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第15話 帰宅

サブタイトルを考えるのが面倒くさくなってきた…


第一話とかにすればよかったと後悔の真っ最中。

 朝食を馳走になったあと、ウェスは布袋をひとつ受け取った。

 その布袋を不思議そうにそれを見つめる。

「なんですか?」

 疑問を口にするウェスに、ドワイトは笑顔を向けた。

「依頼の報酬だ」

「先払いで頂いたはずですが?」

「それは手付金だ。ここにあれの倍額入っている」

 ウェスは目を丸くし、その横でクルリは小躍りしていた。

「そ、そんな、とんでもない!」

 ブンブン手を振りながらウェスは言った。得たことのない大金に少々物怖じしているようだ。

 だがドワイトはその布袋を無理矢理ウェスに渡した。

「命を落としかねない仕事だったのだ。命に値段を付けるわけではないが、当然の見返りだと私は思うのだよ」

「しかし…」

「君がこれを置いていこうとも、私はこれを君の元に届ける」

 そうまで言われて断ることもないだろう。金はいくらあっても困ることはないのだ。

「ありがとうございます」

 ウェスが素直に受けとると、ドワイトは満足げな表情を浮かべた。

「そういえばトトラの姿を見かけませんが…」

「キリウ様は今朝早くにこちらをお立ちになりました」

 ジィが説明した。

「行きたい場所があるのだとおっしゃっていました」

 出発してしまったのならば仕方ないのだが、別れ際くらいきちんと挨拶ができればよかったのにとウェスは思った。

 クルリも風呂場の件についてはまだ根に持っているようだが、彼を認めていないわけではない。挨拶できなかったことを残念に思っていた。

「それじゃあ、俺達もそろそろ行きます」

 ウェスが言うと、アンネが寂しそうな顔をした。

 ウェスが帰るということはクルリも帰るということ。

 せっかくできたいい友達と別れなければならない。それが嫌なのだろう。

 アンネはウェスの前に立ち、懇願するような瞳で彼を見上げた。

「ウェストールさん、クルリさんを置いていっていただけませんか?」

 その突拍子もない発言にウェスは驚き、苦笑した。

「…だそうだが、クルリ、どうする?」

 自分に振られると思っていなかったクルリは吃驚して首を左右に振った。

「アンネ。無茶を言うんじゃない!」

 ドワイトに叱られて、アンネは涙目になっても諦めようとしなかった。

 親が強引ならその娘も強引だ。よく似た親子だとウェスは思った。

 しかし、さすがにこの提案を飲むわけにはいかない。

 クルリとはまだ一年と少しの付き合いだが、今ではかけがえのない相棒なのである。ウェスの生活にクルリというピースはぴったりと嵌まってしまっていて、なかなか外せないものとなっていた。

 それにウェスには奇妙な使命感の様なものがあった。

 クルリを助けたあの日。

 なにか別の大切なモノを拾ったような気がしていた。

 それはクルリという存在が欠けるだけで消えてしまうものなのかもしれない。

 しかし、ウェスはそのことを理解しているわけではない。深層意識に無意識のうちに抱いていた気持ちなので、彼にその自覚はないのだ。

「ダメですか?」

 まったく諦めないアンネにウェスはほとほと困り果ててしまった。

 そこに当事者であるクルリが助け船を出す。

「フォンヘイムとラフランは遠いわけじゃないし、また遊びに来るよ」

 と言っても二つの街は馬車を利用しても片道半日かかる距離だ。歩けば一日以上かかる。間に街が一つあるので、歩く場合は普通その街で一泊する。遠いわけでもないが、近いわけでもない距離だった。

「…そ、そうですね! 私も今度そちらへ遊びに行きます!」

 ようやく落ち着いたアンネを見てウェスとドワイトは安心したようだ。

「それじゃあ、今度こそ俺達も行きます」

「ああ、本当に助かったよ」

「じゃあね、アンネちゃん」

「クルリさん。絶対遊びに行きますから!」

「うん、私も行くから」

「ストレフさんもお元気で」

「はい。ありがとうございます」

 ジィはいつものように礼をしたが、少し深い礼だった。

 こうして二人はフォンヘイムへと戻っていくのだった。











 さて、フォンヘイムへの短い旅を終えた二人だったが、帰ってきた途端、彼らは問題に直面することとなった。

 彼らが住んでいるのは二階建てのアパートのような場所で、一階には大家の住居があり、二階には幾人かの住人が部屋を割り当てられ暮らしている。

 部屋の前まで戻ってきたのだが、なんとその扉が開いていたのだ。

 当然鍵をかけたはずなので開いているのはおかしい。

 だが、扉の鍵は壊された様子はなく、内側から開けた、もしくはちゃんとした鍵を使って開けられたようだ。

 大家が開けた可能性もあるのだが、生憎その大家は留守のようで確認のしようがない。

 どうしたものかと悩んだが、そうしていても仕方がないので彼らは意を決する。

 いつやられたかは分からないが、中に犯人が居ないとも言い切れない。

 ウェスは剣を抜き、クルリはいつでも魔術を放てる状態にした。

 扉をゆっくりあけると、部屋の様子が目に映る。

 見た感じ荒らされた様子はなかった。寧ろ出発する前より片付いている気がする。

 不思議に思いながらもウェスは歩を進めた。

 キシリと床の軋む音がする。

 緊張が一気に高まった。

 そして更に歩を進め、一つの異常を発見する。

 それはウェスがいつも寝ているベッドだった。その上には布団が敷いてあるのだが、その布団が盛り上がっている。それは緩やかなペースで上下していた。

 中に何かが居るようだ。

 ウェスはベッドの横に立つとそれを観察した。

 聞こえる呼吸音。だが襲ってくる様子はない。

 その上でクルリを手招きし、向かい側に立たせる。

 二人は頷きあって確認すると、ウェスはゆっくり布団に手を伸ばした。

 そして一気にそれを剥ぎ取り、間髪入れず剣を中身に向けた。

「…すぅ」

 寝ていた。

 こちらの気持ちなど露知らず、そいつは寝息をたてていた。

 クルリは状況が理解できず困惑した。

 対してウェスは全てを悟ったような顔でため息を吐いた。

 さて、彼はこの部屋の入り口に立ったときとは、また別の悩みに苛まれてしまったわけだ。

 ウェスは突き付けていた剣を収めるともう一度ため息を吐いた。

 その様子を見てクルリも一応警戒を解く。

「ウェス、どうし―」

 皆まで言うなと言うようにウェスは待ったをする。

 その表情は困ったような呆れたようなものだった。どうやらウェスは、この人騒がせな犯人に心当たりがあるようだ。

 ウェスは大きく息を吸い込んだ。

 そして叫ぶ。

「リリア! いつまで寝てるんだ!!」

 クルリも思わず耳を塞ぐ、部屋か軋みそうな大声だった。

 すると、リリアと呼ばれた犯人はムクリと起き上がり、眠たそうに目を擦りながら周囲を確認する。そしてウェスの姿をその瞳に映すとこう言った。

「あ、兄さん、おはようございます」

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