲームにログインして時間を見るとまだ6時。


「ちょっと早すぎたな……」


 お風呂も夕飯も済ませてしまい、することもなかったためログインしたもののまだ何をしようかと言うめどが立っていない。

 なんとなくステータス欄を開くと……


「あ、アントからだ」


 アントからフレンド申請が届いていた。フレンドになってできることは、アイテムの受け渡しやステータスの共有くらい。しかしフレンドになっているというだけで何となく繋がっている感じがして嬉しい。僕はとりあえず許可する。すると、時間差で通知が来た。


『今から会えるか? 第二階層西、フェラテの森に来て欲しい』


 アントからのお誘いだ。何をするわけでもなかったし『了解!』と一言送ると第二階層まで下りた。

 初期リスポーン地点から西の森まで距離が空いているが走るのもめんどくさい。


「【テイムスライム】【耕作者】【テイム飢餓イノシシ】」


 そういうとスライムが逆さになって地面に埋まった。なんだかシュールな絵面だが彼には死んでもらう。

 僕はイノシシに跨るとスキルを唱える。


「【自爆】!!」


 スライムが光り輝き、そして爆発する。僕もイノシシも【スライム支配】のおかげでダメージを受けないがノックバックは受けたのだろう、僕の体は西の森へと一直線に進んで行く。


「【ハイジャンプ】」


 着地の瞬間に【ハイジャンプ】を使うことにより着地によるダメージを無くす。イノシシには残念ながらお陀仏してもらう。

 僕は地面に足を付けるとなくなったスライムとイノシシに対し手を合わせる。


「なにしてる」

「おぉ! ア、アントか……びっくりさせないで……」

「さっき隕石かなんかが降ってきたと思ったが遊び人だったか、とりあえず向かう」


 そう言うとアントは振り返りすたすたと歩き出した。僕も走って付いて行く。

 森の中は薄暗くじめじめとしている、第三階層よりも湿気臭い。


「どうしてここに来たの?」

「遊び人には【麻痺無効】を取ってもらおうと思ってな、素材集めのついでだ」



 アントは正面を見ながらそう言った。歩くたびに銃や防具がカチャカチャと音を立てて不気味さを引き立てる。


「取ってもらうって……【麻痺】を使うモンスターとこれから戦うことになるの?」

「いいや、職業進化の為にスキルを集めてるんだろ。少しでも役に立たないかと思ってだ」

「僕の為に……? でも一旦は転職すべきかなって思い始めたんだ」

「そうか、とうとう錬金術師もバレたか」


 珍しく笑ったアントに不思議に思いつつも歩を進め続ける。

 しかし、なんだか足が重たい……


「この森には蛇のモンスターが出る。その敵が麻痺を使う。見つけたら……遊び人?」


 不思議に思ったのかアントはこっちを振り返るや否や銃を構えて即座に発砲した。


「いる! 足元だ!」

「どこ!?」


 足元を見渡すとそこには緑の体、丸い目、長い舌に長い尻尾を持つモンスター。


 飢餓スネーク

 LV.7 HP 2/30 MP 10/10


「蛇だ!!」

「だからいるって言っただろ!」


 僕は咄嗟に足を振り上げるとその足に当たったのか蛇はエフェクトと共に消滅した。



 スキル

【麻痺耐性 Lv.1 獲得】



「まったく、ここはモンスターの巣窟。気を付けて歩け」

「ご、ごめん……」


 しかしいつの間にやられていたのだろう、全く気が付かなかった。


「ありがとう、助けてくれて」

「いいや、先に行ってなかった俺のせいだ。助けるのは当然だ」


 そう言うとアントは前髪をかき上げた。しかし左目の目がいつもと違う。


「俺には麻痺が効かない。【蛇の目】の効果だ」

「そっか、キメラだもんね」

「種族スキルを取っといてよかったが、常に麻痺に耐性があったほうが便利」


 アントは僕の方へとやってくると、右手にあるものを差し出した。


「持っとけ」

「これは……」

「銃のマガジン、MPを保存できる」


 僕はそれを受け取るとインベントリに入れた。


「どうやって使うの? これ」

「知らん」

「え……?」

「行くぞ」


 すたすたと歩き出したアントに追いつこうと僕は小走りをした。

 これにて、蛇狩りがスタートした。


アントの目は【鷹の目】と【蛇の目】のオッドアイになっており、右が黒色、左目が黄色です。

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