職業【錬金術師】正体を映す
職業【錬金術師】というとこのゲームでは有名人、攻略サイトの参考にもされてる人です。
「この動画見たことある!」
「そ、この足しか映ってないのが、私! あちゃー、まさかカリナにバレちゃうとはねー」
「申し訳ない……まさか言ってなかったとは思って無くてな」
そう言うとフラムは手を合わせて謝った。
僕たちは装備屋の中にある小さな休憩スペースで話していた。
「というか、僕のこと騙してたわけ……?」
「それは……そうだけどぉ? 【錬金術師】って言ったらバレるかなーって思って……ファンとかじゃなく友達の仲でいたかったんだもん!」
「カリナ、幻滅したか?」
「そんなことない! すごいことだよ!」
レッカは頬を赤く染めて頭を掻いた。どうやらレッカはベータ版、いわゆる試作品のプレイを動画投稿サイトにあげていた人気プレイヤーだそうだ。
職業【錬金術師】はこのゲームにおいていまだ一人しかいない、特別な職業だそう。
「ところでなんだけどさ……」
「なぁに?」
「さっきからレッカの周りでふよふよ飛んでるその小鳥はなに?」
レッカの頭上から首物にかけて三匹の赤く小さな鳥がせわしなく飛んでいる。
しかしレッカは気にせず様子はなくむしろ彼女になついてるくらいだ。
「あぁ、これね? ところでこの動画、どうやって撮ったか分かる?」
「そう言えば三人称してんだよな」
「カメラでもおいてたの?」
「のんのん! それがこの小鳥たち。 視界を録画することができるんだ!」
肩に乗った小さな小鳥にはアホ毛が一本生えていた。愛らしくてかわいい、しかし触れるとすぐに死んでしまいそうで怖くなる。
「そっか、レッカは錬金術師なんだね」
「カリナは全然驚かないな」
「どうして? 友達であることに変わりはないでしょ?」
「いいか? 職業進化ってのはものすごい事なんだぞ?」
フラムは目をつむって説明を始める。
「そもそも、このゲームにおいて職業を変える方法は三つ、転職、職業進化、転生だ」
「転職と職業進化は別物なんだね」
「転職ってのは要はデメリットなしで新しい職業につくこと。魔法使いなら転職で魔法剣士、僧侶、テイマーとか銃使いとか」
「種類がいっぱいあるんだね」
「そしてその職業である一定の条件を達成すると行えるのが職業進化。勇者、賢者、預言者、独裁者、万能の天才とかとか……」
「僕は何に慣れるかな!?」
そう言うと二人は静かに口をつむった。
僕はその空気感を感じ取りなんとなく苦笑する。
「まぁ進化を目標に頑張るのもいいんじゃない!」
「そうだな、とにかくプレイあるのみだな!」
お茶を濁すとはこういうことなのだろうか、儚い気分になりながらもいつか報いてやろうと静かに闘志を燃やす。
「そう言えば、カリナ! フレンドになっとこうぜ!」
効果音と共にステータス欄が開いた。僕はためらうことなく許可する。
「じゃあ私も! 二人共! いいよね?」
「え、逆にいいのか……?」
「いいのいいの! 私たちただの友達でしょ」
「涙が出てきそうだ……」
そう言うとレッカからも通知が来た。これも許可しておく。
「それで、二人はこれからどうする? 私はそろそろ眠いかも……」
「そりゃスキル使いまくってたからね……僕も落ちようかな?」
「じゃあ今日の夜、また会おうぜ! 目標決めて魔族としての名を轟かせる……」
フラムは声を出し笑う。不気味な笑みに僕たちは若干引きつつも、いい仲間ができたなと途端に嬉しくなってしまった。
レッカは貫徹してたそう……




