職業【先導者】スキルを得る
唯一無二の職業を得れますが、かぶることだってあります。ご了承ください。
スキル取得
【剣士】【物理半減】【魔獣致死】【魔獣半減】【統御飢餓イノシシ】【要塞】
合計六種類のスキルを取得できた、そんなカリナは現在イノシシの群れに囲まれていた。しかし当の本人はイノシシのことなど眼中になく、取得したスキルの概要を見ていたのだった。
「剣士」は剣を使っているときに攻撃力が上がるそうだ。また「物理半減」は「物理耐性」の進化のようだ、文字の通り物理攻撃を半減してくれる。
少し前に「スライム無効」というスキルを取得したことから察するに、防御系のスキルの進化順は『耐性』→『半減』→『無効』だろうと考えた。
「魔獣致死」「魔獣半減」はともに「特攻」「耐性」の進化版で魔獣に強くなれた。攻撃系のスキルの進化は『特攻』→『致死』らしいが、その上はあるのだろうか? もしあれば例えば「粘性之王」のように考えるだけで倒せるスキルだろう。
「攻撃を無効化するスキルと『粘性之王』みたいに絶対に倒すスキルを同時に発動したら、どうなるんだろう……」
彼女は頭を捻って考えるが、今持っているスキルだけでは検証できない。試すのは後回しとなるのだった。
スキルの確認に戻ると、「要塞」は「石の上にも三年」が進化したらしく、さらに防御力が上がっていた。
「統御飢餓イノシシ」は「粘性之王」と内容は同じだ。当然、「飢餓イノシシ」を召喚することも可能だ、召喚は同時に五体まで可能だ。現在はこのスキルを使って集まってくるイノシシたちを自身に攻撃するように命令していた。
こんなに簡単に6つもスキルを手にしていいものなのだろうかとカリナは不安になる。それはレッカが、スキルは普通一ヶ月に一度手に入れれるか入れられない程度のレア度だと教えてくれたにも関わらず、ぽんぽんと量産してしまっているからだ。
しかし、スキルをどんどん手に入れたところで、自分の技量が上がることはない。それを彼女は分かっているため驕ったりはしなかった。
逆にいえば自分がどの程度の強さなのかをしっかりと理解している。
そしてそろそろ第二階層のボスに挑んでもいいのではないかと考えていた頃だった。
「お、秋? 秋じゃん!!」
「秋……あれ? 本名!?」
振り返ると、そこには真っ赤で鋭く尖った角、灰のような色をした長髪、力を感じる眼光、口元から除く鋭い牙。
今にも人を襲いそうな魔獣の女性が、晴れた笑顔をしてそこに立っていた。
「やっぱり、秋だろ! お疲れ様、見た目が現実とほとんど同じだから気づいたよ!」
「もしかして、真央?」
「当ったりぃ! どうだ、かっこいいだろ!?」
佐田真央、このゲームを僕におすすめした張本人だ。
彼女とは色々なことで競うことが多かった。今回もそれの一貫である。
本来であれば明日の夜集合して遊ぼうという話なのだったので、ここで会えたのは偶然であった。
「でも、その名前は禁句な! ここでは私はフラムだ、フラム様と呼びな!!」
「いい名前だね! それを言うなら僕はカリナだよ」
「ふーん、やっぱり秋はネーミングセンスが絶望的何だな」
「ど、どういうこと!」
フラムは破顔大笑した。
そんなに笑わなくても、とカリナは思う。しかしフラムとしてはここで友人に会えたことに嬉しさが溢れてしまったのだ。
フラムは一通り笑い終えると、自慢をするようにステータスを見せつける。
「私のステータス見るか!? 結構鍛えたんだぜ!!」
「お、おぉ……!」
問答無用で見せつけられたステータスはどれもカリナにとっては衝撃的な数値だった。
それもそのはず、カリナはどれだけスキルを手に入れたところでHP以外のすべてのステータスが1だったためだ。
二桁あることすら彼女にとっては素晴らしいことなのだ。カリナはすごいすごい! と終始褒め称えており、フラムとしてはここまで褒められるとは思っておらず、照れ笑いが込み上げてきていた。
「それで、フラムの職業は何だったの?」
「それがな、聞いてくれよ!! 私の職業【先導者】を!」
フラムが言うには、職業【先導者】は他のプレイヤーやモンスターのスキルを複製するスキルだそう。例えば僕のスキルである「剣士」を複製して自分のスキルとして獲得することができるらしい。
しかし、デメリットとして、自然獲得系のスキルが得られないらしい。僕のスキルとは逆だと内心で驚く。
まさかフラムも自分のスキルに悩まされていたとは、まさに類は友を呼ぶ。
「しかもな、この職業。複製するときに相手の承諾が必要なんだよ! スキルってのはその人の主力になるんだから、そうやすやすと承認なんかできねぇよな」
「うーん、確かに奪うわけじゃなくとも、相手に同じスキルが渡ったら敵が強くなるわけだからね」
「だろ!? 唯一無二がこのゲームの魅力なのに、私の唯一無二は複製だぜ? そりゃねぇだろ……」
「そっか……とりあえず、僕のスキルでも複製する?」
「え……いいのか!?」
カリナはステータスを見せる。
カリナ
Lv.9
スキル
【素寒貧】【七転び八起き】【歩耐性】【積年の恨み】【練達】【無呼吸耐性】【不動】【粘性之王】【常連】【耕作】【剣士】【物理半減】【魔獣致死】【魔獣半減】【統御飢餓イノシシ】【要塞】
「お、多くねぇか!? いやこれ多いよな! これどういうことだ!」
「まぁね、職業がスキルを得やすくする効果だったんだよね」
「だからってこれは……こんなことが許されていいのかよ」
フラムはそう言うと苦笑した。
彼女は生粋の負けず嫌いなのだ、だからこそカリナが大量のスキルを持っていることに対して羨望の念を抱いたのだ。
こうなってしまえばフラムには勇往邁進の精神が宿る。
「どれが欲しい?」
「なぁ、例えば召喚したスライムとかイノシシから直接スキルを奪うことってできるのか?」
「確かに、どうなんだろう……やってみよう!」
カリナはすぐさま二体のモンスターを召喚する。スライムと飢餓イノシシだ。
二体のモンスターは普通意思を召喚者に委ねられているため自由意志を持つことができない。
しかしカリナはそれは怖くて嫌だったので、プレイヤーを襲わないという条件をつけて自由意志を抱くことを許していた。
そのため二体のモンスターはフラムを見ると、嬉しそうに擦り寄り頭を擦り付ける。撫でてほしいのだろう、フラムはにこやかな笑顔を浮かべて撫でてやる。
そのとき、スキル取得音が二人の間に響いた。
スキル取得
【スライム】【飢餓イノシシ】
「おぉ、僕のスキルとは違うっぽいね」
「いいじゃねぇか、いくら友人だからって全く同じスキルを持ってちゃ面白くねぇだろ! これならスキルも被らないし、私も得をするってもんよ!」
「そうだね! スキルの内容は?」
モンスター名がそのままスキルになっていた。その効果は【粘性之王】【統御飢餓イノシシ】とほぼ同様のものだ。
フラムもモンスターを意のままに操れるらしい。念じるだけで倒すといった効果はないが、召喚はできるらしい。また、それにプラスして、スライムやイノシシに擬態することが可能だそうだ。
「すごいね、いかにも魔族っぽい」
「だろ! いずれは魔王になるつもりだからな」
フラムはそう言うと、見せつけるように翼を広げた。
「つ、翼があるの!?」
「ふふんっ! いいだろ? 種族スキルで一番はじめに手に入れられたんだよ! 私的には翼を使わず超常現象で飛んでる方が好きなんだけどな」
翼は赤のラインに黒の膜が張っており、刺々しいデザインで翼も武器になりそうだと思えた。
そんなフラムの翼に、カリナは興奮が抑えきれずにいた。
「ね、ねぇ……」
「なんだ?」
「それ、飛べるの?」
フラムは不敵な笑みを浮かべると、自分の翼を親指で指差した。
「私、運転荒いんだ」
本来の初期装備は体:みすぼらしい服、右手:石の剣、靴:みすぼらしい靴でした。
(添削:2025/12/21)




