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EP 23

何度も言うが、そんな想いの詰まったプレゼントをないがしろにしてしまったこと、今さらながら大大だーい後悔です。

「綺麗……」

「『千景』って名前さ。『千景万色(せんけいばんしょく)』って言葉があってさ、たくさんの景色っていう意味なんだけどね。それで、色々な色が混じり合っている虹色が良いんじゃないかなって思って」

胸にぐっときた。名前の由来まで調べてくれていて。ここまで来ると、愛されてるのだという実感しかない。

「あ、ありがとうございます」

素直な気持ちが出た。嬉しさで全身が震えるほどの。

「明日の誕生日も楽しみにしててよ」

小さくウィンク。あーあ。そういう仕草が本当にクールで似合ってて、女性はみんなその魅力の虜になっちゃうんだよな。

「明日の誕生日、ホテルのレストランを用意してあるから。土曜日だからおまえは直接ホテルの方に来てくれ。着替えの部屋も用意してあるから。迎えに行けなくて悪いが、俺は仕事が終わってから合流する」

「承知しました」

そして、4日目のでぃあごすてぃーにシステムで贈られたドレスを着てくるように仰せつかっている。

淡い桜色のワンピースだ。オホワイトのパンプスもいただいている。この虹色のピアスもよく合うと思う。センスの良いチョイスにテンションも上がり気味だ。

(明日の誕生日、楽しみだな)

自分の誕生日にはいつも、丸いケーキを買ってきて、Vチューバーアイドルのトーマくんと一緒に食べている。毎年、「トーマくんアーン。パク。美味しい? うん、私も美味しい!! お誕生日おめでとうって? ありがとう。すっごく嬉しいよ!! いえーーーい」ってのを全身寒ボロに包まれながらやらざるを得ない何かの儀式のように行いつつ、いつも最後には我に返り私バカ? ってね。

そんな寒々しい誕生日をこれまでも繰り返してきたし、この先も繰り返すのだろうなと思っていた。けれど。今年は違う。

「いただいたドレスを着てホテルのレストランで食事だなんて、映画やドラマで観るやつ。最上級のシュチュエーションのやつ。まさか私の一生に、こんな機会が巡ってくるとは」

誕生日のプレゼントも楽しみにしていてと言われている。

(ももももしかしたら、ここ婚約指輪とかだったりして……)

すぐに否定。

「やややそんなの早すぎるわっ」

サイズも知らないだろうし。けれど、この前社長と一緒のベッドで眠っていたときに、もしかしたらこっそり測っていたのかもしれないし。あるあるだ、あり得るかも。

「最近はAIの技術が発達しているから、長さを測定できるアプリもあるし、3Dプリンターってのもあるし、」

ぶつぶつ言っていると、社長室のドアが開いた。

「AIとか3Dとかなんの話? もしかしてVチューバーの話? 今仕事中だよ? ちゃんと仕事してよ? あの案件はどうなったの、ちゃんと連絡してくれた?」

と早口で弾丸のように物を申してくる。

「はい。あの案件でしたら、お相手の岸本様には連絡を取り次ぎまして、諸々の説明を申し上げたところ、契約は次週の火曜日にどうか? とのことでしたので、承知しまして予定を入れてあります」

「そう。完璧だね」

にこっと笑う。

「今日の業務はこれで終わりだ。じゃあ、俺の車で食事にでも行こうか。千景はなにが食べたい?」

「私はなんでも食べますので」

「じゃあ今日はイタリアンにしよう」

そして私と社長は地下の駐車場へと向かい、車に乗り込んだ。


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