表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/42

EP 30

ざわっと胸が荒れた。誰だ? 誰かいるのか? 男か? まさかな。

でも確かに男の声だった。もう男ができたのか??

そんな話は聞いてない。やめてくれ、俺の千景だぞ!!

『まだ寝な〜いぃ』

やめろ可愛いすぎる反応するんじゃない!! しかもそんなに酔ってちゃ襲われても反撃できないじゃないか!!

「おい千景っ、千景えぇっ」

スマホに向かって叫ぶ。

「水飲んで酔いを覚ませって、ってか誰かいるのかっ、あんた誰なんだっ」

『俺が一緒にいてあげるから。眠って』

「千景に触るなっ」

『綺麗な髪だね』

「触るなってんだろ、このやろうっ」

『あー可愛いな。俺が頭撫でてあげる。ヨシヨシ』

「やめろっ!! くそっっ」

俺はカギとサイフを引っ掴むと、スマホを持ったまま外へと飛び出した。まだほんのり温まっているエンジンをかけ、車のアクセルを踏む。

千景の家は知っている。以前、社員食堂で『お値引き感謝祭』が行われたとき、千景が食べ過ぎて腹を壊し、一度だけ送っていったことがある。(←黒歴史だが役得)

千景のアパートに向かっている途中、嫌なことばかりが頭をよぎる。

(あの声、総務の武田に似ていたな。イケメンだし、仕事もできる男だし……)

俺の千景。他の男なんかに抱かれて欲しくない。

赤信号に引っかかる。

「くそっ、早くっ」

イラついて、バシンとハンドルを叩いた。

俺の千景。好きなんだ、こんなにも。諦めようと思ったのに、いつまで経っても忘れられなくて。

社長室と秘書室を隔てているドアをずっと見ていたこともある。

愚かしい自分の自覚はある。他の女性をと思って付き合おうとしても、今日みたくすぐにカエルになってしまう。

俺の千景。

こんなにも愛してるのに。

仕事なんかじゃなく、本当の恋人になって欲しいんだ。

アパートの前に駐車する。見上げると、部屋の明かりが煌々とついている。

俺はアパートのドアをドンドンと叩き、そしてチャイムを押した。

「千景、おい千景っ、開けてくれ!!」

これ以上はもう無理だ。ドアを叩く。他の誰かを好きになったりしないでくれ。他の男にヨシヨシなんかさせないでくれ、と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ