第27話 ルルシュタッドの夜 1
遅くなった上に短い…
しばらくしたらペースが戻ると思いますが、ごめんなさい。
後ろから地に押し倒した形でウェスは女を取り押さえていた。
「さあ、財布を返してもらおうか」
「しらないわよ!」
「知らないわけないだろう。お前が盗んだんだからな」
「証拠でもあるのかしら?」
「そりゃお前が俺の財布を持ってい―」
「兄さん待ってください」
リリアが制止する。
「なんだ?」
「おそらくもう持っていないですよ」
「は?」
リリアは女を取り押さえているウェスの横に立った。
「シェーラさんですよね?」
「だったら何だって言うのよ」
「あなたを逮捕します」
「えっ!?」
「私達は今、国王勅命の任による旅の最中なのです。あなたのせいで本日の最終列車に乗れず、半日の遅れをとってしまいました。よって、あなたの行為を公務執行妨害と見なし逮捕。一時ルルシュタッドの役所にて身柄を確保。その後、アングラドに移送します」
「ア、アングラド…?」
シェーラの顔が強張る。
「最狂最悪の牢獄じゃないのよ! そんなの嫌! っていうかあんたさっきから偉そうに何者なのよ!」
「国の治安を守るも王宮魔術士の立派な仕事なんです」
シェーラはばつの悪そうな顔する。
「こんなの職権の乱用だわ! ただ盗みを働いただけで牢獄行きだなんて!」
リリアはニヤリと笑った。
「認めるんですか?」
「そうよ、悪い?」
「当たり前じゃないですか。私の兄さんの財布を盗むなんて万死にあたいします。牢獄送りでは生ぬるいくらいですよ」
個人的な要素だらけだが、彼女は今罪を認めた。非がシェーラにあるのは確実なのだ。
「さすがに牢獄送りにはできないだろ? せいぜい数日間拘束されるくらいだ。まぁ、その間にこいつが他の罪を認めれば話は別だろうが、口は割りそうに無いしな」
「それはそうですけど…」
事実を述べられ、リリアの勢いが落ちる。
そんなウェスたちのやり取りを後ろで見ていたクルリは兵士二人に尋ねていた。
「アングラドって?」
「アングラドは国の北にある牢獄のことです。厳しい規律に縛られ一生を過ごす凶悪犯ばかり収容されている場所です。厳しすぎて死人も出たという噂が最狂という所以ですね」
「ふぅん…、そんな場所には行きたくないなぁ」
「それは管理してる我々もそうです」
例え平和でも見せられないものはあるようだ。
「わかったわ。財布は返す」
シェーラが懐から財布を取り出す。
ウェスはそれを確認した。確かに彼の財布だった。
「けれど、私は捕まるわけにはいかないわ!」
「うわっ!」
ウェスを払い除けシェーラが跳ぶ。
「ふふ、私を捕まえようなんて百万年早いわ!」
シェーラは壁を伝いあっという間に建物の上に消えてしまった。
「身軽ですね」
リリアがその光景を見て呟いた。
「追わないのか?」
「財布は返してもらいましたしいいです。それに、今の服装に慣れないせいか、微妙に動きづらいんです」
ドレスの裾をつまみ、リリアは自分の姿を見直した。
「はぁ、でも今日の最終の列車も出てしまいましたし、出発は明日ですね。本当に半日遅れです」
リリアは大きくため息をついた。
(リリア様の寝坊で半日遅れは最初からなんだけれど…)
(馬鹿、聞こえるぞ)
兵士二人がヒソヒソ話しているとウェスとリリアが戻ってくる。
「どこか宿を探しましょう」
こうして彼らはルルシュタッドに一泊することになった。




