職業【銃使い】己を語り友を知る
スキル【鏡像】は相手の動きを真似するため、引き金を引かなければ負けることは無かったが、勝つこともありませんでした。
「降参」
彼は木から降りると両手を上げた。それにつられてレッカの分身体が消える。
「分かればいいのだ、分かれば!」
「偉そうな態度……」
「君の銃を作ってやったんだよ? とりあえず、持ち主の名前書くから一旦返してねー」
レッカは男から銃を受け取ると銃をまじまじと見つめた。
傷はないかとボソッと呟くのが聞こえた。
「そっちは」
「僕……カリナ、職業【遊び人】の人間」
「ちなみに私はドッペルゲンガー! 【鍛冶屋】だよ」
「鍛冶屋……ね?」
「ふーん」と鼻を鳴らしたアントの表情は無機質だ。
レッカは銃を返すと眉間にしわを寄せた。
「俺はアント、職業【銃使い】のキメラ……一応動物種だ」
「キメラ……?」
「なんだ?」
「とてもそうには見えないけど……」
「俺の目は鷹の視力を持つ、それにこれはオオカミの尻尾だ」
黒髪のいたって普通の美少年、僕とそう変わらない身長だが銃を持つと一気に身が引きしまる。装備はおそらく耐遠距離用、さながら防弾服だ。目は普通に見えるが、彼の言う通りお尻にはもふもふの毛が生えた尻尾があった。抱き着きたい意欲をぐっとこらえる。
「なにも虎の爪に蛇の尻尾を持つものだけをキメラと呼ぶわけじゃない。一つの体に複数の遺伝子が組み込まれていればそれは立派なキメラ」
「……」
「なんだ」
「もしかしてアントくん、リアルで人と話す機会少ないでしょ?」
「少なくて何が悪い」
「それは、まぁ別に……?」
レッカは目線を泳がせた、あからさまな態度をとるレッカに笑ってしまう。
「ところで、どうしてクエスト詐欺なんてしたの?」
「別に意図はほぼ無い。銃の試し打ち」
そういうと彼は「はい」っとアイテムを渡した。見たことがある、第二階層ボスのドロップ品だ。しかしレッカは受け取ることは無くそのまま突き返した。
「もうすでに貰ってる」
「カリナか……しかしそれではケジメがつかん」
「盗んでおいてケジメを語るー?」
「悪かったな」
表情を変えずに淡々と謝る姿にレッカは心が折れたのかため息をつく。
「とりあえずこの件はおしまい! これから私はカリナとデートの約束があるの」
「どこへいく」
「私たちの仲を引き裂くなんて絶対許さないからね」
レッカが僕に抱き着いてきた。猫のように毛を立てている、ように見えた。
威嚇をするレッカにアントは首をかしげる。
「そうか、カリナは女だったか……」
「な、なに……」
「なにもない。ただ、邪魔をしない程度に手伝おうと思ったが」
銃を腰に据えると、腕を伸ばして声を上げた。
「カリナ、どうする」
「正直第三階層の敵は僕には厳しい……」
「お前は」
「私は……第三階層のボスを一緒に倒してくれるって言うなら話は変わる」
「【鍛冶屋】は攻撃に自信が無いんだな」
「戦うことが仕事じゃないんですー!」
「とりあえず魔法屋にいくぞ」
アントは振り向くとそそくさと歩いて行った。
「レッカ、付いて行こ」
「昨日の敵は今日の友……ってことだね」
「仲良さそうじゃん」
「ま、私にかかればどんな敵だって明日には友だよ」
レッカは赤い髪を揺らして笑った。よかった、彼女はオリジナルの彼女だ。
【鍛冶屋】……【鍛冶屋】ねぇ……




