趣味【特になし】ゲームを始める
二年書き続けた小説が完結しひと段落着きました。そのため彼女の物語を始めてみようと思います。
ところで、趣味がないなんて何を糧に生きてきたんだろ……?
ここ三カ月間、バイトを頑張った甲斐があった。しかし満足するのはまだ早い。このゴーグルをつけるまでは!
友人に勧められなんとなく断ってきたVRMMO。世界的に人気のゲームが注目されるなか、一人レトロゲームを縛りプレイで攻略する僕のことを見かねて彼はこのゲームを勧めてくれた。余計なお世話だ。
そしてそれがおよそ三カ月前。友人の誘いを断れずなんとなく紹介動画やプレイ実況を見てみるが、率直な意見としてはなかなか面白そう。それもそのはず、ゲームの開発に人工知能を使ったらしい。このゲームの強みは職業の数がプレイ人口の数だけあること。話を聞くにはその人の『趣味』が『職業』に直結するらしい。紹介動画には『料理人』『写真家』『探検家』など様々な職業が登場し、リアルが関与するゲームなんて楽しいに決まっている!
しかし僕にはこれといった趣味は無かった。僕の平日ルーティンはと言うと学校へ行き、家に帰って動画を見て寝る。それの繰り返し。予想できる職業は『堕落者』だろうか? まずい、それだけは是が非でも避けたい。そう思いこの三ヶ月間で僕は『趣味』を増やした。
まずはバイト、これは趣味ではないが親のおこづかいだけではサービス開始までにゲームを買うことができない。それに働くことが『職業』につながればいいと考えた。他にもチェスや将棋、オセロなどのゲームをオンラインで初めてやってみた。上達するのに時間はかかったものの今となっては一般的に上手いと言われるくらいにはなったと言える。さらには普段はあえて喋らないクラスの子と話してみたり、バイトが無い日は図書館でひたすら文献を読んだり、最近は天体観測をするようになった。とはいっても知識がないため見たものは月と宵の明星だけだけれど。
このようにして趣味を増やし可能性のある『職業』を増やしていった。ゲームのサイトでの情報では『博識』や『賢者』、『万能の天才』などの職業が出ると予想され心が躍る。
そんな待ちに待ったゲームがあと三分もしないうちに始まる。初めのうちは友人とは別行動、フレンド機能が実装される二日後までに各々でレベル上げをしようとのことだった。
待ちに待ったゲームが始まる。僕は跳ねる心臓をよそにゲームで使う名前を考えていた。
本名である『天笠秋』をそのまま使うのは安直すぎる。しかしかっこつけて『✟アキ✟』というのはあまりにも痛すぎる。しかし何も思いつかない、普通なら好きな花や場所の名前からとるのだろうがそれすらも思いつかない。
そんなことをしているうちに時間はゼロ時ゼロ分。僕はゴーグルを手に取るとベッドへと寝転がった。
「いざ、VRMMOの世界へ!!」
良ければ、ぜひ評価お願いします。