EP 4
「おまえが帰ってから、女性たちの相手が大変だった!!」
「ですが、社長もなかなか良い案だと」
「って思ったけど、よく考えたらそんなわけがない」
「坂下様とはうまくいきましたか?」
「あんな状況で、うまくいくわけないだろう。結局、怒って帰ってしまった。破談だよ」
「それは申し訳ございませんでした」
社長はもういいと吐き捨て、コーヒーのカップを手に取り一口飲んだ。タブレットを取り、ネットニュースに目を走らせる。
私は社長室から出ると、デスクに戻り、仕事を始めた。
(確かにあれだけのライバル揃えたら、修羅場以外の何ものでもないかー。良いアイデアだと思ったんだけどなあ)←棒読み
パソコンを立ち上げる。
(まあ仕方がない。普段からの行いが、そうさせたんだから私には非はないはず。うんそれな)←完結
女たらし。社長を一言で表すなら、その言葉に尽きる。
自業自得なのだ。
「さあ、こんなことで無駄な時間を使いたくない。仕事しよ……今日のスケジュールは……」
朝イチで社内会議、クライアントの担当とランチミーティング、営業から報告を受けてから……市田不動産との顔合わせ。
(市田様はいつも、お嬢様をお連れになってくる)
『sunrise』は、近く株式の上場を狙っている。それを嗅ぎつけてか、やたらクライアントが娘を紹介したがるのだ。
(はあぁ、これから何度も、蛙化現象をなんとかしろと言われるのもキツイものがあるな……)
ため息をつきながら、私は手帳を閉じた。
*
「だからさ、これ以上蛙化をどうにかしようってのも、キツイものがあると思うんだ」
デジャヴか。ハイスペ社長がそうのたまった。
火曜日、朝のモーニングコーヒーを窓際で背を持たせ掛けて飲む。188cmある身長のため、窓のサッシ上部に頭がついちゃうんじゃないの? ホコリ吸ってない?ぐらいな、モデルスタイルだ。
もちろん筋トレも欠かさないから細マッチョだし、仕事はできる人だから、社員の中でもファンクラブができるのも納得だし、社内社外関わらず推しメンの1位に燦然と輝いているし、根暗メガネの私からしてみれば、後光の差す雲の上のお人だと思う。
(だからどうして私なんかを秘書に……)