表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/42

EP 32

俺は廊下をずいずいっと進み、開け放たれていたドアからリビングへと入った。

そして、そこにいた男に面と向かって、堂々、

「悪いが、俺が千景の恋人だから!! おまえに千景は絶対に渡さない!!」

「しゃちょうぅ」

あれ?

男は?

いない。誰も。

いや、いる。俺がプレゼントした等身大のトーマくんだ。

テーブルの上にはタブレット。そこから音楽が流れている。

『は〜い、これで『今夜は俺の隣で眠りな』の配信は終わりです!! 俺のあま〜いセリフでみんな、ぐっすり眠れそうかな? それでは次回配信もお楽しみに!! バイバーイ、トーマでしたぁ』

うん?

あれ俺? これってあるあるで鉄板なボケ?

「しゃちょ……むにゃ」

抱き上げていた千景の顔を見る。いつのまにか千景は完オチ。その寝顔は幸せそうだ。

「まったく……しょーがねーな」

リビングから寝室に入り、ベッドにそっと千景を寝かせた。トーマくんのぬいぐるみをペペペっと床へと落として、布団をそっと掛ける。

「はあぁなんだ配信かよ……」

ほっと胸を撫で下ろし、もぐもぐと口を動かしている千景の顔を、側でじっくり眺めてしまった。枕元に頬杖をつき、

(あーあヨダレたらしちゃってまあ)

と。

近くにあったトーマくんティッシュで、そっと拭う。

俺は枕元に頭を預けると、はあぁとため息をついた。

「なにやってんのかな、俺」

新たなライバルと思って慌てて駆けつけてみると、単なる配信の音声だったとは。

「それを早とちりなんかして……終わってんなあ」

しかも戦線布告まで。無人のリビングに向かって、自分が彼氏だと勢いよく名乗り出る始末。

だが、これではっきりと確信した。

千景のことを諦められない、ということを。

「むにゃ」

もごもご動く唇。なんか小動物みたいで可愛い。

その千景の唇に、自分の唇を近づける。キスをしようとして、やめた。代わりにおデコへ、ちゅ。

「千景、愛してる」

言葉にすれば、ぐっと胸が熱くなり、愛しさが増していく。

ずっとその寝顔を見ていたい気持ちになった。

(あれ? なんで社長がここに?)

朝、目覚めると隣に社長の寝顔があった。驚いたが、やはり整った素敵なお顔だなあと思い、しばし拝顔。

(かっこいいなあ)

意外とまつ毛も長い。ただ。ヨダレが垂れている。ちょうど枕元にティッシュの残骸。

これでいいか、とそのティッシュで口元を拭いた。(←思いも寄らない形で間接キス完了)

「んんー? 起きたのか?」

「はい。この状況はいったい……」

「なんだ覚えていないのか? おまえめっちゃ酔っ払ってたんだぞ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ