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EP 20

強い口調だったのは、おまえそんなことはわかってるだろう? という、社長の正しい気持ちの表れで。恋愛対象にならないのだから、恋愛ごっこで蛙化をなんとかしようだなんて、最初から設定がバグってたとしか言いようがない。

だから、「もうやめた方が良いのかもしれない」と。

(もちろん社長からしてみれば、こんなオタクの地味女、範疇外だとは思うけど)

悲しいのかな、心が折れそうなのかな。一緒の布団に入ってはいるけれど、なんか寒々しさを感じてしまう。

そのうち、すうすうと寝息が聞こえてきた。眠れない、少し振り向いてみる。

オレンジ色の照明に浮かぶのは、社長のイケメンな横顔のシルエット。高い鼻、意志の固そうな、むいっと結ばれた唇。けれど濃い眉はいつも、円を描くようにして、優しく笑っている。

(もう秘書なんか辞めようかな……)

じわと。じわじわと。止められない社長への恋心が、自分の中から生まれ出て、勝手に育っていくようで怖くなった。

(やめやめ、また明日考えよう)

そっと手元に置いてあったスマホを触る。明日、起きる時間を確認しようとタイマーをセットし直し、そしていつも見ているVチューバーアイドルのトーマくんのインスタを、癖で開いてしまった。

するとすかさず、「おい、なにを見てるんだ」と、背後で鋭い声がした。

「あ、すみません、起こして、」

「こんな時ぐらい!!」

後ろから覆い被さってきて、スマホを持っている手を握られた。そして、ぐいっとスマホを伏せると、後ろから抱き締められた。

「しゃ、社長……」

驚いてしまった。背中に上から下まで、ほわりと体温が伝わってくる。握られた手は驚きで震え、私は身体中に力を込めた。

「一緒にいるのは俺なんだぞ。こんな時まで、焼きもちやかせるなよ」

焼きもち……?

訳がわからない。ついさっき、もう仮の恋人契約はもうやめようと言っていたのに。

強く抱きしめられたまま、永遠に続くのかと思うほどの、長い沈黙の時間が過ぎていった。

(あーあやっちまった)

イラついた結果の行為だったが、身体も心も意に反して喜んでしまっている。とうとう千景をこの腕に抱きしめ、手まで握っているからだ。

(こんなんダメに決まってるだろう……)

心の中では反省しているが、実際はどうだ。千景を求めてやまない気持ちに、歓喜に震える俺。

千景は?

嫌がっている?

もしそうなら、突き放してくれ。そしたらもうすっぱりと諦めるから。おまえの秘書の職を解いて、一社員に……総務に戻してやるから。

(そしたら俺、どうなるんだろうな。千景が秘書室にいなくたって、総務にいるならきっと、たまには会う機会……ってか見かけるぐらいはあるだろうし)

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