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EP 35

「は!! そんなの嘘に決まってるわ」

「いえそれが本当なんです。なので私、当分は辞める予定はありません。悪しからずご了承くださいませ」

「なにを言ってるのよ。この私が辞めなさいって言ってるの。これ以上続けると言うなら、覚悟しなさいよね。ほーんと懲りないんだから」

「承知しました。覚悟してまいります」

少し強めの口調で言うと、お局は少しだけ怯んだ。

「と、とにかくっ、今度の会社の創立記念パーティーまでに、退職願を出してちょうだい。そしたら、私が秘書の仕事を引き継いであげるから」

「…………」

「わかったわね!!」

指をさしドーンしてから、くるりと振り返り、背を向けて退場。

その背中を見送ると、私は秘書室へと戻った。

イスに座ろうとして、はっと中腰に。イスの座面に画鋲でも落ちていないか、ブーブークッションは置いてないかと慎重に調べてから、よっこいしょと座った。

「創立記念パーティーかぁ」

お局のことは置いておいても、気持ちがどーんと重くなる。

半月後に迫っているパーティーの主催はうちの会社なので、主役は当麻社長のようなものだ。もちろん、創立記念日にちなんだスピーチも用意してある。

会場の設営から飾り付けのお花の手配、ビュッフェ形式のケータリングの注文などに余念はない。

「まあ、いつも通り無視しよう」

程なくして、社長が帰ってきた。

創業記念のパーティーは、レストランを借り切って、盛大に行われる。今回は顧客向けとは言うより、自社の社員を労うものに重きを置いたもので、あまり堅苦しさはない。

女性社員はそれぞれ可愛らしいワンピースドレスなどで着飾っているが、男性社員はみなスーツなので、私も地味なスーツで臨んだ。

「社員の皆さん、我が社は本日、つつがなく創立10年を迎えることができました。これまで社を支え、盛り上げてくださり、本当にありがとう」

当麻社長の挨拶が始まった。

「10周年です。あなた方にとって、大変な10年だったかと思います。ただ、私は楽をさせていただきました。皆さんがあまりにも優秀だからです」

ちょっとこの挨拶文、添削して、と言われて原稿を渡された。

「承知しました」

いざ読んでみると、赤ペンすべき点はほとんどない。ただただ、社員への労いと感謝の気持ちが繰り返されている。

(ご自分へのアゲや功績、評価など一言もなかった)

感動したのだ。

とても。良い挨拶の言葉だと思った。

「社長を誇りに思います」

口から出かかったが、ストップをかけた。が、きっと社員のみんなが思っているのではないかと思う。

「これからもあなた方の力が必要です。会社をもっとより良いものにしていきましょう。気になることは多々あるでしょうが、それはその都度、教えていただきたい。相談し、協力し合って、『sunrise』を盛り上げていきましょう!!」

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